三章第九話 謎の男"グリム"
17時過ぎごろに第十話投稿予定
「グリム?まさかセレーネの言ってた男の名前か!」
「そういえばあの怖いお姉さんが言ってましたよね?"グリム様"って…」
ヴラムとベルも聞き覚えのある名がまさかこんな形で聞く事になるとは思ってなかったらしく口をあんぐりと開けている。
「待て待て!お前らこいつの名前しってんの!?だとしたらすげぇ収穫だぞ!」
「僕たち実は貴方方の手助けとこの手配書をキーちゃんにお願いしてココヤシ大陸中に貼って欲しいってお願いにきたんですよ?」
どうやら騎士団内でもグリムの事は話題に上がっているらしい。
「ねぇ…勇者騎士団でもこの男…グリムの事知ってるってどういう事なの!?こっちの情報も教えるからそちらの情報も提供して!」
マギリカは焦りながらヒューベルトに詰め寄った。ヒューベルトは間近に迫ったマギリカの美しい顔と香水のいい香りに顔を赤らめ、一瞬デレっとだらしない顔になるがすぐに直して、いつもと違うダンディーな顔になりながら話し始めた。
「ねぇダーリンの先輩ってカメレオンか何か?」
「うん。みたいなものだよ!」
「ご…ゴローさん?流石に言い過ぎでは?」
ゴローのきっぱりした言い方をシュリが嗜めている。この後輩本当に先輩を敬う気があるか疑問である。
暫くお互いの情報を共有する騎士団とヴラム達。とはいえ騎士団側の二人は実際にその男を見た訳ではない為、あくまでもホワイト隊から仕入れだ情報を話すという感じである。
一行の方もハチとエーデルしかその姿を見た者はいないので殆どこの二人が話した。
そして最後にマギリカ。
「グリムっていうのは聖竜騎士団で一度投獄されたセレーネって魔女が発してた名前。
そしてセレーネが道を踏み外した原因ともなった男よ。そして…」
マギリカは顔を上げた。いつもの優しい微笑みではなく真剣な顔で
「彼は…騎士さん達やエーデルちゃんと同じ勇者だった。」
その言葉に勇者に該当する三人は顔を強張らせた。
「ま…待ってくださいよ!だとしたらそいつも人間族でしょ!?セレーネが問題起こしたのは500年前!例え生き返らせたとしても生きてる訳ないじゃないですか!」
エーデルは冷や汗をダラダラ流して声を荒げる。しかし
「いや…吾輩の例があるから一概には言えないのにゃん。」
そう声を出したのはハチである。ハチ自身短命種でありながら200年以上生きてる。
マギリカやヴラム等の長命種ならまだしもあり得ない事象。
「待てい!そこの猫男は何年生きてるんだよ!てかマギリカさんの500年前の話ももっと詳しく聞きたいし!やべぇ…何この事件くっそ気になるぅ!」
「先輩落ち着いて下さいよ!」
ヒューベルトは次々と起こるとんでもないカミングアウトに身を悶えさせた。
ゴローは冷静に宥めている。
「んー?あのさこれ私が聞いても大丈夫な奴?一応一般人だし…」
「ふん。此処まで聞いてしまったんだ。今更途中退室したところで変わらんだろ?」
キララはキララで流石に場違い感を感じたらしい。しかしヴラムから宥められていた。
「それにココヤシは僕らみたいな警備隊がないし…でも全大陸に伝えた方がいいっていうのがホワイト隊長の意向だから、この大陸の重要責任者のキーちゃんもしっておいて欲しいかな。大丈夫!僕が守るよ!」
「ダーリン♡」
イチャイチャしだす二人ヒューベルトは歯軋りしている。
「…続けていいにゃんね?吾輩は200歳超えて生きてるにゃん。本当ならとっくに死んでるにゃんね」
「2…200年!?はぁ!?」
ヒューベルトはその予想外の答えに目を剥いた。
「は…ハチさん?どうやってその年齢までいきたんですか?」
ベルが少しおどおどしながら聞いてきた。
「…あまり言いたくなかったにゃん。けど今回の件と関係してる可能性があるのにゃん。吾輩の体はある薬の後遺症だにゃん。
それには過去を遡る必要があるし…必要文献はキバナ大陸の方にあるのにゃん。」
「必要文献?何かやらかしたのかお前?」
流石に文献に載るほどとなるとかなりの事象を引き起こしたとわかる。しかしハチはブンブンと首を振った。
「吾輩は何もしてにゃいのにゃ。けど…」
ハチは言いづらい様子である。するとヴラムがぱんぱんと手を叩いた。
「おい!んな化け狸の話よりもまずはこの大陸の花の調査であろう!?さっさと動かんと日が沈む!」
その言葉に全員がヴラムに目を向けた。
「はあ!?いいとこなのに…」
「良いとこもクソもなかろうが。ほらとっとと行くぞ。そこの社長女はホテルで待機。いいな!マギリカ。探知は頼むぞ。」
そう言ってヴラムはさっさと部屋から出ていった。するとハチが急いでヴラムを追いかけて話しかけた。
「…ありがとうにゃん…」
「何がだ。それよりも次の行き先はキバナ大陸。いいな?そこで詳しい話をしろ。」
「…うん分かったにゃん…」
そう言って二人はどんどん進む。その様子をポカーンと見る他のメンバー。
すると我に帰ったシュリが焦り始めた。
「お…お待ちくださぁぁぁぁい!ヴラムさまぁぁぁあ!」
と大声を出して駆け足で着いていった。その途中で部屋にいた客が出てきてうるせーと文句を言っていたりする。
「えー…スゲェ気になるんですけど…」
ヒューベルトはまだ納得していないようだ。そんなヒューベルトを宥めるゴロー。
「先輩。人には他人に知られたくない事もあるんですよ?寧ろ途中までとはいえ教えてくれた事に感謝しましょうよ。それに手配書の男の名前も分かったし大収穫ですよ。」
「ダーリンの言う通り!…ダーリン?無事に帰ってきてね♡」
「うん!分かってるよキーちゃん。愛してるよ♡」
「ダーリン♡」
チュ♡
しかしゴローとキララのイチャイチャとキスシーンを見るとヒューベルトはテンションが下がりハァため息を吐く。歩く気力すらなさそうである。そんな彼に他の女性陣は
「ねぇねぇ!マギリカさんの好きなタイプはどんな人?」
「そうねぇ…頼り甲斐があってぇ…あまり人の事情に深く入り過ぎないで察してあげられる男の人がタイプよ♡」
「わかります!私もそんな大人な人と結婚したいです♡エーデルさんは?」
「私もマギリカさんやベルと同じかなぁ。それでいて人の幸せを素直に認められる人が好きかな♡」
その言葉を耳をピクピクしながら聞いていたヒューベルトは急にシャキッと姿勢を正した。その顔つきも何となく凛々しい。
「参りましょうお嬢さん方!このヒューベルトが貴方方をお守り致します!っしゃあ!行くぞゴロー!」
「え!ちょ先輩!」
ヒューベルトがそのまま先導するように歩き出した。ゴローも続く。
キララは他の女性陣に
「やるねぇ…」
と呟き感心した顔で見つめている。女性陣は勝ち誇った顔で頼もしく歩き出した。
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