表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/180

二章第三十話 夜空の下で思う事

二章これにて完結です。

三章は随時執筆しております。三章全話執筆終わったら投稿します。

 一方此処はサクラ大陸のとある大橋。大橋は紅に染まっている。そして大きな川の上にかけられていた。

 川にはサクラ大陸名産の大陸の名の由来にもなった桜が川沿いに咲きその花びらが浮いている。


 天は夜の黒に染まりそこには真ん丸の月が浮かんでいた。水面にもそれが映し出されており幻想的な雰囲気を醸し出している。

 そんな橋の上で川の流れを見つめる一人の女がいた。

 シグレである。


 シグレは自身がいつもつけてる金の簪を手に持っている。

 「外道丸…」

 シグレは静かに呟いた。シグレが今いる橋は"結び橋"と呼ばれている。元々は名も無い橋だったこの橋はその昔此処で告白し幸せな人生を送った男女がいたり、デートの待ち合わせ等をする者が多かった事からいつの間にか人々にそう呼ばれるようになった。


 そしてこの橋で告白して付き合う事になった男女は殆ど恋愛がうまく行きパートナーと生涯を共にしている。

 また告白成功率もかなり高いと言われ恋愛のパワースポットである。


 シグレとてその昔はそんなジンクスを信じる一人の少女だった。だが今のシグレにとってそれはただの戯言でしかない。

 「世の中は何故こうも嘘で溢れておるのじゃ。」

 シグレはキセルを吹かせながら川を眺めていた。するとそこへ


 「何してますの?」

 セレーネが前触れなく現れた。彼女は箒に乗ってシグレの目の前を浮かんでいる。服装も牢に入れられた時の物ではなく元のドレス風の服装をしていて頭にとんがり帽子を装着している。

 「貴様…」

 「あらあら私に牙を剥いてよろしいの?今の貴女の拳なら私を軽く殴り殺せる。けどそれをして困るのは貴女ではなくって?」

 「…」

 セレーネの煽りにシグレは黙ってにらみつける。


 「貴様には協力する。勿論主にも。それが貴様との取引だからな。」

 「忘れてなくて良かったですわ♡貴女は外道丸様一筋だから嫌いにはなりませんわ♡」

 「…要件は何だ?無いならば何処かへ行ってくれないか。目障りで困るのでな?」


 「要件なんてありせんわよ。唯貴女とガールズトークしたいだけですわ」

 「冗談も休み休みにするのだな。妾は鬼人。貴様の嫌いな魔力なしの劣等種族。構う必要がないであろう?協力してるのだから放っておいてくれ。」

 「あら寂しい事言わないで下さいまし。それに貴女は普通の鬼人と違うではありませんの♡」

 「…ち…口の減らぬおなごじゃな。」


 軽口を叩きまくるセレーネにイライラが募るシグレ。 

 「もう。イライラしていては眉間に皺が残ってしまいますわよ?私は愛しのグリム様の元へ参りますわ♡貴女も早く帰ってこないと心配されますわよ?」

 自分の言いたい事だけを言ってセレーネはそのまま飛び立って行った。


 それを見届けシグレははぁと大きくため息を吐き夜空に浮かぶ月を眺める。

 「のう…外道丸よ。妾のしている事は本当に正しい事なのか?妾はもう分からん。だが…唯貴様にまた会いたいだけなのに」

 シグレはポタポタと涙を流す。目尻に塗っていた紅が落ちていく事も構わず泣いていた。


 



 その頃。夜になりオレンジの海が夜の闇に染まる時。一行は其々毛布を掛けて眠っていた。

 そんな中ヴラムが一度目が冴えて起きるとそこにはベルがいない。

 ヴラムはハァとため息をつき頭を抱えてベルを探しに行った。

 

