復興の成果…!
エルヴィス王国の首都エルヴィサに支援隊が到着してから数週間。
物資の配布、インフラの復旧、住民たちの自主的な復興活動が進み、ようやく街には少しずつ活気が戻り始めていた。
岩木とセキさんも、これまで密着してきた復興の流れを総括し、最後の取材を行うことになった。
「ここ、だいぶ片付いてきたな…」
岩木は街の中心部を歩きながらカメラを回し、その変化を実感していた。
数週間前までは瓦礫が積み重なり、戦争の傷跡が色濃く残っていたこの場所も、道は整備され、一部の建物は修復されていた。商店も少しずつ再開し、露店では簡単な食べ物が売られるようになっている。
セキさんもカメラを構えながら言った。
「最初に来たときとは比べ物にならないな。ようやく街が“生き返り”始めた感じだ」
そんな中、岩木は以前取材した若者グループのリーダー、ダリオを見つけた。彼は泥だらけの服を着ながらも、誇らしげな笑みを浮かべていた。
「ダリオさん、お久しぶりです。あれからどうですか?」
ダリオは力強く頷く。
「順調とは言えないけど、確実に前に進んでる。商店が少しずつ再開して、食べ物も手に入りやすくなってきた。みんなが自分の生活を取り戻そうと頑張ってるよ」
「支援隊の活動も一区切りつくそうですが、これからの課題は?」
「結局のところ、俺たち自身の努力が必要だってことだな。支援がいつまでも続くわけじゃないし、自分たちで経済を回していかないと。まだまだ道のりは長いけど、この街をもっといい場所にしていくつもりさ」
岩木はダリオの力強い言葉を聞きながら、カメラを回し続けた。
支援活動の終了を前に、エルダリア王国の支援隊リーダーにも最後のインタビューを行った。
「支援活動はこれでひと区切りとなりますが、現地の状況についてどう感じていますか?」と岩木が尋ねると、リーダーは少し疲れた表情を浮かべながらも、満足そうに答えた。
「最初はどうなることかと思ったが、住民たちが自ら立ち上がろうとしている姿を見て、支援した甲斐があったと感じるよ。我々の役目は、彼らが自立するための手助けだったからな」
「今後、エルダリア王国としての支援はどうなりますか?」
「継続的な経済支援や技術協力は続けるが、基本的には彼ら自身の力で復興を進めることになる。私たちはこの国が再び立ち上がるのを見守るだけだ」
岩木はその言葉を胸に刻みながら、インタビューを終えた。
「これで俺たちの取材も一区切りですね」
宿に戻る道すがら、岩木がそう呟くと、セキさんが頷いた。
「そうだな。復興の様子をしっかり伝えられたし、何より現地の人たちが前を向いてる姿を記録できた。それだけで十分だろ」
「確かに。最初はどうなるかと思いましたけど、取材を通じて、ただ支援を受けるだけじゃなくて、彼ら自身が未来を作ろうとしていることが分かった気がします」
セキさんは軽く笑いながら言った。
「お前も最初はサボることしか考えてなかったのにな」
「うっ…確かに…」と岩木は苦笑しながらも、改めて取材を続けてよかったと感じていた。
その夜、「アルダNEWS」では、エルヴィス王国の復興特集の締めくくりとして、岩木とセキさんの取材映像を放送した。
モリヒナが落ち着いた口調で伝える。
「隣国エルヴィス王国では、支援を受けながらも、自ら復興を進めようとする住民たちの姿がありました。戦争で失われたものは大きいですが、彼らは未来に向かって歩み始めています」
画面には、ダリオたちが作業を進める映像や、商店が再開する様子、そして笑顔を取り戻しつつある住民たちの姿が映し出された。
「支援が終了しても、復興は続いていきます。エルヴィス王国がどのように再建されていくのか、今後も見守っていきます」とモリヒナは締めくくった。
取材を終えた岩木とセキさんは、エルダリア王国へ帰る準備を整えていた。
「久しぶりに王国に帰れますね」と岩木が言うと、セキさんが少し笑いながら答えた。
「そうだな。だが、戻ったら戻ったで、また忙しくなるだろうな」
「それはそうですけど…少しぐらい休めるといいですね」
「はは、期待しすぎるなよ」
王国への帰還が近づく中、岩木はこの取材を通じて得たものを思い返していた。
(俺は最初、ただのサボり記者だったけど、気づけば色んな人の思いを伝える仕事に本気で向き合っていた気がする。まあ、だからといって急に真面目な記者になるわけじゃないけど…)
「さて、帰ったら久々にまともな飯でも食うか!」と岩木は笑いながら言い、王国へと向かう馬車に乗り込んだ――。