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平和契約の破棄…?

エルダリア王国とドラゴン族が結んだばかりの「平和契約」に、早くも暗雲が立ち込め始めているという噂が局内に流れた。


その契約は、数か月前にドラゴン族の長老ルドラと王国によって締結され、エルダリア王国に強力な加護がもたらされるはずだった。しかし、今朝になってバキさんが慌てた様子で報道フロアに戻ってきた。


「ミカサさん!急な話だが、どうやらドラゴン族との契約が破棄されるかもしれないらしい!」


バキさんが息を切らしながらそう伝えると、報道デスクのミカサさんは驚いた表情を浮かべた。


「なぜそんなことに?つい先日結ばれたばかりじゃないの」


「その詳細はまだわかっていませんが、どうもドラゴン族側に重大な問題が発生したようです。王宮側にもまだ公式な発表はないようですが……」


ミカサさんは少し考え込んだ後、冷静に指示を出した。


「まずは王宮に打診して、正式な情報を確認してきてください。バキさん、あなたが直接行って、しっかり情報を押さえてきなさい」


「了解です」


バキさんはすぐに王宮に向けて出発した。一方で、俺には別の指示が出された。


「岩木、あなたは街に出て市民の声を拾ってきて。ドラゴン族との契約が破棄されるなんてニュースが広まれば、街も騒然となるはずだから」


「ええ……」


面倒に感じつつも、仕方なくカメラを持って街に出ることにした。


街はすでに騒がしい雰囲気に包まれていた。ドラゴン族との契約が危機にあるという話がすでに広まり始めており、市民たちは不安な面持ちで噂を交わしていた。


「ドラゴン族との契約がなくなれば、王国も危険になるんじゃないか?」


「いったいどうしてそんなことに……」


「実は、影の者たちが絡んでるって話もあるぞ」


インタビューを続けるうちに、「影の者たち」について話す市民が現れた。どうやら彼らが、ドラゴン族の加護を脅かしていると噂されているらしい。俺はこの話をしっかりカメラに収め、いくつかのインタビューを終えた後、報道部に戻ることにした。


局に戻ると、バキさんがちょうど情報を入手したところだった。なんと、この後王宮で緊急会見が開かれ、国王とドラゴン族の長老ルドラが直接会見を開くというのだ。俺もバキさんとともに王宮へ向かうことになった。


会見場は重々しい空気に包まれていた。そこに登場したのは、王国を統べる壮年の王だった。彼こそがエルダリア王国の現国王カイバ三世。これが彼の名だと知るのは、俺にとってはこの会見が初めてだった。


「本日、王国とドラゴン族の平和契約に不測の事態が発生しました。我がエルダリア王国に加護を与えるための契約が、一部の者たちによって脅かされています」


カイバ三世が深刻な表情で口を開くと、会場は静まり返った。その隣には、ドラゴン族の長老ルドラが険しい顔で立っており、契約が危機にある原因について話し始めた。


「影の者たち……自らを『影』と名乗る者たちが、我々ドラゴン族の聖域に侵入し、我らの力を弱めようとしている。我々ドラゴン族が受けている影響が続けば、加護を続けることは難しい」


「影」――俺はその言葉に胸がざわつくのを感じた。


会見が進む中、突然、会場の隅から大声が響いた。


「我こそは『影』の一員だ!」


その男は黒いマントに身を包み、不気味な雰囲気を漂わせていた。会場は一気にざわめきに包まれ、警備が駆け寄るも、男は鋭い視線で会場中を見回していた。


「ドラゴン族も、王国も、我々の存在を知らねばならぬ。我らの意志を止めることはできぬのだ!」


そう叫んだ次の瞬間、男は自らに短剣を突き立て、会場のど真ん中で倒れ込んだ。会場は悲鳴と混乱に包まれ、俺はその瞬間をカメラに収めた。


会見の後、バキさんは王宮の知人を通じて、カイバ三世国王から直接話を聞く機会を得た。俺たちはこっそりと国王の部屋へ案内され、事の真相について尋ねた。


「影の者たちは、王国を揺るがそうとしている異端の一団だ。彼らは我々の加護を脅かし、ドラゴン族との関係を崩壊させようと画策しているのだ」


カイバ三世は険しい表情で語り、ドラゴン族と王国の平和を維持するために影の者たちを徹底的に排除しなければならない、と強く決意を滲ませていた。


俺たちは取材で得た情報をもとに、影の者たちの脅威と、王国の揺るがぬ決意を中心に夜の特大ニュースを制作した。混乱の中で会場に現れた自称「影」の男、王国とドラゴン族の契約の危機、そしてその背後に潜む「影」の正体。報道の後、バキさんはその取材手腕を称賛され、俺もほっと胸を撫で下ろした。


「岩木、今日はご苦労だったな」


バキさんがそう声をかけてくれたので、ようやくひと段落した気分で俺も安堵した。


だが、この時はまだ知る由もなかった。

この「影」による事件は、俺を想像もしなかった危険な事件の渦中へと引き込んでいくことになるのだ。

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