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三章第十八話 騎士団員はクセが強い

6/24は此処まで6/25は19話と20話投稿予定

 その頃ヴラムとエーデル。エーデルに引き止められたヴラムはエーデルのいるベッドに腰掛けている。

 「…」

 「…」

 「(気まずい!)」

 エーデルは布団をかぶって悶えていた。自身のした事を思い出して羞恥心で死にそうになっている。


 エーデル自身気づく気等なかったのだ。けど等々自覚してしまった。

 ヴラムの嫌味ったらしくない本当の笑顔が好きだし、不器用な優しさも好き。そしてピンチになると必ず助けてくれる所もカッコよくて好き。沢山の好きが溢れてくる。


 エーデルはお姫様になりたい訳ではない。自身は勇者。勇者系の小説も読んだ事はあるが、どれもお姫様を助ける側なのだ。

 けれど


 「(世の女の子がお姫様に憧れるの分かるなぁ…)」

 エーデルはチラリとヴラムを見る。ヴラムはエーデルが引き留めたにも関わらずに布団に潜って一言も話さない事に特に責めもせず、喋らない。静かに佇んでいる。


 カーテンを開いて窓の外の景色を眺めている。その切なげな横顔や中々見ない下ろされた黒髪が美しくエーデルはついポーッと見惚れていた。

 「何だ?俺の顔に何かついているのか?」

 しかしエーデルの視線に気づいたヴラムが振り返る。エーデルはボンっと更に顔を赤くしてしどろもどろになり、

 「な…何でもないよ!」

 

 エーデルの様子に首を傾げるヴラム。そして何やら言いづらそうに話し始めた。

 「エーデル…お前はグリムに狙われている」

 その言葉にエーデルの熱くなった顔がスーッと血の気が引く。そして青ざめて背筋が冷たくなった。


 さっきまでの楽しくて…幸せで胸がドキドキするような高揚感と結ばれない事への切なさが全て恐怖に染まった。

 「え?な…何で?」

 「知らん。何故あいつがお前をねらっているのかは…お前はあいつに何か言われたか?」

 エーデルはヴラムの問いにブンブンと首を横に振る。ヴラムはそうかと静かに呟いた。


 「ともあれ…それだけは伝えておこうと思った。いいか?絶対一人になるな。それだけは言っておく。…まぁ…俺が絶対お前を守るが…」

 ヴラムの答えにエーデルは顔を上げた。その言葉が何よりも嬉しかった。

 「ヴラムも守ってくれるの?」

 「ああ…それにもう二度と俺の周りで誰か死ぬのはもうごめんだ」


 ヴラムはギリっと唇を噛んで拳を握る。その姿にエーデルはスッと少し心が冷えた。

 「(そっか…私の事ロゼリアさんと重ねてるんだ…)」

 分かっていた事だ。アンクも言っていた。ヴラムとロゼリアが両思いだったと。

 

 悔しげな顔をするヴラムをエーデルは切ない顔で見つめている。すると勢いよく病室のドアが開かれた。

 「エェェデルゥゥゥゥ!」

 「ちょっ!病院ではお静かにして下さい!」

 「あ…すみません」


 「お兄ちゃん!?」

 ドアを開けたのはエーデルの兄であるアルスだ。アルスは大泣きしながらエーデルの元へ行き、思いっきりエーデルを抱きしめた。

 「エーデル!大怪我したって聞いてお兄ちゃん心配で胸が張り裂けると思ったぁぁ!心配で来ちゃったよぉぉ!

 取り敢えず怪我させたアンクとかって奴はぶっ殺すけど…」


 アンクは一頻り泣くとアンクの名前を出して物騒な事を言い出す。目のハイライトは消えていた。エーデルは慌てて兄を引き離した。

 「んもぉ!恥ずかしいからやめてよね!確かに危なかったけど大丈夫だよ?ヴラムが助けてくれたから」

 エーデルが兄に微笑みながら話す。


 アルスはチラリとヴラムの方を向く。そしてガバリとお辞儀した。

 「妹を…助けてくれてありがとう…」

 「フン…礼等いらん!…それと貴様に伝えねばならない事があるのだ」

 ヴラムはこれまでの経緯やエーデルに危険が迫ってる事を言おうとするがアルスに待ったをかけられた。


 「一度全員集めよう。…場所はヒューベルトさんの病室だ」

 その言葉にエーデルは首を傾げた。

 「え?何でヒューベルトさん?」

 その質問にヴラムはハァとため息を吐き頭を抱えた。


 「いやそれが実はあいつが一番重症だったんだ。岩やら土やら取り除くのも時間はかかるわで、まだ目を覚まさんのだ」

 「あ!それがね?ヒューベルトさんもさっき起きたんだよ!」

 「そうなのか?フンしぶとい奴だな」


 ヴラムは悪態を吐きながらも口元は少しニヤけている。嬉しそうだ。

 「僕は全員呼んでくるから、エーデルとヴラム君はゆっくり来てくれ。」

 そういうとアルスは退室していった。


 「ふぅ…お兄ちゃんってば過保護だなぁ…此処までくるなんてさ」

 「…そうだな…」

 ヴラムはアルスの後ろ姿やアルスのエーデルへの溺愛加減を見て、ロゼリアとアンクを思い出した。


 アンクもまたロゼリアを溺愛していた。ロゼリアは監禁されていた。自身の魔法に耐性のないロゼリアを二人の親が疎ましく思ったのだろう。元々住んでいたスベリア大陸から遠く離れたシロツメ大陸に彼女を追いやった。


