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二章第十五話 操られし亡者

十六話は17時過ぎ投稿予定

 「お兄ちゃん私だよ!ベルだよ!分からないの!?」

 レイギスに対してベルや両親は訴えかける。しかしレイギスは反応しない。

 しかし次の瞬間、レイギスがパカっと口を開けて口の中で放電しようとしていた。

 そしてとうとう吐き出した。


 マープルはしっかり両腕でベルを抱きしめてドラゴニアはその前に立ちレイギスと同じく電流のブレスを吐き出した。

 二人のブレスがぶつかる。最初は相殺していて、徐々にドラゴニアのブレスが押し勝ち始めるが、ドラゴニアはこのままだと息子の体を傷つけると思ってしまい途中で力を抜いてしまった。


 だがそれが良くなかった。電流は一斉に家族に向かう。

 「クソ!」

 ドラゴニアはまたしても力を入れてブレスを吐いた。そこへ

 「貴殿らの事は私が守る!」

 そう言うとゲルラが前に出て高火力の炎を吐き出した。


 ドラゴニアの電流とゲルラの炎が混じり合い圧倒的な力でレイギスを襲い、吹っ飛ばした。

 「あ…ありがとうございます!ゲルラ様!」

 「礼はいらん。貴殿は家族を守る事のみを考えろ。」

 そう言ってゲルラは他のゾンビ達にも対峙した。


 

 一方ヴラム一行は其々で魔法を発動して事なきを得ていた。

 周りのゾンビ達はカチカチに凍ってる物や壁にめり込んでいる者。透明な膜のような風船に閉じ込められてる者が多数。

 「うう…私の攻撃魔法誰にも当たんないよぉ…」

 エーデルは悔しそうである。ほぼ他の四人が片付けた。

 「なーに言ってるのよ!攻撃を受けそうになったりブレス吐かれそうになった時バリア貼ってくれたじゃないの!エーデルちゃんの機転は最高の武器よ!」

 マギリカはそんなエーデルの頭を撫でる。


 「どうやらあまり効いておらぬようだ。小娘の攻撃が当たろうなかろうが関係なかろう。」

 ヴラムの発言にゾンビを見ると氷の中から炎の息を吐き出して溶かす者や収縮された風船内で蠢く者。壁にめり込んでいた者は力ずくで出てきている。

 レイギスも例外ではない。吹っ飛ばされたにも関わらずまた起き上がった。


 「お兄ちゃん…どうして?どうして私達に攻撃するの!?私達の事嫌いになったの?」

 ベルが泣きながら問うがレイギスの表情は変わらない。

 

