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影からの反撃…!

王国とドラゴン族の平和契約を揺るがす謎の組織「影」。俺たちは、彼らの動きと王国に与える影響について特集を組み、旧市街での秘密の集会や影の者たちの不穏な発言を報じた。特番の放送は国中に大きな反響を呼んだが、その分、俺の胸には厄介ごとに巻き込まれたような嫌な予感がまとわりついていた。


「岩木、今回の特番は最高だったな。あれだけの反響があれば、影の者たちが今後どう動くかも警戒されるだろう」


バキさんは達成感をにじませていたが、俺は正直、ただでさえ厄介な取材がさらに面倒なことにならなきゃいいがと心の中でぼやいていた。


「俺には関係ない話だといいけどな……こんな奴ら、こっちまで巻き込まないでほしいっての」


しかし、その放送の翌朝、局内は緊迫した雰囲気に包まれることになる。


朝の会議の開始前、報道デスクのミカサさんが険しい表情で真っ黒な封筒を手にして現れた。その異様な封筒からは、ただならぬ雰囲気が漂っている。


「みんな、これを見て」


ミカサさんが封を切り、中から取り出した手紙を読み上げた。粗雑な手書きで書かれたその文面に、俺は嫌な予感が的中したのを感じた。


「王国を揺るがせるな。影の意志に逆らう報道は許されない。今夜、貴様らの愚かな行動に報いが訪れるだろう」


「これって……影の者たちからの脅迫か?」


その場にいたスタッフ全員が顔を見合わせ、ざわめき始めた。俺もそのうちの一人だったが、正直、こんな脅迫に巻き込まれてなんかいたくなかった。


「まったく、面倒なことになりそうだな……どうして俺がこんなのに巻き込まれなきゃいけないんだよ」


内心でぼやくが、ミカサさんがすぐに対応を指示し、警備を増強することでその日の夜の放送が続けられることになった。


夜の放送が始まり、影の者たちについての報道が続いていく。増強された警備もあり、最初は何事もなく放送が進んでいた。


だが、放送の中盤にさしかかると、局内で異変が起き始めた。モニターが突如として乱れ、機材の一部が制御不能になり始めたのだ。映像が乱れ、会場の空気に不穏な緊張感が漂いはじめる。


「な、なんなんだよこれ……」


俺が困惑していると、ガラスを突き破る音が突然鳴り響いた。振り返ると、黒い装束に身を包んだ複数の男たちが窓から侵入してくるのが見えた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ……マジかよ!」


心臓が跳ねるほど驚いたが、条件反射でいつも携帯しているカメラを構え、無意識のうちに映像を記録し始めていた。俺は恐怖を感じながらも、逃げ出すどころかカメラに手がかかっている自分に内心驚いたが、止めることもできなかった。


影の者たちは、制御室やスタジオの機材を次々と破壊しながら、局内を混乱に陥れていく。


「お前たちの報道など無意味だ……我ら『影』の真意を知ることはできぬ」


影の者たちが叫ぶ中、バキさんが俺を見つけ、小声で囁いた。


「岩木、今のうちに裏口から脱出して警備に知らせるんだ」


「で、でも、バキさん……俺、逃げたいけど」


「ここは俺に任せろ。お前は無事に生きて戻れ」


バキさんの強い口調に突き動かされ、俺は裏口に向かって一気に駆け出した。これ以上巻き込まれるのはごめんだ――そう思いつつも、カメラだけはしっかりと手に握りしめていた。


裏口を出ると、ちょうど王国兵の応援が到着し、影の者たちを取り囲むようにして局内へ進んでいった。息をつく間もなく、俺は警備に状況を伝え、局の外でしばらく様子を見守ることにした。


しばらくして、影の者たちが次々と王国兵に取り押さえられていくのが見えた。ようやく制圧が完了し、局内の混乱も鎮まり、俺は安堵の息をつくと、すぐにバキさんのもとへ駆け寄った。


「バキさん、大丈夫ですか?」


「なんとか無事だ。お前も……無事で何よりだな」


バキさんは疲れた表情を見せながらも、俺が無事に戻ってきたことを確認して小さく笑った。


影の者たちの襲撃が収まった後、俺たちは破壊された機材や混乱した局内を確認しながら、改めて影の者たちの危険さと、報道の力を実感していた。俺は一刻も早くこの事件から手を引きたいと思っていたが、バキさんの横顔には別の決意がにじんでいるようだった。


ミカサさんが全員を集め、深く息をついて口を開いた。


「今夜の事件で分かったことがあるわ。影の者たちは、私たちが真実を明らかにするのを恐れている。そして、私たちが彼らの意図に一歩近づいたということよ」


その言葉に周囲の緊張が高まり、俺はただひたすら面倒だという気持ちが浮かんでいたが、バキさんがそんな俺に近づき、肩を軽く叩いた。


「岩木、たしかに怖いこともある。だが、俺たちが逃げるわけにはいかないんだ」


バキさんの真剣な視線に、俺は反論する気も起きず、静かにうなずいた。影の者たちが報道局を襲撃し、彼らの存在の危険さを見せつけられた今、俺たちはその背後にある真実を追い続けることを余儀なくされることとなった。


報道するということが、これほど面倒で、そして覚悟のいることだったとは……。

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