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異世界転生...?

久しぶりの休暇。岩木はようやく自由な時間を手に入れた……はずだった。


しかし、その平穏は一瞬で打ち砕かれることになる。


朝食をとっていたカレンの店で、一通の伝言が届いた。


「至急、会いたい。報道局ではなく研究所へ来てくれ」


送り主はリオ博士。


「至急って…これ絶対、面倒な話ですよね」


ため息をつきながら、伝言を持ってきた少年に「わかった」とだけ返し、岩木は食事を済ませると王立研究所へ向かった。


研究所の奥、いつもの部屋に入ると、リオ博士は分厚い資料を机に広げ、険しい顔をしていた。


「やあ、岩木くん。急に呼び出してすまなかったね」


「博士が『至急』なんて言うの、めちゃくちゃ珍しいんですけど?」


「ふむ、それほど重要な話だからね」


博士は一度椅子に座り直し、改めて岩木を見つめる。


「単刀直入に聞くが…君は、ナルセという記者を知っているか?」


その名前を聞いた瞬間、岩木の中で何かが弾けた。


ナルセ――かつて岩木に記者のいろはを教えてくれた、伝説的な記者の名前だった。


「……知っています」


自分の声がわずかに震えているのが分かった。


博士はそんな岩木の反応をじっと観察するように見つめながら、静かに頷いた。


「やはり、君は……」


「やはりって、どういうことです?」


「実はな、岩木くん。私は、君に最初に会ったときから妙な違和感を覚えていたんだ」


博士の瞳が鋭くなる。


「私が知る限り、この世界で生まれ育った人間とは違う、ある種の『雰囲気』を、君から感じる。まるで……」


博士は一瞬言葉を飲み込んでから、慎重に言葉を紡いだ。


「まるで、この世界の人間ではないような...」


岩木は博士の言葉にハッとした。


(まさか、博士は……)


「博士、あなたはその“雰囲気”を他に感じたことがあるんですか?」


博士は少し驚いたような顔をした後、静かに頷いた。


「少なくとも、かつて私が出会った "ナルセ" という記者からは、同じ雰囲気を感じたよ」


「……!」


(やっぱり……ナルセさんは、俺と同じく転生者だったんだ)


岩木は自分の胸の奥がざわつくのを感じながら、ゆっくりと口を開いた。


「博士……俺も、本当はこの世界の人間じゃないんです」


博士の眉がピクリと動く。


「……つまり?」


「俺は別の世界で記者をしていました。俺に記者としての基礎を教えてくれたのが、ナルセさんです」


博士は驚きを隠せない表情で、沈黙した。そして、数秒後、ゆっくりと息を吐いた。


「……そうか。やはり、そうだったか」


「博士、あなたは俺が転生者だと、最初から気づいていたんですか?」


「"確信" はなかった。だが、君が異世界の記者であると知り、今すべてが繋がった気がするよ」


博士は引き出しから一枚の古い写真を取り出した。


「これが、10年前にこの世界で記者をしていたナルセだ」


岩木は写真を覗き込み―― 息を呑んだ。


そこに写っていたのは 間違いなく、自分が知っているナルセの顔だった。


「彼は、異世界転生に関する機密を調べていた。そして、それが彼の死に繋がった」


博士の言葉が岩木の脳内を駆け巡る。


「彼は、かつて異世界転生に関する研究を調査していた。そして、王国はその研究を封印したんだ」


「封印……?」


「私もかつて異世界転生の理論を研究していた。しかし、その研究は王国によって禁止された。理由は簡単だ――制御できないから だよ」


博士は静かに続ける。


「ナルセは、その研究を暴こうとしていた。そして、消された」


岩木はぎゅっと拳を握る。


(もしこれが本当なら、俺がこの世界に転生したことも……?)


「博士……もし仮に、異世界転生が可能だったとしたら、それは誰かの意図によるものなんでしょうか?」


博士は沈黙した後、ぽつりと呟いた。


「それを知るために、ナルセは命を落としたのかもしれないな…」


研究所を後にした岩木の頭の中は混乱していた。


(ナルセさんはこの世界で記者として生き、死んだ……)


(俺が知るナルセさんと同一人物だとしたら、彼はなぜここに転生した? そして、俺はどうして?)


(もしかすると、俺たちの転生には何か共通点があるのかもしれない)


岩木は静かに拳を握る。


(これは偶然じゃない。ナルセさんが命をかけて追っていたもの……今度は俺が暴く番だ)


かつて、自分に記者としてのすべてを教えてくれた師匠。

その人がこの世界で死んでいたのなら――


「次の取材は決まりましたね……」


異世界転生の真実を、俺が報道する。


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