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四章第二話 上陸キバナ大陸

本日の投稿は此処で終了です。明日は3話と4話投稿致します。

 その頃のヴラム一行

 「うわぁ…なんかあの大陸…空黒くない?」

 「ケホケホ…うう…なんか息を吸うと喉が…」

 フェリーはココヤシ大陸より北方向に進んでいた。

 海を眺めていたエーデルとベルは北に見えてきた大陸を見て眉間に皺を寄せた。


 大陸の真ん中あたりから黒い煙のようなものがもくもくと上がり真っ黒の雲のように見える。そして周辺に近づくにつれてツンとした空気が流れて鼻や喉、目を刺激してくる。

 実際ベルも器官に空気が入って咳き込んでいる。


 他のメンバーも以前エーデルがグリムと接触している事から警戒してそばにいた為、その大陸の姿に目を丸くしていた。

 「あれがキバナ大陸だにゃん」

 「久しぶりに来たけど…なんか…その…」

 「ふむ…200年前より悪化しておるな。空気が汚い。おいシュリ!荷物にスカーフが入ってるから口にまけ!ばっちい空気を吸ったら病気になるぞ!」

 「ゔ…ヴラム様…」


 ハチの発言にエーデルとベルは成程と納得した。以前ハチがキバナ大陸を五月蝿い、汚い、臭いと言っていた。

 確かに臭いし汚い。しかも大陸に行けばここにうるささが入るのかと二人は項垂れた。

 

 一方マギリカは苦笑しながらも言いにくそうにしているがヴラムははっきりと"空気が汚い""ばっちぃ"と言い出した。流石はデリカシー皆無である。仕舞いには親バカを発動させてシュリの口元にスカーフやらハンカチやらを押し付けて困惑させている。


 近づくのが嫌でも仕方ない足を踏み入れねば何も始まらないのである。

 より近づくと臭さも空気の汚さもより濃くなる。海にはゴミやらオイルやらが浮かんでいる。これには兄の大好きな海を汚されている事にベルは苛立たしげな顔をしている。

 「海も…汚いです!何でこんなに汚くなってるんですか!」


 ベルは頬をぷくりと膨らましてプンスカと怒り出す。エーデルとマギリカが宥めるが中々機嫌は治らない。

 そしてとうとう上陸する事になった。

 「ほら?ベル行こう」

 「むー…」

 エーデルに手を繋がれながらベルは渋々フェリーから降りた。


 「産業やらが盛んな分環境破壊が凄まじいのにゃん。けどその代わりこの大陸は病院設備も他より充実しているし、皆んなの暮らしを支える"魔力発電所"もあるのにゃん。それに町に入れば多分だけど空気は綺麗にゃんよ?

 まぁ…200年前と変わってなければだけど…」

 「むう…でも海を汚すのは許せないです!」

 ハチは大陸のいい部分も説明するがベルの怒りは収まらない。


 するとマギリカが

 「そうね…海にゴミが入るとお魚がそれを食べて死んでしまうもの。許せないことだわ…。それにベルちゃんのお兄ちゃんが大好きだった海が汚されるの嫌よね?」

 そう語るとベルは少し落ち着きコクコクと縦に首を揺らした。どうやら同意してもらったからすこし安心した様子である。


 「大丈夫よ。私たちはちゃんと分かってるから。ね?」

 「はい…。えへへ…マギリカさんママみたいです」

 ベルはマギリカに頭を撫でられて擽っそうである。マギリカはそんなベルが可愛くてなかなか手を止めない。


 「さっすがマギリカさん!つーかアンタらいつまでやってるのよ…」

 マギリカに感心するエーデルが後ろを振り返ると未だヴラムがスカーフやらマスクやらを持ってシュリにジリジリと迫ろうとしている。


 「いいからマスクをつけろ!肺炎になったらどうする!最悪死ぬのだぞ!貴様この前も風邪ひいて死にそうになっておっただろうが!」

 「だから大丈夫ですって!寧ろヴラム様がつけて下さいよ!というか風邪なんて俺が10歳ごろにひいたのが一番最近ですし!」

 「?11年前なんてついさっきのことであろう?」

 「く…長命種の時間感覚…」


 ヴラムの親バカと染められ切った長命種独特な時間感覚にシュリの方が顔をシワシワにしている。いつもと逆だ。エーデルは呆れ返っている。

 「いいから行くよ?もう…」

 エーデルはヴラムとシュリの腕を引っ張りながら町へ向かう。他の3人は前方でベルを真ん中にして歩いている。

 ハチとマギリカはベルと手を繋いでまるで親子である。

 

 


 その頃同時刻…一人の黒毛の虎型の獣人の男性がじっと一点を見つめていた。それは監視カメラのモニターである。

 そのモニターにはヴラム一行も写っていた。

 「あれが…主の言っていた…。あの人間の女がエーデル・ホワイト…ん?」

 男は更にモニターを凝視する。


 「いや…まさかこいつは…ロクロか?」

 男はそう呟き黙り込んだ。その瞳には懐かしさと悔しさが滲んでいた。

 男のいる部屋にはモニターが沢山ついていて機械が沢山組まれている。

 そして部屋の奥にはガラスの壁で包まれた大きな例の花が閉じ込められていた。


 「待ってろ。ロクロ…。必ずお前を助けて見せるから…」

 男はハチの映るモニターをじっと見つめていた。





 場面が戻りヴラム一行。

 町に向かい近くにいくと何やら透明なドームとその上から長い煙突が突き出しているのが見えた。ドームは町全てを囲っている。

 「あれ?結界じゃないのか?」

 シュリは首を傾げた。

 「前は結界だった筈にゃんだけど…」

 ハチも戸惑っているようだ。

  

 「多分だけどあのドームは煙避けとか汚染された空気が入ってこないようにするためのものかしら。結界だと確かに魔力とか物理的な攻撃は防げるけど…煙はちょっも難しいわね…」

 結界はそもそも魔力の粒が規則正しく細かく並ぶ事で壁となり大抵の魔法や攻撃は防ぐことができる。


 だが粒の僅かな隙間を通るような物だと難しい。ドラセナでたまに起こる魔物からの毒息。

 これはまだ少量だし、毎回起こるものではない上に魔力が殆どの毒をブロックしてくれるのだ。確かに微力の毒息が間を縫って入ってはくるが量は微々たるものである。


 しかしキバナを取り巻く汚染された空気や煙はそうそう防げるものではない。量も多いし常にそれらが取り巻く環境である。

 例え結界を張っても防ぎきれない。

 「あのドームガラスかな?」

 「そのようだな…。煙突から外に煙やら何やらを撒き散らして自分達は快適な生活を送っておるのだろう?

 全く外の事などお構いなしと言うわけか…」

 

 エーデルがまじまじとドームを眺めていてヴラムはその横で嫌味を言っていた。ベルはベルでじっと町への入り口を見ていた。


 何やら先程共にフェリーから降りた人等は慣れた様子で町へ入るのだが入口のドアが人が近づくと勝手に横にスライドして開いている。そして人が通り終わるとまた勝手に閉まる自動のガラス扉である。

 ベルは海を汚した事に苛立つものの少しワクワクしていた。


 一行もガラス扉へ向かい歩き始めた。

用語

 ◯キバナ大陸

 科学が発展していて他の大陸よりも近代的な見た目をしている。しかしやりすぎた研究や科学技術は外の環境を汚染してしまう悪循環を生み出してしまった。

 暮らしやすさはトップクラスではある。

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