 するとレイギスや他のゾンビ達が何やら急に集まり出して奥に向かって走っていった。

 「逃げるのか?」

 「いや…多分違う」

 ゲルラが追いかけようとするがマギリカが待ったをかけた。

 「奥から花の気配がする。」

 そう真剣な顔で語るマギリカ。


 「やはりヴラム様の推測通り彼らは花を守ろうとしてるのでしょうか?」

 「さあな。とはいえあのゾンビ。中々しぶといではないか。術者の魔力を上乗せされている分なのか戦闘力も上がっているようだ。

 まさか俺の氷が破られようとは…」

 クククと不敵に笑うヴラム。

 「それって術者を倒さなきゃいけないの?相手何処にいるか分からないし…」

 エーデルは頭を抱えた。マギリカのいう通りなら今はこの場にいないらしいし、相手は魔女。一筋縄ではいかない。


 「結局はそうなるにゃんね。魔力で無理やり操られてるのなら、体がある限り彼らは酷使されるにゃん。」

 「酷い…」

 ハチの考えを口にするとベルは両拳をギュッと握りしめた。


 「どうして…お兄ちゃん達は人を助けただけなのに…何で死んだ後にそんな事されなきゃいけないの…お兄ちゃんが何をしたっていうの…」

 「ベル…」

 ベルは怒りで顔を真っ赤にして怒っていた。そんなベルをマープルは宥める。するとベルの頭を優しく何者かに撫でられた。ゲルラである。


 「少女よ。貴殿の話はレイギスに聞いている。」

 「え?」

 「よく可愛い妹だ。世界を共に旅するのだると話してくれた。奴は人々に恐れられる私にも気安く話しかけ、慕ってくれていた。人々の為にその身を犠牲にする覚悟もあった。

 優秀な騎士だ。

 …私も怒りでいっぱいだ。だからこそ共にこの事件を解決しよう。それがレイギスや他の皆へのせめてもの手向けになるだろう。」

 ベルはゲルラの方を見上げる。


 彼だって苦しいのだ。かつての仲間達に手を掛けなければならないのだから、彼の潰れた眼球も彼らと共に戦った証なのだ。勲章なのだ。

 ベルはいつのまにか泣き止み強い決意を持った顔になる。その顔を不器用に微笑みながら

 「良い顔になった。レイギスにそっくりだ」

 ゲルラはベルの頭を撫でた。


 「兎も角…今はこの先へ進む方がよかろう。何かあるかも知れぬしな。」

 「ヴラム様!私にお任せください!必ずや貴方をお守り致します!」

 「やめい!反響する!」

 ベルに触発されたシュリもまた主を守るという決意を語った。だが声がデカくて反響しヴラムは顔をシワシワにしている。


 一行はゾンビ達の向かった先へと歩き出す。

 最後尾にはハチとマギリカ。

 「大丈夫にゃんか?花だけならあれとしてもゾンビ達の魔力まで集結したら倒れるんじゃにゃいか?」

 「うーんそこは確かに心配なのよね…少し気分が悪くなったし…」

 ふーとため息を吐くマギリカにハチがゴソゴソと何かを取り出した。それはサクラ大陸でよく飲まれるお茶。抹茶と同じ色をした巾着である。中には丸薬がゴロゴロと入っている。


 「何これ?」

 「これは一時的に体の感覚を麻痺させる毒にゃん。」

 「毒?ゾンビに食わせんの?」

 「まさか!これは吾輩が配合に配合を重ねた特別性にゃん。感覚といえど五感はきちんと残るにゃん。少しはピリピリするけど。

 けど魔力感知能力はほぼほぼ麻痺してダメになると思うにゃん。」

 そう言ってハチは丸薬を取り出した。色は黒と白の二色である。


 「黒が毒。白が解毒薬にゃん。これをマギリカ。君にあげるにゃん」

 「え!?マジで!?」

 「どっちみち君の感知能力はこの旅では必要にゃん。でもそれは君の負担にもなるにゃん。

 だから花に近づく場合はこれを飲んで対処すれば魔力酔いは抑えられるにゃん!

 んで終わったらこっちの白い方を飲めばすぐに回復するから、花から離れたら飲めばいいにゃん。あ。でももし何か不調があったら教えて欲しいにゃん。すぐに改良するから。」


 ハチが説明するとマギリカは顔を輝かせてハチを抱きしめた。

 「にぎゃあああ!急に何するにゃん!」

 「ハチちゃぁぁあん♡何て優しいの♡ありがと!大事に飲むわん♡」

 するとマギリカがハチにキスの雨を降らせた。見るといつの間にか他のメンバーは前に前に行ってしまった。






 ハチの制止されマギリカはキスをやめた。二人は急いで他のメンバーに合流した。すると待っていたであろうメンバーが心配そうに見ている。ヴラムは腕を組んで眉間に皺を寄せている。

 「おい。遅いぞ貴様ら…ハチ。どうしたんだその赤いのは…」

 「これ口紅?」

 ハチの白い毛にはマギリカの口紅が付着していた。


 「ちちくり合うのは勝手だが此処でするでないわ!」

 「誤解にゃん!んな事してないにゃん!」

 「ち…ちちくり合うだと…」

 ヴラムの説教にハチは慌てて弁解する。シュリは何を想像したのか真っ赤になっている。見るとゲルラも赤茶の鱗を更に赤くして必死に目を逸らしている。


 「いいな…」

 「あなた?」

 「パパダメだよ。」

 それを羨ましげに見るドラゴニアの腕を笑顔で抓るマープルと冷めた目で見るベル。反応は十人十色である。


 「で…実際は何があったんですか?」

 「それは内緒♡エーデルちゃんもハチちゃんみたいな人と結婚した方がいいわよ?」

 「?」

 クスクスと笑うマギリカに首を傾げるエーデル。


 一行は二人が来た為更に奥へと進んでいく。

登場人物

  レイギス・ブルーベル(享年22)

ドラゴニアとマープルの実子でベルの義兄。竜人の男性で生前は聖竜騎士団に所属していた。捨てられてたベルを拾って溺愛していた。海を見に行く事が好きでありよく妹を連れて遊びに行っていた。

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