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二章第二十六話 子の成長

予定が立て込んでしまい予定投稿時間より1時間遅れてしまいました。申し訳ないです。

 6/7は二十七話と二十八話投稿予定です。

 そんな殺伐とした夜を過ごすヴラム達と対照的にベルは両親と同じベッドで寝ていた。

 「ねえ。ママ。」

 「ん?どうしたの?」

 ベルは中々眠れない様子である。


 「私明日から旅に出ちゃうけど…寂しくない?」

 「そりゃあ寂しいわ。けどね?ベルが選んだ事だもの。ママはベルの味方。ベルがやると決めたなら全力で応援するわ。

 けどちゃんと最後までやり遂げるのよ?」

 「うん分かってる」

 ベルはぎゅっとマープルに抱きついた。そして考えていた。何故セレーネがエルフを嫌っているのかを


 ベルはセレーネと会うのは初めて。恨まれる理由が全くない。というよりあの様子ならベルでなくてもエルフなら躊躇なく殺しそうだ。

 「あのセレーネって怖い人。私がエルフって事気にしてた。ねぇ?エルフって悪い種族なの?」

 「そんな事ないわよ。あの人が何故エルフを嫌うかはママも分からない。でもエルフは立派な種族の一つ。竜人族と同じよ?」

 「エルフと竜人族は同じ?」

 「そうよ?それに一つだけ間違いないのはベルは私達の大切な娘って事。」

 マープルはぎゅっとベルを優しくだきしめる。


 「ほら明日は旅立ちよ?遅刻しない様にもう寝なさい?」

 「うんおやすみ。」

 ベルは目を閉じた。そして少しすると寝息を立てて眠ってしまった。


 両親は娘が寝たのを確認して起き上がる。

 「寝たか。しかし大きくなったなぁ…」

 ドラゴニアはベルのサラサラと肌触りのいい髪の毛を撫でる。

 「本当ですね。まさか魔法まで使える様になるなんて…」

 マープルも考え深そうにしている。


 思えば二人はベルを拾った時どうにかしてエルフ達の里に連れて行こうと思っていた。だが、レイギスが捨てられたベルを見て自身の妹にするのだと言って聞かなかった。

 二人も流石にこのままにするのはまずいとベルを引き取った。


 そして次第に愛情が芽生えたのだ。よく娘は自分だけ竜人ではない事に悩んでいた。しかしそんな時は家族みんなでベルは自分達の娘でレイギスの妹だと言い聞かせてきた。

  

 ベルには自分たちのような鱗はないし、尻尾もない。耳も尖っているし肌もツルツルである。見た目から違う。炎や雷だって吐けないし魔法も使える。その上に寿命が段違い。

 けれどそんなの関係ない。


 「この子が今回の旅でどんな成長をしてどんな体験をするのか…楽しみですね。」

 「ああ…そうだな。」

 二人はスヤスヤと眠る娘を静かに見守った。

 

 


 そしては次の日。

 「皆さん!おはようございます!」

 ベルと両親が一行の部屋に入ってきた。

 「あ!おはようベルちゃん!早かったね?」

 「ふん。遅刻するのではないかとヒヤヒヤしたがな。」

 優しげに話しけるエーデルと意地悪そうに話しかけるヴラム。対照的。しかし二人とも根は善人であり優しい性格と知っている為ベルはニコニコしている。


 「えへへ。楽しみで早起きしちゃいました。あ!あと私の事はベルでいいですよ?皆さん私よりお姉さんとお兄さんですから。」

 「そう?じゃあベル。これからよろしくね?」

 「ハイ!お願いします!」

 本人の許しを得たためにすぐに名前呼びし始めるエーデル。ベルはそれに元気よく返事をする。するとマギリカが申し訳なさそうに

 「ねぇベルちゃん?申し訳ないけどね。あの怖いお姉ちゃん。…セレーネ脱獄したの。」


 ベルはその言葉にビクッと震えた。

 「だ…脱獄?」

 「うん。その上で聞くわ。私達が今行ってる任務ではまたセレーネに会うかもしれない。それでも貴女は私たちと旅をするの?」

 マギリカは最終確認を行う。セレーネは何故か執拗にベルを殺そうとしていた。エルフを恨んでる理由はマギリカでさえ分からないのである。


 「確かに怖いです。けど旅には危険がつきものです。ご迷惑をお掛けしないように頑張ります!…それに何であの人が私を殺そうとしたのか…私はあの人の事知りません!なのに殺そうとしてくるのは理不尽ですしお兄ちゃん達を良いように使うその神経が許せませんから!」

 ベルは胸を張りキリッとした顔で答えた。しかしすぐに眉をへりょりと曲げた。

 「ただ…私魔法は出来るようになったばかりなんです。だから少し不安で…」

 「あら。大丈夫!此処に魔法のプロがいるわ!」

 マギリカが自信満々に告げた。


 「それに回復魔法や防御魔法ならエーデルちゃんも得意よ。それか同じ天才型の魔法使いならヴラムだっているし。」

 「うーん教えられるかなぁ…」

 「教えると言われてもどの様にして出来るようになったかなど覚えておらん。大事なのは感覚としか言い様がない。」

 幸い一行で魔法が使えるメンバーは既に三人。魔法のプロであるマギリカや回復と防御が得意なエーデル。同じ天才型のヴラムがいる。


 「吾輩達にはどうしようも出来ないにゃん。でも励ますくらいなら出来るにゃん。」

 「俺達も魔法が使えればいいが…だが疲れたら労るぐらいは出来る。だからそんなに気を張らなくてもいいんだぞ?」

 ハチとシュリも優しく支えてくれる。ベルはそんな一行に安心したらしくホッとしていた。

 

 「ありがとうございます。皆さんが優しい人達でよかったです。」

 「他の奴らはそうかもしれんが俺は優しくなどない。教えるとなったらスパルタになるぞ?」

 「あら?教えてはくれるのね?」

 ヴラムの素直ではない返答にツッコミを入れるマギリカ。するとマギリカの脇腹を肘で小突くヴラム。


 「コホン…ま…まあ良い。これから俺達は真っ直ぐパキラに戻ってフェリーに乗る予定だ。」

 「そうなのですね。あの…宜しければそこまで我々もついていってよろしいですか?」

 ドラゴニアがヴラムに問う。すると

 「ふん。勝手にしろ。着いてきたければ着いてこい。荷物は持ったか?」

 「はい!準備万端です!」

 「お!さすがだね!よーし出発!」


 新たな仲間を加えた一行は更なる地を求めてアギトの都を後にした。

用語

 ◯エルフ族

 長命種族の一つ。見た目は魔族と似ていて耳が尖っているが、目の色は様々な色がある。赤目ではなく翼が出せないのはエルフ。攻撃魔法も一応使えるが大概のエルフはサポートやヒーラーに適した魔法を得意とする。

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