王宮からの呼び出し…!
「おい、見たか? 昨日の『アルダNEWS』」
「王国が転生者の研究を封印していたって話だろ?」
「転生者って、一体なんなんだ……?」
王都の広場、商店街、そしてギルド。
人々の間で"転生者"という言葉が急速に広がっていた。
「転生者って、つまり異世界から来たってことだろ?」
「そんな奴らが本当にいるのか?」
「でも、王国が研究してたってことは、何か知ってるってことだよな?」
街中ではさまざまな憶測が飛び交っていた。
(……やっぱり、こうなるよな)
岩木は広場の片隅で、様子を伺いながらため息をついた。
昨夜の報道の影響は、想像以上に大きかった。
(世論が動き出してる……これは今後、どう転ぶか分からないぞ)
そんな中、岩木のもとに一本の魔導通信が届いた。
「岩木記者、王宮にお越しください」
(……やっぱり、来たか)
王国の転生研究を報道した以上、何らかの反応が来ることは予想していた。
岩木は腹をくくり、王宮へ向かうことにした。
「岩木記者、来てくれて感謝する」
王宮の応接室に通されると、そこにはカイバ三世とシラユ隊長が待っていた。
(……国王直々とは、予想以上に大事になってるな)
岩木は椅子に座ると、カイバ三世が静かに口を開いた。
「昨夜の報道……拝見したよ」
「……はい」
「転生者に関する研究を封印していた件について、これを報道するという判断は、慎重に行われたのか?」
岩木はしばらく国王の目を見つめた後、静かに頷いた。
「慎重に決めました。ですが、"事実"である以上、隠すことはできないと思いました」
「……ふむ」
カイバ三世は目を閉じ、考え込むような仕草を見せた。
「我々は、"転生者"という存在が秩序を乱す可能性を危惧している」
「つまり、転生者を"危険視"しているということですか?」
「そうではない」
カイバ三世は静かに首を振った。
「転生者がすべて危険な存在とは考えていない。しかし、一部の転生者は"異常な力"を持ち、制御不能になりうる」
「……以前の召喚された転生者のように、ですか?」
「そうだ」
カイバ三世の目が鋭く光る。
「王国が転生者の研究を封印したのは、"転生の仕組みが完全に解明されていない"からだ」
「つまり、"分からないから危険"だと?」
「そういうことになるな」
岩木は少し考えた後、もう一歩踏み込んで質問した。
「では、"忘却者"については?」
シラユ隊長がピクリと反応する。
「……どこまで知っている?」
岩木はあえて答えなかった。
「王国は"記憶を失った転生者"を管理しているんじゃないですか?」
「…………」
シラユ隊長は国王の方を見た。
カイバ三世は少しの間考えた後、静かに口を開いた。
「岩木記者……お前には、この件をさらに追求する意思があるか?」
岩木は即答した。
「もちろんです。俺は記者ですから」
「……そうか」
カイバ三世は静かに立ち上がった。
「ならば、お前には"知る権利"があるだろう」
そして、意外な言葉を口にした。
「王国の"封印された転生者"について、お前に調査を許可しよう」
封印された転生者とは?
「……許可する、ですか?」
岩木は意表を突かれた。
カイバ三世は、シラユ隊長を見た。
「シラユ、"記録庫の第二区画"へ案内してやれ」
「……承知しました」
隊長が岩木の方へ向き直る。
「岩木、お前は本当に"王国の裏側"を知る覚悟があるか?」
「もちろんです」
「……なら、ついてこい」
岩木は立ち上がり、シラユ隊長と共に王宮の地下へ向かった。
記録庫 第二区画
王宮の地下深くに、"第二区画"と呼ばれる特別な記録庫が存在していた。
分厚い鉄扉に、いくつもの魔法封印が施されている。
(ここまで厳重とは……)
シラユ隊長が封印を解除し、扉を開くと、中には膨大な記録が保管されていた。
「この中に、"封印された転生者"の記録がある」
「……それを、俺に読ませてくれるんですね?」
「お前が知るべき情報だからな」
シラユ隊長は一冊のファイルを取り出し、岩木に手渡した。
『転生者管理記録』
「……"管理"記録?」
岩木は驚きながら、ファイルを開いた。
・ 過去50年間に転生した者のリストが記載されている。
・ "能力を持たない転生者"は、一定の条件下で"管理"されていた。
・ 一部の転生者は"自らの転生を忘れさせられていた"可能性がある。
「……やっぱり、"記憶を消された転生者"は存在したんですね?」
シラユ隊長は静かに頷いた。
「俺たちもすべてを知っているわけではないが……"転生を認識していない者"がいるのは事実だ」
「それを王国が管理していた……?」
「……可能性は高い」
岩木は、ページをめくりながらある一つの名前を見つけた。
"ナルセ"
「……ナルセさんの名前がある」
シラユ隊長が、目を細めた。
「……どうやら、"こいつ"について調べる必要があるな」