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過去を追う者…!

リオ博士の研究所を後にした岩木は、夜の王都エルダンを歩いていた。


異世界転生。

この世界で10年前に死んだ記者、ナルセ。

そして、かつての自分に記者のいろはを教えてくれた、現代のナルセ。


(もし、俺の知っているナルセさんと、この世界で死んだナルセが同一人物なら……)


(俺が異世界に来た理由も、単なる偶然じゃないのかもしれない)


考えれば考えるほど、混乱が深まっていく。


「……とにかく、ナルセさんがこの世界で何を追っていたのか調べないと」


岩木は気持ちを整理し、次の取材の方針 を決めた。


・ナルセが調べていた異世界転生の研究とは何か?

・10年前の彼の取材記録を探る

・彼が最後に残した「記事」や「証言」がないかを調べる


この世界のジャーナリストとして、かつての師匠の足跡を追うことにした。


翌朝、岩木は報道局の資料室にいた。


「おっ、岩木くん。珍しく真面目に調べ物か?」


そう声をかけてきたのはバキさんだった。


「いや、ちょっと調べたいことがありまして」


「ほう、何を調べてるんだ?」


バキさんはライオンのような顔を岩木の肩越しにのぞき込んだ。


「……10年前に、王国で記者をしていた『ナルセ』という男のことを知っていますか?」


バキさんは少し驚いた表情を見せた。


「ナルセ? ああ、確かにそんな記者がいたな。俺がこの仕事を始めた頃に、ちょうど彼が消えたって話を聞いたことがある」


「消えた、ですか?」


「詳しくは知らねぇが、当時、王国の“とある問題”を追っていたらしい。その矢先、ある日突然姿を消した」


岩木は鋭く問いかけた。


「その“とある問題”って、なんだったんですか?」


バキさんは腕を組んで少し考え込んだ。


「……異世界転生に関する何か、だったと思う。ただ、当時はそのテーマ自体が報道規制されていたからな。正式な記録としては残ってねぇかもしれん」


(やっぱり……ナルセさんは異世界転生の研究を追っていたんだ)


「でも、証拠を残さずに取材していたとは思えないんですよね……彼の取材記録って、どこかに残ってないんですか?」


「そりゃあ、資料室の過去記事を探せば何か出てくるかもしれないな」


バキさんは棚を指さし、少し笑った。


「まあ、気長に探してみるこったな」


岩木は過去10年分の報道アーカイブを漁り、ようやく 「ナルセ」の名前が記された古い新聞記事を見つけた。


そこには、彼の署名入りの記事が載っていた。


「王国の禁忌――闇に葬られた研究」

執筆者:ナルセ・K


(あった……!)


岩木は記事を読み進めた。


内容は以下のようなものだった。


・王国には過去に「異世界転生に関する研究」が存在した。

・その研究は王国の高官たちによって封印された。

・しかし、何者かがその研究を再び掘り起こし、極秘裏に実験を行っている可能性がある。

・実験が成功すれば、「異世界からの召喚」が可能になるかもしれない。


記事の最後には、こう締めくくられていた。


「この研究が真実ならば、世界の秩序そのものが崩れることになるだろう」


(……なるほど。だから王国はこの研究を封印したのか)


しかし、その記事には “続報なし” という注釈がついていた。


(続報がない……? つまり、この後の取材が封じられたってことか?)


岩木は 「ナルセの最期の取材記録」を求めてさらに調べることにした。


「岩木くん、何をそんなに必死になってるの?」


突然、後ろから声をかけられた。振り向くと、そこにはサラが立っていた。


「いや、ちょっと昔の取材記録を探してて」


「ふぅん……それにしても、こんなに真剣な顔してるの珍しいじゃない」


サラは興味深そうに記事を覗き込む。


「“闇に葬られた研究”……なんか怪しげな話ね」


「10年前に王国で起きた“ある事件”を追ってた記者がいたんだけど、その続報が見つからないんだ」


サラは腕を組んで考え込む。


「王国側が隠したってこと?」


「たぶんね。だから、その隠された部分を掘り起こしたい」


サラはニヤリと笑った。


「じゃあ、私も手伝ってあげるわよ」


「え?」


「面白そうじゃない? それに、あなた一人じゃ大した調査もできないでしょ?」


(……まぁ、確かに)


「じゃあ、お願いしようかな」


「任せて!」


こうして、岩木とサラはナルセの取材記録の“続き”を探すことになった。


その後、二人で過去の記録をさらに調べた結果――

ある有力な情報が浮かび上がった。


「ナルセが最後に取材へ向かった場所は、王都から北東にある《封印の研究所》だった」


その研究所は 10年前に閉鎖され、今では廃墟になっている という。


「……行ってみるしかないな」


「え、今から?」


「いや、準備をしてからな。どうせ簡単に入れる場所じゃないだろうし」


「まったく……記者って本当に厄介な仕事よね」


サラはため息をつきながらも、どこか楽しそうだった。


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