深まる謎と報道の使命?
カイバ三世国王とドラゴン族の長老ルドラが開いた緊急会見から数日が経過した。しかし、影の者たちにまつわる不安と緊張は、王国内でますます高まるばかりだった。会見で自ら「影」を名乗り乱入した男の一件が、さらに噂を拡散させている。
そんな中、局内では影の者たちについての続報を追いかける特集チームが編成され、俺もバキさんと共に取材班に加わることになった。影の者たちの意図を掴むことは、今や王国全体の不安を解消するための重要な任務とされていたのだ。
昼下がり、俺たちが取材の準備を進めていると、王宮から緊急の知らせが舞い込んだ。なんと、カイバ三世国王が再び会見を開き、影の者たちについての新たな情報を発表するというのだ。報道デスクのミカサさんはすぐに対応を指示し、俺とバキさんも急ぎ王宮へと向かった。
王宮の会見室に入ると、カイバ三世国王の周囲には王国の重鎮たちが集まり、前回以上に厳しい雰囲気が漂っていた。カイバ三世は沈痛な面持ちで語り始めた。
「影の者たちは王国内で次々に行動を起こし、民衆に不安を広げている。その活動を追跡したところ、彼らは地下組織を作り、王国全土にその根を広げていることが判明した」
国王の言葉に、会場がざわつく。影の者たちは組織的に動き、王国の基盤を揺るがそうとしているのだ。さらに、影の者たちがドラゴン族の聖域に潜入し、その力を盗み取ろうとしていることが明らかになった。
「これ以上、彼らの行動を許してはならない。王国とドラゴン族の平和を守るため、影の者たちを徹底的に追い詰め、排除する!」
カイバ三世の強い言葉に、王国の重鎮たちも厳しい表情でうなずいていた。
会見を終えた俺とバキさんは、早速影の者たちに関する手掛かりを追うことになった。彼らの活動がどこに広がっているのか、そしてその組織は一体どこに根付いているのか――手掛かりを求めて街中を取材して回る。
取材を進めるうちに、いくつかの街外れの区域で「不審な集会」が開かれているという噂が聞こえてきた。どうやら影の者たちは、市民の中から支持者を集めているらしい。その集会場所は、旧市街にある古びた教会跡。俺たちはその情報をもとに調査に向かうことにした。
夜になり、旧市街の教会跡にたどり着いた。周囲は静まり返っていて、人気のない場所だ。バキさんが少し離れた場所から慎重に様子をうかがうと、教会跡の扉がわずかに開き、誰かが中にいるような気配がした。
「岩木、あそこに誰かいる。念のため、慎重に近づこう」
バキさんとともに物音を立てないように進むと、教会の中には小さな灯りがともり、数人の集まりが確認できた。その中の一人が、会見で現れた影の男と同じ黒いマントをまとっている。
「やはり、あいつらか……」
俺たちは息を潜め、カメラを構えて彼らの様子を記録した。影の者たちは低い声で何かを話しているが、内容までは聞き取れない。しばらくすると、一人がふいに立ち上がり、手に持っていた古びた巻物を掲げた。
「我々は王国の真実を知る者だ。王国は我らの手で浄化されねばならぬ」
その言葉を皮切りに、集会のメンバーたちはまるで儀式のように唱和を始めた。俺たちはその異様な光景をカメラに収め、できるだけ多くの映像を記録した。
その後、俺たちは影の者たちの集会が終わるのを見届け、教会跡を後にした。バキさんも険しい顔で振り返りながら、低い声で呟いた。
「岩木、どうやらこいつらは相当な覚悟を持って王国を揺さぶろうとしているようだ。これを伝えるのは、俺たちの使命だな」
「はい、でも……なんだかただの反乱者じゃないみたいです」
俺の言葉に、バキさんは黙って頷いた。影の者たちが本当に王国の崩壊を望んでいるのか、それとも他の目的があるのか、まだ全貌はわからない。ただ、影の者たちの存在は確かにエルダリア王国とドラゴン族の平和を脅かしている。
報道部に戻った俺たちは、影の者たちの集会について得た情報を元に、夜のニュース特番を制作した。旧市街での秘密の集会、影の者たちの不穏な発言、そして彼らの王国に対する暗い思惑――。報道特番は大きな反響を呼び、視聴者の注目を集めた。
だが、この特番が国民に警鐘を鳴らす一方で、王国に新たな不安も広がり始めた。影の者たちの謎を追いながら、俺たちはさらに深い陰謀と向き合うことになる。
まだ見ぬ「影」の真意を暴くために――。