二章第十八話 魔女VS魔女
6/2の投稿は終了です。6/3は十九話と二十話投稿予定。
「な!?」
セレーネは突然現れた電撃を見て驚いていた。一行も突然の出来事に言葉を失った。
一行とセレーネは電撃が送られた場所を見る。そこにいたのは
「お兄ちゃん…」
レイギスだ。レイギスはただ一人、ヴラムの氷を抜けていた。その爪は何ども氷を引っ掻いたのだろう爪が剥がれていた。
「う…嘘でしょ!私の動かしてる死者が何故私の命令なしで動くの!?キャ!」
「"魔女の窯"」
気を取られたセレーネはマギリカの魔法に捕まった。
その隙にベル達親子は急いでレイギスに向かう。
「お兄ちゃん!」
「レイギス?!」
レイギスはベル達を見て、静かに微笑んだ。
そしてベルはそんな兄に向かって突撃して抱きついた。そして涙をボロボロ流し始めた。
「お兄ちゃん!私…私!お兄ちゃんに会いたくてここまできたんだよ!これ!お兄ちゃんにプレゼントしたかったの!」
ベルが背負ってたリュックからリュウグウソウを取り出した。
「ベル…」
「うん!ベルだよ!」
「やく…そくまも…れなくて…ごめ…」
レイギスは涙を流していた。
そんなレイギスを両親はベル諸共抱きしめた。
すると突然巨大な破裂音が聞こえた。
「いい加減にしてくださいますかしら。私に逆らうなんて失敗作のお人形です事。」
セレーネだ。セレーネはマギリカの魔法を破ったのだ。
するとベルが前に出た。
「お兄ちゃんはお人形じゃありません!これ以上お兄ちゃんを傷つけないで!」
するとセレーネは開眼して無表情にベルを憎悪をふんだんに煮込んだような目で睨んだ。
「…五月蝿いですわ。私エルフがこの世で一番嫌いなの。耳が腐りますわ…」
するとまたしてもセレーネは魔法を放とうとした。だが
「させるか!」
ゲルラがすかさずセレーネに火炎を吐いた。
「ち!"魔女の水刑"!」
セレーネは魔法を中断して炎を防ぐための新たな魔法を放った。魔法陣からは透明な泡が出てきて炎を包み消火した。
「ベルちゃん!今すぐにバリアを張ってご家族を守りなさい!此処は私たちで何とかするから!」
「は…はい!」
マギリカの言葉にベルは力強く頷き兄と両親ごと水のバリアで守った。
「ふざけないで下さいます!?マギリカ!貴女が私に勝てるとでも思ってますの!?」
「そうね。でも昔から貴女の方が私に勝った事ないでしょ?」
「今と昔は違いますわ!ふん。死にたくなかったらそっちのエルフのクソガキを殺させなさい!エルフなんて汚れた種族…いなくていいのよ!"魔女の狂気"」
セレーネは手を上に上げた。すると天井に部家と同じくらいの面積の魔法陣が現れた。魔法陣から白い光が複数放出されてヴラムの氷で閉じ込められてるゾンビ達に入り込む。レイギスへ行くはずの光はベルの魔法で防がれて届かなかった。
すると氷がピシッと大きくひび割れて崩れていった。
中からは筋肉隆々の竜人ゾンビが現れた。鎧もその膨らんだ体に耐えきれず割れて行く。
「さあ…行きなさい?私の可愛いお人形さん?」
クスクスと笑いながら命令するセレーネ。
「貴様…俺の大切な仲間に…」
ワナワナと震えるゲルラ。原型を留めず細胞に負荷をかけまくった体に騎士達の誇りであったはずの砕けた鎧。
ゲルラは思った。目の前の女を絶対に許してはならないと。
セレーネ。彼女は人の命も尊厳も何とも思ってない。自分と自分の愛してる人のみで世界が構成されてると信じて疑わない。その他は皆んなどうでもいいのだろう。死者に関しては自分のおもちゃか何かだと勘違いしている。
その死者達がどんな道を辿ったのか、その人たちを愛する人がいるなんて事もこれっぽっちも考えていない。
「差し違えてもあの女を…」
剣を構えて睨みつけるゲルラ。だがヴラムがゲルラの肩を叩いた。
「おい赤トカゲ。冷静にならんか。それでも騎士団長か貴様は。」
「これが…これが冷静でいられる訳がないだろ!あいつは俺の仲間を…」
