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ヤマダ…?

王国に管理されている転生者の調査を進める岩木は、コマツ(軍事顧問)、あやさ(研究機関)の二人から興味深い証言を得た。


・ 転生後、突然「異常な剣の才」に目覚めたコマツ。

・ 転生前の世界に魔法はなかったはずなのに、なぜか「魔法理論を知っていた」あやさ。

・ 二人とも「自分の意思」で今の道を選んだと考えているが、「最初から決まっていた未来のように感じる」と発言している。


(転生者は、"転生後に与えられる適正"によって、自分の進む道を決められてしまうのか……?)


(だとしたら、それを決めているのは"誰"なんだ? 王国なのか、それとも――)


そんな疑問を抱きながら、岩木は次の取材先へ向かった。


王国の辺境領・ヤマダのもとへ


今回の取材対象は、ヤマダ(辺境領主の補佐官)。


彼の特徴は、「記憶の一部が欠損している」という点だった。


("転生者の記憶が欠損している"って、どういうことなんだ?)


それを確かめるために、岩木とシラユ隊長は王都から少し離れた辺境の領地へと向かった。


辺境領は、王都と比べて活気が少なく、のどかな雰囲気が漂っていた。


「ここにヤマダがいるのか」


シラユ隊長が馬を止め、岩木と共に城門をくぐる。


案内された屋敷の中で待っていると、やがて一人の男が現れた。


「初めまして。辺境領主の補佐を務めるヤマダです」


見た目は20代半ばの青年。

整った顔立ちに、落ち着いた雰囲気を持つが、どこか"違和感"があった。


記憶が欠損しているとは?


「さっそくですが……あなたは"記憶の一部が欠損している"と記録されています」


「……そうですね」


ヤマダは静かに頷いた。


「転生してから数年間の記憶が、どうしても思い出せないんです」


「数年間?」


「はい。気づいたら、もう王国に仕えていました」


岩木は驚いた。


「つまり、転生してから何をしていたのか、全く覚えていない?」


「そういうことになります」


(……そんなことがあるのか?)


「それは事故か何かで?」


「いえ……分かりません。ただ、最初は"王国の役人に助けられた"と言われました」


「助けられた?」


「気づいたときには、すでに"王国の保護下"にいたんです」


「……つまり、転生してからの記憶がないまま、王国の組織に組み込まれていた?」


「そうなりますね」


(何かがおかしい……)


岩木は慎重に言葉を選びながら、次の質問を投げかけた。


「記憶を失う前のこと、断片的でも何か思い出せませんか?」


ヤマダはしばらく考えた後、こう答えた。


「……たまに"妙な夢"を見るんです」


「妙な夢?」


「自分が"誰かに追われている夢"……それがずっと、頭の片隅に残っている」


岩木とシラユ隊長は顔を見合わせた。


(もしかして……"転生者狩り"か?)


王国の管理下にある転生者は、全員"王国に組み込まれている"。

だが、それ以外の転生者は、何らかの理由で記録から消されている。


ヤマダは転生後、何者かに狙われ、王国に"保護された"。

だが、その間の記憶は"欠落している"。


これは偶然なのか? それとも、意図的に記憶を消されたのか?


王国は転生者の記憶を操作している?


「ヤマダさん、王国があなたの記憶に何かした可能性は考えていますか?」


「……正直、考えたことはあります。でも、証拠はないんです」


ヤマダは苦笑した。


「ただ、気づいたら"王国の役人として働いている"……それが"自然なこと"のように感じてしまうんです」


「それは、本当にあなたが選んだ道だったんでしょうか?」


ヤマダは言葉を失った。


(もし王国が"転生者の記憶を消せる"なら、"管理される転生者"と"消される転生者"を選別できることになる)


(そして、"管理対象から外れた者"は、記録ごと消されている……?)


ヤマダの証言から、岩木は新たな疑念を抱いた。


・ 転生後、記憶を失った状態で"王国に保護された"ヤマダ。

・ 夢の中で"何者かに追われている記憶"がある。

・ 王国が"転生者の記憶を操作できる可能性"が出てきた。


(これは、次に会う"なつみ"の証言が重要になるな)


なつみ(王宮付きの侍女)は、「転生したことを自覚していない」と記録されている。


もし彼女が本当に"転生者であることを知らない"のなら、王国はどのように彼女を管理しているのか――?


それを確かめるため、岩木は次の取材先へ向かうことを決めた

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