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二章第十七話 殺意の魔女

十八話は16時以降投稿予定です。

 魔法を扱える種族は実は天才型と努力型に分かれる。

 天才型は一人で勝手に魔法が使えて制御できる者。これはヴラムが該当する。

 そして努力型は親などに教えてもらって修行した上で魔法を取得した者。これはマギリカやエーデルが該当していた。大概は後者に属する。


 ベルはこの年まで魔法が使えなかった。周りに教える人がいなかったし本人も魔法に興味等なかったから。

 家族も皆んな竜人であるため魔法の使い方がまず分からない。学校に通わせる選択肢もあったが何せエルフ。その上にベルは泣き虫なくせに好奇心旺盛で自ら危険に突進して行く猪突猛進型だ。親はそんな娘が心配だし、ベル自身は魔法が使えなくてもいいとさえ思っていた為に起こった弊害だ。


 だが今になって何故か魔法が使えてしまったのだ。誰にも教えられた訳でもない。なのに過去一感情が高まったその時に魔法が発動した。

 ベルもまたヴラム同様の天才型だったのだ。


 「…お兄ちゃん…苦しいよね…嫌だよね…安心して私がパパとママを守るから…けど…お願いだよ…私の大切な人たちに攻撃しないでよ」

 「べ…ル」

 ベルは再度掴んだ感覚で水のバリアを張って行く。唯一回使用しただけで掴んだ感覚は正に彼女を天才として示した証だった。


 するとヴラムが更に今まで節約してた魔力を放出した。

 「"絶対零度アブソリュート・ゼロ"!"氷壁アイシー・シルト"!」

 同時に二つの魔法を発動した。強い冷気で未だ動く竜人、レイギスを含めて全てを凍らせた。そしていつ溶けてもいいようにバリアを張った。

 そしてすぐにマギリカとエーデルの元に全員駆け寄った。


 「おい!エーデル!しっかりしろ!」

 シュリが呼びかける。がエーデルは低温により顔を青くさせている。この中で回復魔法が使えるのはエーデルだけだ。そのエーデル自身が動けないのである。

 「私が何とかする」

 するとゲルラが威力を抑えた炎の息を吐く。しかし、中々解けない。魔力で威力の増した氷のブレスは中々の威力だ。

 