 ヴラムはベルのいそうな場所として真っ直ぐデッキの方に向かうと案の定いた。デッキの柵を掴み海を眺めていた小さな背中にヴラムは声をかけた。

 「そんなとこで何をしておるのだ。」

 「あ!ヴラムさ…クシュン!」

 夜風に当たっていたベルはくしゃみをしている。ヴラムは黙って自身のマントをベルの背中にかけた。少し裾を引き摺るがヴラムは特段気にしていないようである。


 「あ…ありがとうございます。」

 「旅に出たばかりで風邪を引かれては困るからな。」

 ヴラムは少し冷たい言い方ではあるものの本当は心配してくれてるのはベルも分かっているようである。


 「それで?こんな夜更けに一人で何をしとるんだ。」

 「あ。えと…少し眠れないんです。」

 「そうか。」

 そういうとヴラムはベルの隣に立ち夜の海を眺める。ベルは何となくヴラムの方を見つめいていた。

 「ねぇヴラムさん?」

 「ん?」

 「ヴラムさんって旅とかしたことありますか?私旅したいって言ったけど少し怖くて。」

 ベルは胸の内を吐露した。ヴラムはふむと顎に手を置き考え始めた。


 「まぁ…旅自体はした事あるぞ。ずっと昔だがな。」

 「ヴラムさんも初めての旅って不安でした?」

 「いや。そもそも旅自体に対して何とも思っておらんかった。あの頃の俺は自分の人生に諦めておったからな。」

 ヴラムはそう言って再度海の方を眺めて静かに語る。


 「諦めてたって…何か嫌な事でもあったんですか?」

 「そりゃあ生きてれば嫌な事ぐらいある。それが蓄積した上での諦めだ。

 そんな時俺はある女に出会った。」

 「女の人?恋人ですか!」

 ベルは目をキラキラさせている。しかしヴラムは首を横に振りベルの頭を撫でた。


 「いや違う…ただあの女は何と言うか変わりもんだったのだ。そいつは本の虫で本で知識を吸収してはその知恵をベラベラ喋る奴だった。

 まるで本当に自分が見てきたみたいな言い方する奴だった。

 だが奴には夢があった。本に書いてある色んな場所を巡ってみたいっていうな。

 そしたら奴め偶々訪れた俺を巻き込みおって旅に連れていったのだ。」


 ベルは頭を撫でてくるヴラムの横顔を見る。その目には熱が宿っていた。だから確信した。

 「ヴラムさんって。その女の人の事大好きだったんですね。」

 「ほあ!?な…何を言っておる!俺はそんなんでは!」

 「顔真っ赤ですよ?わ!」モチモチ

 ヴラムはベルの頬を軽く抓る。そしてコネまくっていた。


 「だーかーらー違うといっておろうが!この…何だこれ餅みたいだな。」

 「ひゃー!」

 ベルは擽ったそうである。そして暫しモチモチした後に手を離すとヴラムは咳払いをした。


 「ま…まぁいい。だがこれだけは覚えておけ。本当に伝えたいことがあるならちゃんと相手に伝えること。そうしないと後悔するのは自分だからな。」

 「…そうですね。…私はお兄ちゃんにもっと大好きとか言ってれば良かったと思ってますよ。」


 エーデルはペンダントの写真を見て呟く。もう2度と伝えられない思い。それがベルにも分かる。それが辛いと言うことを。

 「ならばお前は兄の分まで世界を見ろ。幸いにして大慰霊祭の日にちは公開されていない。

 もしこの旅が終わった後の遅めの開催ならば兄の棺に貴様の体験した全てを語ってやれ。」

 「ヴラムさん。」

 ベルは不器用なでも優しい魔族の青年を見つめる。


 「ほら。んな事よりさっさと戻れ。夜更かしするな。」

 「はい!」

 「いやこの手は何だ。」

 ベルはガッシリとヴラムの手を握った。

 「行きましょう!」

 「いやだから何なのだ。」


 尖った耳が特徴的な二人はそのまま船の中に入って行った。

 夜空には流れ星が流れて彼らの旅を祝福していた。

二章完結!此処までお読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