白乱の花火
他人は禍々しいエネルギー弾を放ち、皆無は壊を放つ。両者の攻撃は空中で散り、風圧だけが押しかかる。
他人は皆無に急接近し右腕を横に振りかざすが、皆無は左腕で受け止め、逆の手で他人の頬を殴り飛ばす。
他人が飛んでいった方向に、またもや皆無は魂を放つ。
「壊!」
その瞬間、その場の瓦礫は全て粉々になり、他人はビルの柱に衝突する。
(こいつ、強い)
他人は皆無を見誤っていたことに気づく。
「おいおい、さっきまでの威勢はどこ言ったんだ」
そう言って、皆無は他人がいるビルに入る。
「少し油断しただけだ」
他人は球体を四つ作り、皆無に向けて投げる。その動きと同時に皆無は他人との距離を詰める。
皆無は球体を全て避け、近づいて来る他人を天に蹴り飛ばす。十階建てのビルを突き破り、他人は空中に放り投げられる。
そこにまたもや皆無は解き放つ。ビルの上では花火のような白い閃光が打ち上がる。
他人は別のビルの屋上に着地する。
皆無は穴の空いたビルの屋上に立つ。
「もうそろそろ限界なんじゃない」
皆無は余裕そうに話しかける。
「人間如きに負けはしない」
他人は皆無から目を逸らさずに構える。
「強がるのもいいけど、現実を見な」
その皆無の言葉に他人は顔を曇らせる。
「現実か。オマエら人間に悪魔の何がわかる」
「そんなもの分かりたくないね」
顔の色つきが変わったのは他人だけでなく皆無もだった。
「俺は天敵だ。悪魔じゃない。見せてやるよ。今から起きることが現実だ」
他人は雄叫びをあげて、大きな球体を三つ作る。
皆無は他人に近づき、拳を三連発打ち込むが、他人はそれを全て受け止め、蹴りを皆無の腹に入れる。
皆無は蹴りを避けようと少し後ろに下がったおかげでダメージを減少させるが、勢いで体が吹き飛ばされる。
そこにすかさず他人は球体二つをぶち込む。
皆無は反射的に壊を放ち、他人の攻撃をもろに喰らうのは避けたが、風圧で飛ばされる。
ビル一つが崩壊するほどの威力だが、皆無は何事もなかったかのように地面に降り立つ。
そして、他人はもう一つの球体を皆無に向けて放つ。
皆無は右手に魂の原形を作ったまま、その球体目掛けて突っ込む。
皆無が動き出したと同時に球体が割れ、皆無の手は他人の手を掴む。
他人は皆無の力によって大道路の中央に投げ飛ばされる。
皆無は大きな声で叫ぶ。
「オマエら飛べ、死ぬぞ」
零たち三人は危険を本能的に察知して咄嗟の判断で空中を飛ぶ。
皆無はビルから飛び、他人の真上三十メートルほどで掌に魂を練り上げる。皆無は掌を握りしめ、一気に急降下する。皆無の掌にあった魂は地面と接触すると同時に爆発する。
地面は広範囲で激しく割れ、まるでここが震央地のような様になる。
「チッ、逃げられた」
地中には空洞になっている場所があり、そこから逃げた。
皆無は深追いするのも危険と判断し、零たちに指示を出す。
「オマエら、ここの悪魔をできるだけ落とす。余力はあるな!」
そう言って、増援が来るまで四班全員が死力を尽くして戦う。
零たち三人はこの戦いにより、まだ弱者であるということに気付かされる。