三章第十九話 騎士団との情報共有
17時過ぎ頃に二十話投稿予定
「点滴って不便だよねぇ…」
「仕方あるまい。医者がしろと言っているんだ。して損はなかろう」
エーデルとヴラムは早速ヒューベルトの病室に向かっていた。
エーデルは未だ点滴をしているので点滴を引っ張ったまま歩行している。
ヴラムは慣れない点滴を引っ張りながら歩くエーデルに合わせてゆっくりした歩調で歩いている。
「皆んなどうしてるかな…」
「全員無事だ。貴様より早く目覚めたからな。あとゴローという小僧もな」
「そっかぁ…良かった」
エーデルはホッと胸を撫でる。
そして二人が歩いてヒューベルトの病室に行くと…
「ダーリン♡あーんして♡」
「あーん♡」
ゴローとヒューベルトは同室である。
ゴローのそばにはキララがいてキララがゴローにカットされたパインを食べさせている。文句なしの二人の世界。
ヴラムはウザそうな顔で舌打ちしながら見つめている。エーデルは顔を赤くしている。そして隣の少年をチラチラ見てはまた赤くなって俯いていた。
そして何となく横に目をやると
「あれ?ヒューベルトさん?」
ヒューベルトが耳を塞いでいる。しかしすぐにエーデルに気づき涙目になる。
「エーデルさん!聞いて下さいよ!こいつら人がこうやって寝込んでんのにイチャコライチャコラと!クッソウザくていや!」
どうやらヒューベルトが目を覚ました頃にはすでに二人の世界は形成されたらしい。一応起きた後に声をかけたら二人は心配してくれた。
だが暫くするとまた二人の世界に入り込んだらしい。
「もう…もういや!マギリカさんとイチャコラした…ん?」
ヒューベルトはじっとヴラムの方を見る。するとキリッとした顔になり
「エーデルさん隣にいる黒髪美人は誰ですか?お嬢さん名前を教えて頂いても?」
と言い終わるとエーデルは顔を真っ青にした隣から途轍もない冷気が放たれている。
するとヴラムはスタスタとヒューベルトの目の前に立った。ヒューベルトはその正体に気づいて顔を真っ青にした。
「いや待て待て待て!だって髪下ろしてるし普段と全然違う服装だから気づかなかったんだよ!いやぁ前から思ってはいたけど美人だもんなぁ…うんうん。結構タイプだよ?本当男にしとくの勿体n「"凍結"」
ヴラムが静かに呟くとヒューベルトはカチカチに凍った。どうやらヴラムの地雷を踏んだらしい。
「誰がお嬢さんだ…。俺は男だ!好きでこんな顔しとらんわ馬鹿たれ!後貴様らはいつまでイチャついている!いい加減うざい!」
ヴラムは喚き始めた。しかしキララはてへぺろと舌を出して
「だってぇ♡ダーリンが心配でえ♡」
「キーちゃん!愛してる!何て優しいんだ♡」
とやはりイチャイチャしだした。ヴラムは再度舌打ちし、エーデルも少しイラッとしていた。
すると
「ヴラムさまぁぁ!何事ですか!ご無事ですかぁ!だから髪を下ろすなと言ったでしょ!
