先代の国王...!
王都の地下に広がる旧王宮の避難路。
この地下道が、消えた転生者」ナルセの最後の目撃地点であることを突き止めた岩木とシラユ隊長は、正式な調査許可を得るため、王宮へ向かうことにした。
しかし、この問題を王宮へ持ち込むことで、思いもよらぬ「転生者管理の真相」が明らかになろうとしていた。
王宮の謁見の間に通された岩木とシラユ隊長は、国王カイバ三世と対面した。
「……地下道を調査したい、だと?」
カイバ三世は、やや驚いた表情を浮かべた。
「はい。転生者ナルセの行方を追う過程で、彼が"地下道で最後に目撃された"という情報を得ました」
岩木がそう説明すると、国王は少し考え込み、ため息をついた。
「ナルセ……か。確かに、その名前は聞いたことがある。しかし、私は詳しいことを知らない」
「え?」
岩木は驚いた。
(国王自身が知らない?)
カイバ三世は続ける。
「転生者管理の制度が始まったのは、私の時代ではない。これは、私の父――先代の王が始めた政策だ」
「……では、先代の王は何を目的に転生者を管理していたのでしょうか?」
国王は難しい顔をしながら答えた。
「私が即位する前、父から"転生者は慎重に扱わなければならない存在だ"と言われた。だが、詳しいことは聞かされなかった」
「先代国王の政策を、そのまま引き継がれたのですか?」
「そういう形になるな。ただ、私は"管理の方針"を少し緩和している。だが、転生者たちを完全に自由にするのは危険だと、父から釘を刺されていた」
(つまり、現国王は"転生者管理の全貌"を把握していない……?)
(先代国王は、なぜ転生者を管理しようとしたのか?)
「……お聞きしてもよろしいでしょうか」
岩木は慎重に言葉を選びながら質問した。
「そもそも、転生者を管理する必要がある"理由"は何だったのでしょう?」
カイバ三世は少し考え込んだ後、こう答えた。
「……父は、"転生者が王国を脅かす可能性がある"と考えていたようだ」
「脅かす?」
「異世界から来た者は、我々の世界の常識とは異なる知識や技術を持っている。父は、それを"制御不能な脅威"と見ていた」
岩木は息を呑んだ。
(つまり、転生者を"戦力"ではなく"リスク"として捉えていた……?)
「では、転生者の管理を始めた当初、具体的に何が行われたのでしょう?」
「詳しい記録は見たことがないが……」
カイバ三世は、少し話しづらそうに続けた。
「王国にとって有用と判断された転生者は、軍・行政・研究機関へと誘導された。しかし、"制御不能"と見なされた転生者は……"行方不明になった"と聞いている。」
「行方不明……?」
(それは、王国によって"消された"ということか?)
「父は、"転生者を自由にさせるのは王国にとって危険だ"と言っていた。そのため、何らかの形で転生者を"管理"する必要があったのだろう」
岩木は、以前の取材で得た情報を思い出した。
・管理されている転生者は"王国の組織に組み込まれた者"のみ。
・記憶の一部を欠損している転生者がいる。
・転生したことを自覚していない転生者がいる。
・"転生者の権利を訴えていた集団"が王国によって粛清された可能性がある。
(王国は、転生者を"選別"していた……?)
岩木はカイバ三世の話を整理し、核心に迫る質問をした。
「陛下、地下道の封鎖についてですが……もしかして、そこには"先代国王が管理していた転生者の秘密"が隠されているのでは?」
「……可能性はある。だが、私はその地下道について詳しいことを知らない」
「では、私たちに調査を許可していただけませんか?」
カイバ三世は少し考え込んだ後、決断した。
「……いいだろう。ただし、王国軍の監視の下で行うことになる」
「ありがとうございます!」
(ついに、王国の地下道に踏み込める!)
岩木とシラユ隊長は、正式な許可を得て王国の地下道へと向かうことになった。
「先代国王が転生者を管理した理由は"脅威になるから"……」
岩木はシラユ隊長と歩きながら呟いた。
「ですが、どの程度の"脅威"だったのかは、まだ分かりませんね」
「それを知るためには、地下道を調べるしかないな」
王国軍の監視のもと、厳重に封鎖された地下道の扉が開かれた。
そこに王国の転生者管理の秘密が隠されているのかもしれない――