表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

126/140

なつみ…?!

ヤマダの証言によって、王国が転生者の記憶を操作している可能性が浮上した。


・ 転生後、記憶を失った状態で王国に保護されたヤマダ。

・ 夢の中で"何者かに追われている記憶"がある。

・ 王国が「転生者の記憶を消している」可能性が出てきた。


(転生者は王国に管理され、誘導される……だが、一部の転生者は"記憶を消される"?)


この疑問を解決するため、岩木は最後の取材対象へと向かうことにした。


「転生したことを自覚していない」転生者――なつみ。


なつみは、王宮で侍女として働いていた。


王族に直接仕える立場のため、取材をするには宮廷の許可が必要だったが、シラユ隊長の協力もあり、なんとか面会の機会を得ることができた。


岩木は王宮の使用人たちが働く一角へと案内され、なつみが来るのを待った。


「……あ、あの、こんにちは。侍女のなつみです」


柔らかな雰囲気を持つ、20代前半ほどの女性だった。

彼女は緊張した様子で、少し戸惑いながら岩木の前に座った。


「はじめまして。エルドラ・ヴィジョン・テレビの岩木と申します」


「えっと……取材、でしたよね?」


「はい。なつみさんは王国に仕える侍女だと伺いましたが、どうしてこの仕事を?」


「えっと……気づいたらここにいたんです」


「……気づいたら?」


「はい。昔のことはあまり覚えていなくて……」


(ヤマダと同じだ)


「王宮での仕事はどうですか?」


「すごく充実しています! 王族の方々も優しいですし、毎日やりがいがあって楽しいです」


彼女はにこやかに笑った。

だが、違和感があった。


(この世界に転生してきたのに、それに気づかずに"普通に"暮らしている?)


(なつみさんは、本当に転生者なのか? それとも、"転生した記憶を消された"のか?)


「なつみさん、ご自身の過去について何か覚えていることはありますか?」


「えっと……小さい頃から王宮で育ったって聞きました」


「ご両親のことは?」


「それは……あまり聞いたことがないんです」


彼女は少しだけ表情を曇らせた。


「……もしかして、昔のことを思い出せない?」


「……そうですね。今の仕事が楽しくて、あまり気にしていませんでしたけど」


(やはり、なつみさんは"転生した記憶を失っている"可能性が高い)


(もしくは、"意図的に失わされている"……?)


「なつみさん、夢を見たことはありますか?」


「夢……?」


岩木の言葉に、なつみは少し考え込んだ。


「……そういえば、たまに"自分が違う場所にいる夢"を見ます」


「違う場所?」


「はい。でも、どこなのか分からなくて……すごく変な感覚なんです」


「その夢の中で、何か言葉を聞いたり、見覚えのあるものは?」


「……うーん」


なつみは首を傾げた後、ぽつりと呟いた。


「"青い空に、高い建物がいっぱいある場所"……」


岩木は息を呑んだ。


(それって……明らかに"この世界"の風景じゃない)


「それ、今の王国にはない景色ですよね?」


「……そう、ですね。でも、なぜか懐かしい気がするんです」


「なつみさん、もしかしたら"自分が転生者である可能性"を考えたことはありませんか?」


「……え?」


なつみは目を丸くした。


「転生者……?」


「実は、なつみさんは"転生者"であると記録に残っているんです」


「……私が、転生者?」


なつみは困惑した表情を浮かべた。


「でも、私はずっと王宮で生きてきたって……」


「本当にそうですか? それは、"誰かにそう言われた"だけじゃないですか?」


「……っ!」


なつみの表情が、一瞬強張った。


(やはり、"転生の記憶を消された"可能性がある)


(だが、完全に忘れているわけではない……"夢"として記憶の断片が残っている)


王国は何をしているのか?


「隊長、これは……」


岩木はシラユ隊長の方を見た。


「……王国は、"転生者の記憶を操作する何か"を持っている可能性があるな」


「……そんなこと、できるんですか?」


「分からん。だが、もしできるなら……"転生の秘密"を握る者を都合よく処理できることになる」


「"転生者の管理"って、つまり……?」


「王国が"都合のいい転生者"を選び、"不要な転生者の記憶を消している"ということかもしれんな」


なつみのケースは、それを裏付ける証拠になりうる。


岩木は、今回の取材で得た情報を整理した。


・ コマツ → 転生後、異常な剣の才を発現し、軍に誘導された。

・ あやさ → 魔法の知識が転生時に与えられたような感覚を持つ。

・ ヤマダ → 転生後の記憶が欠損しており、追われていた夢を見る。

・ なつみ → 転生したことを自覚しておらず、記憶の断片が"夢"として残っている。


「……やはり、王国は"転生者を管理している"のではなく、"選別"している?」


「可能性はあるな」


「では、"選ばれなかった転生者"はどうなっているんでしょう?」


「……消されたか、"どこかに隔離された"かだろうな」


その瞬間、岩木の脳裏に浮かんだ名前があった。


――ナルセ。


「……隊長、"消された転生者"の可能性があるなら、ナルセさんも?」


「……ああ、今回の取材で確信が持てた。ナルセは"王国の管理から外れた転生者"である可能性が極めて高い。」


つまり――


ナルセを見つけることができれば、"王国が何をしているのか"の決定的な証拠を得られる。


「……よし。次は、本格的にナルセの行方を追います!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