 「く…もっと強い火力…いやしかし…」

 炎のブレスを人に吐くとなるとかなり調節が難しくなるのだ。するとヴラムが割り込んできた。そして


 「"蒼炎そうえん"…」

 指を立てるとそこに紅い魔法陣が現れ小さいそれでいて高い火力の蒼い炎が現れた。

 シュリやゲルラ、親子三人は口をあんぐりと開けている。原則一人一属性しか魔法は使えない筈。これは全種族の中で基本の知識。

 なのに目の前の少年はそれを破った。


 氷の魔法を使っていた少年が急に正反対の属性である炎の魔法を使ったのだ。

 そして高い火力の炎を翳した。

 「何をしている。貴様も炎を出せ赤トカゲ。」

 「あ…ああすまん。」

 ヴラムの言葉にすぐ様解凍にとりかかるゲルラ。


 マギリカとハチは平然としている。シュリはえっ?えっ?と混乱している。

 「マ…マギリカ様、ハチ?こ…これはどういう事ですか?何故ヴラム様が炎を?」

 「…内緒よ。ごめんね。」

 「うーん吾輩も正直驚いてるにゃん。いや寧ろあの子が氷の魔法を使ってたのが驚きだったにゃん。まだ炎がつかるんだにゃんね。」

 「は?」

 はぐらかすマギリカもそうだがハチの言い方が気になるシュリ。まるでヴラムは元々は炎使いであり氷はつい最近できるようになったというニュアンスだ。


 徐々に氷が溶けてエーデルの血色が戻っていく。エーデルは意識を取り戻した。

 「あれ?私は?」

 「エーデルちゃん!」

 マギリカは思いっきりエーデルを抱きしめた。

 「ひゃあ!マギリカさん?」

 「ごめんね。ごめんね!私がぼーっとしてたから!」

 「大丈夫ですよ?気にしないでください。」

 エーデルもマギリカを抱きしめ始めた。


 するとベルが

 「えっと確か本では…」

 ブツブツ呟きながら手を組んで跪いた。するとベルとエーデルの足元に青い魔法陣が現れて何やら無数の泡が出てきた。

 「わあ!ん?」

 驚くエーデル。体に出来てた低音火傷で赤くなった箇所がみるみる元の色に戻り痛みも引いて行く。


 「すごいわ!ベルちゃん回復魔法もできるのね!」

 マギリカが感嘆の声を上げる。ベル自身も驚いている。

 「ま…まさかできると思ってませんでした…」

 本でたまたま見た方法を試しただけなのだ。

 実際は回復魔法は適正の無い者はまず扱えない。ヴラムやマギリカも魔法の天才だが回復はできないし、まだ魔法に関して不完全なエーデルは回復が使える。

 本に書いてあって真似しただけでできる代物ではないのだ。

 「まさかベルが魔法を…」

 「凄い…凄いぞベル!」

 「えへへ」

 両親も娘の成長に大喜びだ。


 と喜んでいるが中々本題に入らないため

 「ふん。小娘も回復したようだし聞いておこう。マギリカ。貴様何に気を取られていたのだ。」

 ヴラムが話を戻した。するとマギリカは

 「は!そうだった!さっき大きい無属性のでかい反応がこっちに向かってたの!」

 「はあ!?んな大事な事もっと早く言わんか馬鹿たれ!」

 「くはぁ!馬鹿はないでしょ!?ってやば!」

 「どうしたのですか?」


 突如騒ぎ出したマギリカにシュリが首を傾げた。

 「その反応がここに!」

 ずどぉおおん!

 マギリカの言葉を遮るかのように大きい音が鳴った。全員が音のする方を向くと天井から瓦礫を落ちて陽の光が入ってきていた。


 しかしそれより気になるのは

 「あらあら?いつの間にやらお墓の中が氷像の展示会場になってますわ。」

 箒の上で器用に立っている一人の女性がその崩れた屋根の下で浮いていた。クスクスに手を口元に添えて嘲笑を浮かべて一行を見下していた。

 女は目を閉じていてドレス風のローブとマギリカに似た帽子を被っている紫髪の神秘的な女性だ。


 その姿を見てマギリカは震えていた。

 「何で…」

 「何者だ貴様!ここは神聖なる戦士の墓、テトラ・グレイヴだ!それを崩すとは!」

 ゲルラが女に向かって叫ぶ。すると女が箒の上で器用にカーテシーを行った。


 「お初にお目にかかります。私の名は"セレーネ・マギグレア"。そちらにいらっしゃるマギリカとは旧友ですの。」

 マギリカの名を口に出したセレーネに一行は目を見開いた。

 「アンタ…一体何してたの?アンタは集落を追い出された筈でしょ!?」

 「あらあら覚えてくれて嬉しいですわ♡安心下さいまし。私は今愛に生きてますの♡」

 セレーネは両頬に手を添えて恍惚の表情を浮かべた。

 「私の運命の人♡あの方の為なら私は何だって致しますわ♡」

 「….御託はいいの。どうせこの悪趣味なゾンビもアンタのせいなんでしょ?まさかアンタと関わると思ってなかったから油断してたわ。

 アンタは何も学ばないわね。」

 「は?」

 今までの朗らかなマギリカから出たとは思えない冷たい声色。顔も血管が浮き出ていた。

 

 その様子に一行は固唾を飲んで見守るしか出来なかった。


 マギリカに言い返されたセレーネも青筋を浮かべている。

 「うふふ。ほんと…貴女も昔から変わらず下品で嫌ですわ。ほんと大嫌い。」

 「あら。奇遇ね。私もアンタが世界で一番大っ嫌いよ。ばーか」

 「ムカつく女ですわ。いい?私は唯愛するあの方…グリム様のためにお花を栽培してるに過ぎませんの!恋する乙女が咲かせるお花。きっとあの方も私に顔を向けて…」


 そう言って瞬間セレーネはベルの方を向いた。するとカッと開眼した。その瞳は銀色に輝いているが…その瞳に込められてるのは深い憎悪だった。

 「エルフ…」

 「え?あ…あの?」

 「エルフ…エルフ…」

 セレーネはスッと掌をベルに向けた。すると白に近い透明の魔法陣が現れた。


 「"魔女の処刑台ウィッチ・ハント"」

 魔法陣の前に魔力が集中していく。すると巨大な二つの刃が現れた。それは鋏のように形状を変えてベルの喉笛を狙って行く。

 「え!?」

 「ベル!」


 魔法はとんでも無い速さでベルの喉を狙う。

 その速さにエーデルもヴラムも魔法が追いつかない。しかし

 

 その魔法は突如現れた電撃で防がれた。

登場人物

  セレーネ・マギグレア(1530歳)

 マギリカと同郷の魔女でかつての親友だったが、ある事件を起こしたことにより魔女の集落を追放された。性格は普段は物静かだが魔力のない種族とエルフが大嫌いで特にエルフを前にすると容赦なく殺そうとするヤバイ所がある。愛する人がおり一途。

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