「だが貴様の炎はあの女に軽く止められたな。」
「!?」
「近距離で剣で刺すか?確かに殺せるが奴の魔法の速さは異常だ。まず辿り着けるかすら怪しい。」
「ならどうしろと言うんだ!」
吠えるゲルラにヴラムは
「お前は自分の団員の世話でもしていろ。いいのか?赤の他人の俺たちが貴様の仲間を傷つけても。」
「し…しかし…」
「それにあの女はマギリカが担当するだろうな。奴はふざけてるがいざとなると譲らん強情な奴だ。
貴様が入れば二人の魔女に何されかわからんぞ?」
ヴラムはニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべる。ヴラムは見ろと指を指す。その方向を見ると、二人の魔女の激しい戦いが既に始まっていた。
「"魔女の処刑台"」
「"魔女の鎌"」
片方から二つの刃。もう片方からは大きな鎌状の刃がぶつかりあい金属のような音を立てて跳ね返り壁に当たる。壁に大きな裂傷ができた。
すると
「"魔女の天球儀"」
「"魔女の鉄球"」
今度は白い光を帯びた透明な無数の玉と空気砲のような大きな衝撃波がぶつかり合い相殺して、周りに風圧がかかる。
レベルが段違いである。魔女族は全種族最強の魔法使い。それが二人もいるのだ。その二人の戦いは別次元のようである。
気を取られてるとゾンビの一人が腕をゲルラに振り下ろした。ゲルラはすぐにそれに反応して躱す。躱すと別方向から氷のブレスが吐かれるがすぐに炎の息を対処し、凌いでいる。
腐っても騎士団長。凶暴化した同族にたいしても引けを取らない。
「く…仕方ない。お前達に私自ら止めを刺さねばならぬようだ。…安らかに眠ってくれ。」
そう言ってゲルラはスーッと息を大きく吸いさらに火力が増した炎を吐いて攻撃していく。
一方他のメンバーは、
「"氷の棺"」
ヴラムが魔法を唱えた。ヴラムの足元とゾンビ一体一体それぞれの足元に水色の魔法陣が浮かび、ゾンビが四角い棺のような氷で凍らされた。
放った魔法は"凍結"よりも冷たく頑丈。だが範囲は狭い。しかしヴラムの魔力操作の精密さが複数のゾンビの同時凍結を成功させている。
"絶対零度"は威力、範囲共に申し分ないがいかんせん魔力消費量が多いので確実に相手の動きを止めるならば氷の棺の方がコスパがいいのだ。
他にもシュリとハチは凶暴化し力の増した竜人と渡り合っていた。
五感の優れた二人はブレスの吐かれる方向を視線や風の流れで予測して素早く避けて行く。
そしてすぐに距離を詰めてすぐ様攻撃を加えている。
力の方はまだ鬼人の方が上のようでありシュリは相手に確実に攻撃を当てて一発で仕留めている。ハチは力で負けているがその分研ぎ澄まされた感覚で攻撃を避け続け素早く何度も攻撃を当てて倒している。
エーデルはエーデルである名案が浮かんだらしく走りながらゾンビを集めているがエーデルは自身の魔法である"光爆弾"を敢えて自分の足元に発動しながら走る。
すると追いかけてきたゾンビがそれを踏んで光の爆発に巻き込まれて吹っ飛んでいく。
「ふっふっふ!名付けて"光地雷トラップ《インパクト・トラップ》"!」
エーデルは得意げに次から次へと爆弾をばら撒きゾンビを吹っ飛ばしていく。
敢えて当てるの考えから落とすに変換したエーデル。落とすは真っ逆さまに落とすイメージだ。命中力は左程必要ない。それに地雷ならばエーデルの慣れた攻撃極振り型の魔法が使用できる。
「…本当は良くないだろうけど…緊急事態だしね…あはは…」
エーデルは苦笑しながら走って行く。
一行の働きによりゾンビはさすがにダメージが大きく活動を停止させた。
そして…マギリカとセレーネの対決はさらに過激化し始めた。
用語
◯ゾンビ
遺体にネクロバグが寄生して動かしてるのが通常であり、奇怪な動きをする。しかし大概は遺体が動けば全てゾンビとして片付けられやすい。ネクロバグが寄生する物はネクロバグがいることが多い脳みそを吹き飛ばす事で動きを止めれるがしぶとい。