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三章第三話 鮮血の髪

17時以降に第四話投稿予定です。

 「ん?あれここは…」

 気絶したエーデルは目を覚ました。視界に広がるのは船の中ではなく何処か別の部屋。

 白を基調とした清潔且つ高級感のある部屋だ。正面には青空を映す大きな窓があり、青地に金の縁取りがされているカーテンが掛かっている。

 

 エーデルが今いる所はベッドの上だ。フカフカしており、布団は青くスベスベしている。毛布もトロミがあり触り心地がいい。

 エーデルは初めて見た場所に呆然としながらもキョロキョロ辺りを見回した。

 「え?ここ何処…」


 するとガチャリと白いドアが開いた音が聞こえた。ハチが部屋に入ってきた。エーデルは見知った顔に安心し、肩の力を抜いた。

 「エーデルちゃん!良かったにゃん!目が覚めたにゃんね!」

 「ハチ。えっと私何かあったの?それにここ何処?」

 「此処はココヤシ大陸のホテルの中にゃん。…覚えてないにゃん?君気絶したんだにゃんよ?」


 ハチの言葉にエーデルは思い出した。あの瞬間。自分が気絶する前に見た人物。エーデルはその瞬間ダラダラと冷や汗を流した。

 「いないよね?変な男の人…」

 「いないにゃん。吾輩もチラッと見たけどすぐに何処かへ消えてしまったのにゃん。少し待つにゃん。」


 ハチは怯えるエーデルを安心するように背中を摩る。そして部屋から出ていき、他のメンバーに声を掛けに行った。エーデルとしてはハチに行って欲しくなかったが…。少しの時間が長く感じ、エーデルは視界を遮るために枕を顔に押し付けた。

