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再会…!

王国の地下に広がる旧王宮の避難路――かつて、貴族や王族が非常時に使用した秘密の通路。


しかし、この場所が「消えた転生者」ナルセの最後の目撃地点であり、さらに転生者管理の闇を知る手がかりが隠されている可能性が浮上した。


岩木とシラユ隊長は、正式な調査許可を得て、王国軍の監視のもと、封鎖された地下道へと足を踏み入れた。


「……思ったよりも古びてるな」


地下道の入り口には、長年使用されていなかったためか、分厚い鉄扉が錆びついていた。


しかし、その扉には異様なほど厳重な封印魔法が施されていた。


「普通の避難路にしては、妙に厳重ですね」


岩木は扉に施された魔法陣を観察しながら言った。


「これは……"対人結界"の痕跡だな」


シラユ隊長が険しい表情で呟いた。


「対人結界……?」


「王国の重要施設や禁忌の研究所などで使われる結界だ。本来、軍事機密や王族の墓所などにしか施されない」


「そんな場所が、ただの避難路に?」


「そういうことだ。つまり、この地下道には"外に漏れてはいけない何か"がある」


地下道の中へ――異質な空間


封印を解除し、ゆっくりと扉を開ける。


そこには、長く伸びた石造りの通路が広がっていた。


しかし――


「……ここ、本当に避難路ですか?」


岩木は、異様な雰囲気に違和感を覚えた。


・ 壁には"古いランプ"が等間隔に設置されているが、すでに点灯していない。

・ 天井には無数の「鉄格子」――まるで"監視用の施設"のよう。

・ 奥からは、何かを"削るような音"が微かに聞こえる……。


「ここ……"監獄"みたいですね」


「……俺もそう思った」


シラユ隊長が剣を握りしめながら、慎重に歩を進める。


(まさか……王国は"転生者を監禁していた"?)


壁に残された謎の文字


さらに奥へ進むと、壁に刻まれた奇妙な文字が目に入った。


「……何かのメッセージ?」


岩木は指で文字をなぞりながら読み上げた。


「俺たちは、異世界から来た――だが、ここは牢獄だった」


「俺たちは"選ばれなかった"――俺たちは"消される"運命だった」


「ここから逃げた者はいる。だが、俺はもう――"記憶"がない」


「……!」


岩木は、思わず息を呑んだ。


(やはり、ここは"転生者を監禁していた場所"だった……?)


シラユ隊長も表情を引き締める。


「これは、間違いない……ここには"管理から外れた転生者"が収容されていたんだ」


「じゃあ、ナルセさんもここに……?」


その時――


「……誰か、いるのか?」


奥からかすれた声が聞こえた。


その声は、岩木にとってあまりにも懐かしく、そして、信じがたいものだった。


「っ……!」


反射的に声のした方向へと駆け出す。


「岩木!」


シラユ隊長が制止しようとするが、岩木は止まらなかった。


(まさか、そんなはずない……)


(でも、この声は――)


壁に沿って駆け抜け、暗がりの奥へと足を踏み入れる。


そこには、一人の男がいた。


ボロボロの服、伸びきった髪、無精ひげ、痩せ細った体。

だが――その目の奥には、かつて岩木が知っていた、あの鋭い光が宿っていた。


「……久しぶりだな、岩木」


「――っ!」


岩木は息を呑んだ。


「ナ……ルセ、さん?」


「……ああ」


岩木の目の前にいるのは、かつて彼が現代で共に働いていた記者、ナルセだった。


「本当に……本当に、生きていたんですか……?」


声が震えた。


この異世界に来た時、すべてを失ったと思っていた。

そして、現代で唯一尊敬していた先輩記者のナルセも、もう会えない存在だと――そう思っていた。


「岩木、お前……」


ナルセの目がわずかに見開かれる。


「お前も、転生してきたのか?」


その言葉に、岩木はぐっと唇を噛んだ。


「……はい」


「……そうか」


しばしの沈黙。


暗く湿った地下道の中で、かつての記憶がよみがえってくる。


岩木が現代で記者になったばかりの頃、彼に「取材のいろは」を叩き込んでくれたのがナルセだった。


・ 「真実を追え。だが、それをどう伝えるかが記者の価値を決める」

・ 「人の声に耳を傾けろ。どんな些細な情報にも価値がある」

・ 「そして、何よりも大事なのは"自分の目で見て、確かめる"ことだ」


ナルセの言葉一つ一つが、岩木の記者としての土台を築いていた。


しかし――ある日を境に、ナルセは突然姿を消した。


(あの時……)


(俺は何も知らず、何もできなかった……)


そして今、異世界でこうして再会している。


「消された者」としてのナルセ


「ナルセさん……あなたは、なぜここに?」


岩木の問いに、ナルセは苦笑する。


「……それを知りたいか?」


「当然です……!」


「……なら、まずはこれを外してくれ」


ナルセは足元を指さした。


そこには、重厚な鉄鎖が繋がれていた。


「まだ"囚人扱い"ってことか」


シラユ隊長が険しい表情で呟き、持っていた短剣で鎖を叩き切る。


「……助かった」


ナルセはゆっくりと足を伸ばし、深いため息をついた。


「ここは"転生者の墓場"だよ、岩木」


「……墓場?」


「王国は"管理できない転生者"をここに閉じ込め、記憶を消して"無害化"しようとしていたんだ」


「……!」


岩木は息を呑んだ。


(やはり、王国は転生者を"選別"していた……?)


「でも、おかしいじゃないですか。記録には、あなたは"粛清された"と」


「……俺も、粛清されるはずだったさ」


ナルセは薄暗い天井を見上げながら言った。


「だけど、運よく逃げた」


「逃げた……?」


「そうだ。俺は王国の転生者管理に疑問を持ち、調査を進めていた。だが、それが"王国にとって都合の悪いこと"だったらしくな……ある日、俺は"反逆者"として追われる身になった」


「……王国が、あなたを"消そうとした"?」


「そういうことだ」


ナルセの拳が、悔しそうに震える。


「俺は転生者の権利を訴えようとしただけだった。だが、王国は"転生者を制御できない"ことを恐れていた」


「それが、先代国王の方針だった……?」


「……ああ。そして、"管理できない転生者"は、こうして消される」


・ 王国は"管理できない転生者"を地下施設に閉じ込めていた。

・ 転生者の記憶を消し、従順な者だけを残そうとしていた。

・ ナルセはそれを調査しようとして"粛清"されかけ、逃亡した。


「じゃあ、今までここに?」


「いや、違う。俺は何年も前に一度逃げたが、"また捕まった"んだ」


「……!」


(つまり、王国は今も転生者の管理を続けている……!?)


「岩木、お前も気をつけろ」


ナルセが、真剣な目で岩木を見つめる。


「王国は……"転生の秘密"を知る者を決して野放しにはしない」


その言葉が、岩木の胸に重くのしかかった。


(俺も、"消される"対象になるかもしれない……)


(だが、だからこそ――)


「……だからこそ、真実を伝えなきゃいけない」


岩木は、拳を強く握った。


「ナルセさん、俺は記者として、この"転生者管理の真実"を報道します」


「……そうか」


ナルセの口元に、微かな笑みが浮かぶ。


「お前、少しは"記者"らしくなったな」


岩木は、思わず笑った。


「それ、昔も言われましたよ」


「……ハハ、そうだったか」


かつての記者と記者。

異世界での、"再会"。


そして、王国の転生管理の闇が、ついに暴かれようとしていた――。

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