 元々その家もロゼリアの家族の所有する別荘だったらしい。そんなロゼリアを唯一心配していて偶に妹の顔を見にくるのがアンクだ。

 二人の家はスベリアでも高名な資産家の家系だ。アンクは家を継ぐために殆どは実家で過ごしていた。その為に本当に休みが合えばの状態だった。


 そんなアンクのいない日にエレンはロゼリアと出会ったのだ。


 もしもだ。目の前にいる太陽のような光の勇者がグリムに攫われたり殺されたら、彼女を溺愛する風の勇者はどうなるのか。

 ヴラムは自身のせいで一人の男の人生や心を滅茶苦茶にしてしまったのだ。そしてその悲劇を二度と起こしたくない。


 目の前で大切な者が死ぬ恐怖も…一人の人生や幸せを踏み躙る事も…もう二度と繰り返したくない。

 ヴラムはそっと勇者兄妹に誓った。


 自身の命を賭けてでもエーデルを守り抜くと




 その頃、アルスと共にやってきたスノー。スノーは現在ある部屋の中をそっと隙間から覗いている。

 「あぁ…シュリさん…何て痛々しい…」

 シュリとハチのいる病室である。シュリは回復魔法を病院の治癒師にかけてもらったので傷は塞がり治っている。


 しかしスノーの目には病衣を着ていて少し弱々しい笑顔を浮かべている姿が切なく見えた。同時に胸がキューンとしていた。

 「で…出来ればそばに行ってよしよししたい…可愛がりたい…はぁはぁ…し…しかしあの病衣…着物でも破廉恥なのにあんなゆったりした服着て…このままではシュリさんが変な人に纏わりつかれてしまう」


 とその変な人に該当してしまっているスノー。着物ではない姿に興奮してか息を荒げて鼻血を出している。

 「…声かけた方がいいのかにゃ…」

 「?」

 気配を消した現役騎士のスノー。その気配の消し方は流石は騎士である。


 だが歴戦の戦士であるハチはその気配に気づいたし何なら隙間から覗く目が見えている為にゾッとしながらその光景を見ていた。

 シュリの方は様子のおかしいハチに動揺しつつハチの見つめる先を見る。


 「は!気づかれた!」

 見られたスノーは自然を装う為にバッとドアを開けて入ってきた。するとシュリは少し戸惑い始めた。

 「す…スノーさん?」

 スノーは先程のニヤけ顔から普段のツンと澄ました無表情に変わった。鼻血は急いで自身のティッシュで拭きまくった為少し鼻の下が赤くなっている。


 「すみません。実は我々騎士団の方にも貴方方が重症を負ったとお聞きしまして…隊長が皆さん…特に妹さんの事が心配でならんと馳せ参じた所存です。

 お二方のご様態の方はいかがですか?」

 キリッとした顔のスノーにハチはじとりと少々呆れた目を向けるが質問に答えた。


 「吾輩達は治癒師のお陰でもうすっかり元気にゃん。」

 「成程…それならば安心しました」

 そう言ってスノーはシュリの方を見るとシュリはビクッと体を揺らした。


 「シュリさんは大丈夫ですか?」

 「は…はひ…だ…大丈夫…です!」

 シュリは汗をダラダラとかき顔が真っ赤だ。そして目はぐるぐる回っている。


 その顔にスノーは更にキューンと胸を高鳴らせた。

 「そうですか…安心しました。実はこの後我々や他に入院してしまった皆さんで集まり会議を開こうと思っているので、ゆっくりで大丈夫ですので落ち着いたらヒューベルトさんのいる205号室まできて下さい。(はぁん♡カーワーイーイー♡)」

 スノーはメガネを押さえながらクールに振る舞う。しかし内心は荒れまくっていた。


 ハチはそれを見破っているのか呆れ顔である。明らかにシュリをガン見しているのである。この女性は…


 スノーが去ろうとするとシュリはアワアワしながらも思ったより大きな声で

 「あ…あの!心配してくれてありがとございました!」

 シュリは良くも悪くも素直である。ヴラムからの教えの一つ




 『ふん…してもらった事に感謝も出来んような奴がこの世界を生きていけるとでも?そんな事も出来んようでは困るだろうな…』

 『はい!承知しました!ヴラム様いつも美味しいご飯を食べさせてくれてありがとうございます!』

 『な…い…いや!子供に食わせんとこっちが逆に訴えられるのだ!だ…だからであって…別に貴様の為ではないんだからな!』




 とこれがシュリ幼少期の記憶である。ちなみにヴラムの自室にはシュリの成長記録やアルバムが大事に保管されているがシュリは知らない。


 そんな真っ赤な顔で素直にお礼を言うシュリに悶えたスノーは頭を壁に何回も打ちつけ始めた。

 「うわわ!大丈夫ですか!?」

 「…シュリ君…大丈夫だから…目を閉じるにゃん…見ちゃダメにゃん」

 

 その後額から血を流したスノーがまたクールを装い始めた。

 「では私はこれで。また後ほどお会いしましょう」

 「あの…大丈夫ですか?」

 「はう!心配してくれてる♡しゅき♡…ではなくて!ではまた!」


 ボロを出しまくっているスノーは勢いよく出ていった。

 シュリはポカーンとしている。

 「一体何があったんだ?」

 「気にしないでいいにゃん。騎士団は変な人が多い。それだけだにゃん。けどさっきのことはヴラムに内緒にゃんよ?

 スノーさんと喧嘩するにゃん。絶対」

 「?分かった…」


 ハチとシュリはいそいそと立ち上がり移動し始めた。

これまで出てきた魔法

 ゴロー編

 ・雷鳴断絶…刃状の電気を召喚する。切断力は高く、岩

       も切り裂ける。


 ・地這雷蛇…地面を走る電撃を召喚する。その姿は地を       這う蛇の様。

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