 しかしすぐにハチと他のメンバーが大急ぎで部屋に入ってきた。


 「エーデルちゃぁぁん!大丈夫だった!?誰よ!可愛いエーデルちゃんを怖がらせたクソ野郎は!海の藻屑にしてやる!」

 マギリカはエーデルの元に駆け寄り抱きしめるとエーデルを怖がらせた赤髪の男に殺意をむき出しにしている。


 「マギリカ。小娘死ぬぞ?」

 「え?あら!ごめんねエーデルちゃん。」

 しかしマギリカの豊満な胸がエーデルの顔をむぎゅと押し潰している。エーデルは息ができずもがいていた。ヴラムに指摘されたマギリカはすぐに手を離した。

 「ぷはぁ…大丈夫ですよ?少し安心しました。」

 エーデルはマギリカを安心させる様に微笑んだ。


 「でもよかったです…ハチさんがエーデルさんを抱っこして連れてきてくれたんですよ?」

 「嗚呼…あの時凄く慌ててな。何があったんだ一体。」

 ベルとシュリも心配で駆け寄ってきた。そして当時の様子を語る。


 あの後バトルモードのハチが気絶したエーデルを横抱きにして連れてきてすぐに他のメンバーを叩き起こした。

 そして一行にハチが知り得る情報を伝えたのだ。エーデルはココヤシ大陸に着くまで目を覚まさなかった為、一行はホテルの部屋を借りてエーデルを療養させる事にした。


 花探しに関してはエーデルとハチが見たと言う赤髪の男が気になり一行は中断してエーデルが目覚めるのを待っていたのである。


 「そっか…ありがとうハチ。ごめんねみんな。…私のせいで…」

 「大丈夫にゃん。気にしないでにゃん。」

 エーデルは申し訳なさそうに礼を述べる。そんなエーデルにハチは安心させる様な口調で優しく答える。


 「別に具合悪い奴を連れての探索等こちらが大変だからな。足手纏いを減らしたいだけだ。」

 「うう…」

 ヴラムの普段通りのキツい言い方は体調が良くない体には結構刺さる。しかしシュリが


 「大丈夫だ!ヴラム様はこうおっしゃられている。"無理せず休め。心配しなくていい"とな!ヴラム様!なんてお優しいのでしょうか!」

 ヴラコンことシュリは感涙しながら語る。しかしそれ以上に語ろうとした為、真っ赤な顔になったヴラムから手刀を打たれて気絶した。


 「余計な事言わんでいい!馬鹿たれ!」

 「そっか…ヴラムも心配してくれたんだね。ありがとう。」

 「俺は心配等しとらんわ!他のやつらがやけにソワソワしてるからつい釣られただけだ!」

 エーデルからも笑顔で感謝されるがヴラムは真っ赤な顔に汗を大量に流して弁解している。


 「でもエーデルちゃん?何があったか話せる?無理しなくても良いけど…」

 マギリカはエーデルの寝ていたベッドに座ってエーデルに問いかける。エーデルは暫し考え込んだ後

 「実は私いつもより早起きして外に出てたんです。そしたら妙な男の人と会いました。」

 「妙な人?」


 「はい。ドス黒い赤毛の男の人でした。髪の毛は凄く長くてボサボサで…服装はボロボロで身体中に包帯を巻いてた気がします。」

 「気がする?随分要領得ないな。」

 「いやさ?髪の方に目が行ってたしできるだけ見ない様にしてたから…服装とかは詳しく覚えてないのよ。

 本当に血みたいな色で不気味な髪。後その人の事妙に怖いと思っちゃったんだ。

 対峙してると段々苦しくなるというか…気持ち悪くなると言うか…」

 ヴラムの指摘に答えるエーデル。髪の毛の色が印象的な上に怖くて目を合わせない様にしてたので詳しくは見ていないのだ。


 するとマギリカはうーんと唸り

 「もしかしてエーデルちゃん。魔力酔いしたのかしら?」

 「え?でも私魔女族じゃないですよ?」

 「魔女族はあくまで他の人より魔力に敏感ってだけよ。あまりにも規格外に強すぎたり濃密すぎる魔力に当てられると他の種族もなる可能性はあるわ。まぁ滅多にないけど…

 多分それ私なら死んでたかも。」

 通常魔女族以外の種族が魔力酔いを起こすなど前例にない。確かに中には少し気持ち悪くなったり頭が痛くなったりはあるかもしれないが気絶するとまでなると異常である。


 魔女族ならば確実に死ぬだろう。

 「けどその人って何者なんでしょうか?」

 ベルは首を傾げながら純粋な疑問を口に出す。何故エーデルに接触したかも分からないし何処へ消えたのかも分からない。

 エーデルを救出後はハチが引き続きエーデルを運び全員で船内で男を探したり、他の乗客に見ていないか聞くが全員知らないと首を振り、船内でも見つからなかった。


 まるで煙の様である。

 「もしかしてお化けですか?」

 「そうだな。海に沈んだ海賊の幽霊かもしれんな?もしかしたらベルの枕元にも現れるかもしれんぞ?」

 「わー!海賊さんですか!?ぜひお会いしたいです。」

 「あ。意外と平気なのだな。」

 ヴラムはてっきりベルが怯えるかなと思っていた。しかしベルは逆にワクワクしている。

 正直幽霊の話題を出したヴラムはやべっという顔に一瞬なったがホッとしている。


 そんなやり取りに和んだのかエーデルは穏やかな顔になる。そしてマギリカは逆に顎に手を添えて考え込んでいた。

 「どうしたにゃん?考え込んで。」

 「いや…何でもないわ。」

 ハチの質問にマギリカは静かに首を横に振った。




 「まさかね…」

用語

 ◯ココヤシ大陸

 世界の南西に位置する大陸であり、人気のあるリゾート地。ドラセナと同じく気温は高いが湿気があり、過ごしやすい。美しい海と西に沈む太陽の組み合わせが美しいと話題。リゾートはミルキーウェイ財閥が運営している。

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