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久しぶりの報道局…!

長かったエルヴィス王国での取材を終え、岩木とセキさんはようやくエルダリア王国へと帰還した。


馬車に揺られる道中、岩木は窓から景色を眺めながら、久しぶりの王国の空気を感じていた。


「ようやく戻ってきましたね…」


隣に座るセキさんは腕を組みながら苦笑する。

「そうだな。だが、戻ったら戻ったでまた忙しくなるんじゃないか?」


「いやいや、さすがに一旦は休ませてもらいたいですよ…。戦争取材から復興取材まで、ノンストップでしたからね」


「お前がそんなこと言っても、報道局が休ませてくれるとは限らないけどな」


「それは…ありえますね…」


岩木はため息をつきながらも、王国に戻ることへの安心感を噛みしめていた。


王国の首都エルダンに到着すると、見慣れた街並みが広がっていた。戦争後の復興が進んでいるとはいえ、エルヴィス王国とは比べ物にならないほどの活気が街には戻っている。


「やっぱりこっちの方が落ち着きますね…」と岩木がしみじみと呟くと、セキさんも同意するように頷いた。


「戦場と復興現場ばかり見てたからな。普通の街の風景が妙に新鮮に感じるよ」


市場では商人たちが元気に客を呼び込み、通りを行き交う人々の顔には余裕がある。久しぶりに「日常」というものを感じる瞬間だった。


「とりあえず報道局に戻りますか?」と岩木が尋ねると、セキさんは肩をすくめた。

「俺はここで一旦抜けるよ。久々にプライベートの仕事もあるからな。お前はご報告頑張れよ」


「えっ、俺だけですか!?」


「まあ、しっかりデスクに報告しとけって。じゃあな」


そう言い残し、セキさんは人混みの中へと消えていった。


「うわー…これは絶対に捕まるパターンだ…」


岩木は内心うんざりしながらも、観念して報道局へと足を向けた。


エルダリア・ヴィジョン・テレビ(EVT)の報道局に足を踏み入れると、久しぶりの局内の喧騒が岩木を迎えた。忙しそうに資料を持って行き交うスタッフたち、デスクで原稿を仕上げる記者たち――いつもの光景だ。


「おおっ、岩木くん!」


最初に声をかけてきたのはバキさんだった。ライオンの獣人らしい豪快な笑みを浮かべながら、ガシッと岩木の肩を叩く。


「無事に戻ったか! いやぁ、お前の取材、ちゃんと見てたぞ! すごかったじゃないか!」


「いやいや、そんな大したことは…」


「何言ってるんだ! お前、もはやEVTの看板記者だぞ!」


「えぇ!? そんなプレッシャーをかけるのはやめてください…」


バキさんと話していると、別の方向から鋭い声が飛んできた。


「岩木くん、遅かったじゃない!」


振り向くと、そこにはサラとモリヒナが立っていた。


「いや、遅かったというか…ようやく戻れたんですって…」


「まったく、こっちはずっと岩木くんの取材映像ばかり見てたのよ? どうせなら、もっと派手に帰ってきなさいよ」とサラが不満そうに言う。


「派手にって言われても…」


モリヒナはクスリと笑いながら「お疲れ様」と声をかけてくれた。


「戦場や復興現場の取材は大変だったでしょう? まずは少し休んだほうがいいわよ」


「モリヒナさんの優しさが沁みます…」


「それより、ミカサデスクがあなたを探してたわよ?」


「…やっぱりそうなりますよね」


覚悟を決め、ミカサデスクの部屋へ向かうと、すでに彼女は机の上の書類を整理しながら岩木を待ち構えていた。


「岩木くん、お帰りなさい」


「ただいま戻りました…!」


ミカサデスクは一度うなずくと、机の上の資料を手に取った。


「あなたの取材、素晴らしかったわ。王国にとっても、そして報道の歴史にとっても、大きな意味のある仕事をしてくれた」


「いえ、ただ現場で起きていることをそのまま伝えただけです」


「それが一番大事なのよ。だからこそ、今回の取材をしっかり総括して、今後の報道に活かしていきましょう」


岩木は次の仕事を覚悟していたが、ミカサデスクは少し笑いながら続けた。


「でも、まずはしばらく休みを取りなさい。エルヴィス王国での取材、相当ハードだったでしょう? さすがにここで倒れられても困るしね」


「えっ、本当に休んでいいんですか…?」


「当然よ。むしろ、ちゃんと休まないと許さないわよ」


「……ありがとうございます!」


まさかの展開に岩木は驚きつつも、心の底から安堵した。


その日の夜、岩木はカレンの店でゆっくりと食事を楽しんでいた。


「おかえりなさい、岩木さん!」


久しぶりに聞くカレンの明るい声に、岩木はほっと息をついた。


「ただいま戻りました!」


「今日は特別サービスで、一番人気の料理を出しますね!」


「それは嬉しい!」


久しぶりのまともな食事に、岩木は心の底から満足していた。


(やっと休める…しばらくは、何も考えずにゆっくりしよう)


次の取材がどんなものになるかは分からないが、それは休んでから考えればいい。


そう思いながら、岩木は料理を味わい、久しぶりの休息を楽しんだ――。

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