この前だって横着してそのまま行ったら酔っ払い親父に抱きつかれてたでしょうが!」
シュリが血相を変えて駆け込んだ。ヴラムは顔を顰めた。よく見るとサブイボが出ている。
「それは忘れろ!思い出しただけで鳥肌が立つ!」
ヴラムはそう言うと自身の前髪を弄り切ろうかな…と呟いていた。
「シュリ君病院で大声上げるのはダメにゃんよ?あ!エーデルちゃん!目を覚ましたにゃんね!」
「ハチ!うん!シュリもハチも元気そうで良かったよ!」
「エーデル!えとすまん…ついヴラム様の方にばかり…」
「あ…いやぁそれはいつもの事だから別に…」
エーデルは漸く見れた仲間に嬉しそうだ。シュリとハチも目覚めたエーデルに安心している。
と穏やかに過ごしているのも束の間エーデルの顔に柔らかい何かが押し付けられた。そしてお腹らへんも誰かに抱きつかれている。
「エーデルちゃん!良かった…心配してたんだからね!」
「エーデルさん…良かったぁ…」
マギリカとベルだ。マギリカはエーデルに微笑みながらこれでもかと抱きしめており、ベルは安心して涙を流している。
「二人とも…うん!心配かけてごめんね?」
エーデルは二人の温もりに嬉しい気持ちでいっぱいになる。
するとバリンとでかい音がした。見ると氷を突き破ったヒューベルトがキリリと凛々しい顔をしている。
「ほお?かなり加減したが破るとはやるではないか…」
ヴラムは感心している。
「へ!俺は情熱の炎の勇者ヒューベルト様だぜ!ふふふ…美しい女性が集まったな…エーデルさんにキララさんにベルちゃん。そして…」
ヒューベルトは少し間を開けてウインクしながら
「愛しのマギリカさん!」
とやたらいい声で決めた。
女性陣は少し鳥肌が立っているし男性陣はポカーンとしている。マギリカはというと
「あらぁ?ヒューベルトさん。お元気そうで安心したわ」
とニコニコと当たり障りないセリフを吐いた。
「や…優しい!マギリカさん好きです!俺と付き合って下さい!」
「ごめんなさい。無理です。」
「うわぁぁん!」
マギリカの即答にヒューベルトは落ち込んだ。と賑やかに過ごす部屋にコンコンとノック音が鳴った。
「あ!皆さんお揃いですね」
アルスが部屋に入ってきた。後ろからはスノーとアレックスが入ってきた。
アレックスは自隊の二人が大怪我を負った事からアルス達に同行してきたのである。
「初めまして。私はアレックス・ゴードン。ヒューベルト君とゴロー君が所属するゴードン隊の隊長を勤めているよ」
アレックスは初めて会ったヴラム達にニコニコと挨拶した。それに対して全員も自己紹介をした。
そしてアレックスが馴染んだ頃。ゴホンとアルスが咳払いをした。
「皆さん療養中の中お集まりいただきありがとう御座います。そしてエーデルやヴラム君達には巻き込んでしまった上に大怪我を負わせる事になった事…深くお詫び申し上げます」
アルスが謝罪し頭を下げるとスノーやアレックスも続いて頭を下げた。
「ねぇお兄ちゃん。何で全員集めたの?何か分かったの?」
「うん…でもその前にヴラム君?さっき何か言いかけてたよね?それを先に…」
アルスに促されたヴラムはうなづいて全員に目配せしながら話し始めた。
「まず最初に貴様ら騎士団が追いかけてる男の名が判明したのだ。名前はグリム。貴様らと同じ勇者だそうだ。そうだな?マギリカ」
その言葉に騎士団のメンバーはゴクリと唾を飲み込んだ。
「ええ。私の知ってるグリムは確かにそうよ」
「あ…あの!その話詳しく聞かせてはくれませんか!グリムという奴がどんな奴なのか!」
アルスが興奮した様子でマギリカに問い詰める。マギリカはコクリとうなづいた。
「あれは…500年前に遡るわ」
マギリカは語り出した。グリムとの出会いを。グリムがどんな人間なのかを。
これまで出てきた魔法
アンク編
・岩石流星群
地面に落ちてる又は埋まってる岩や石を空中に浮かせて相手に向かって流星群の如く落下させる。
・鏡岩
地中又は落ちてる石や岩に魔力を付与する事で表面がツルツルの鏡状になり魔法を跳ね返す事ができる。しかし跳ね返せる物は石や岩の大きさに依存する。
・惑星集滅
地中又は落ちてる岩や石を操作し対象の元へ集め、対象を圧死させる魔法。
・石牢
対象の周辺の地中に埋まる石や岩を地上に引き寄せて対象を閉じ込める。
・壊滅岩盤
自身のいる地面周辺に地割れを発生させ、その間から地中にある岩や石を露出させる。そして魔力を更に加えて削り取り露出した岩や石を棘の様に尖らせる。
アインの奥義魔法。