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天の先に  作者: 真
第1章
3/21

実技試験

 真っ暗なフィールドにライトがつく。

 そこには皆無が堂々と立っており指揮を取り始める。


「じゃあ、始めようか。実技試験スタートだ」




一時間前ー

 広い庭の中を零と影月はある場所へと向かうため歩く。


「あのー、今の状況を説明してもらえませんか。まだ、頭が追いついていなくて……」


「オマエは悪魔を地獄におとす天敵という一つの仕事に就いたんだ。そして、俺たちはまだ未熟なあまり、学ぶことが沢山ある。だから、生徒という立場になって、上級の天敵から学びや経験を積み重ねて、初めて一般の天敵になれる。だが、生徒であろうと天敵になるにはそれなりの実力が必要だ。それを確かめるべく、実技試験を今から行うんだ」


「実技試験って具体的に何をするんですか?」


 零は心配そうに影月に聞く。


「簡単に言うとある人が出したお題に応えればいいって感じだ。俺の場合、弍魂等の悪二体と戦ったな」


 零はわからない言葉に戸惑う。


「弍魂等の悪魔?」


「あーそうか。悪魔には強さの階級がある。壱から伍までの階級があり、強い奴が壱魂等、弱い奴が伍魂等だ。前、病院で戦った相手が壱魂等ぐらいの強さだ」


「へー」


「まあ、オマエなら多分大丈夫だろう」


 影月は立ち止まって方向を転回する。その方向には東京ドーム四個分くらいの大きさの建物が待ち構える。


「ここが会場だ」


「でっけー」


 零はあまりのデカさに圧倒される。


「ここは試験や対戦などによく使われる。最新機能が搭載されており、二十個のフィールドを展開することができる。さらに観客席もあり爆風などが当たらないようにシールドもはられている。天敵たちが存分に戦える場所だ」


 影月は会場の説明をし終えて道を案内する。


「俺は観客席に行く。オマエはそこを真っ直ぐ進め」


「はい、ありがとうございました」


 零は影月にお辞儀をする。

 そして、別々の場所へと向かう。

 真っ直ぐ進んだ先には更衣室があり、その先には真っ暗な道があった。そこを二十五メートルほど進んだところで道が開ける。

 真っ暗なフィールドの中に立った瞬間、一筋の光が観客席の一部を照らす。その照場所はある女性の姿だった。


「貴様か、試験者は。噂には聞いている。まず、自己紹介をしよう。私は織姫(おりひめ)。ここの管理長だ」


 活気のある女性が話し出す。


「早速だが君には実技試験をしてもらう。どれぐらい強いのか私に見してくれ」


 織姫は嬉しそうな顔で零を見る。


「実技試験の内容はある相手と戦ってもらうことだ」


「ある相手?」


 零は問いかける。


「そう、相手はこいつだ」


 真っ暗なフィールドにライトがつく。

 森のフィールドが展開されており、真ん中には皆無が立っている。ある相手とは皆無のことだ。


「じゃあ、始めようか。実技試験スタートだ」


 観客席にいた影月とるなは少し驚いた様子で騒つく。


「流石に無理があるのでは織姫先生」


と冷静に影月が問う。


「見てみたいではないか。君たち二人が言っていた、病院の時の戦闘を聞くからに、普通ではないんだろ。あいつは」


 二人は黙ってフィールドにいる二人を見つめる。


「全力で来な。零くん」


「そのつもりです。先生」


 零は森の木々に隠れる。


「そんなことしても意味ないよ」


 零は木と木の間から炎を二、三発放つ。それを難なく皆無は躱す。

 皆無の重心が避ける際に少し後ろに動いた瞬間、背後に零が現れる。零は皆無の横腹を殴ろうとしたが、そこにはもう皆無はいなかった。

 零は辺りを見回すがいない。


「やられた」


 零は先手を打たれる前に半径五メートルほどに氷結を放ち、その場を離れる。

 観客席では静かに二人の姿を見守っている。


(相手の位置がわからない、多分相手もそうだ。だったら、どうするのが得策だ)


 零は慎重に物事を進めようとするが皆無はそれをぶち壊すようにして現れる。


「油断はよくないよ」


 零はすぐさま距離を取る。


(相手は攻撃をしてこない。チャンスは一度きり……やるしかねぇ)


 零は炎を見に纏い、皆無に容赦なく攻撃を加える。皆無は冷静に避ける。

 だが、零の攻撃はますます加速していく。

 それに皆無は反応したが、少し攻撃のずれが生じる。

 零はそれを見逃さず、渾身の一蹴りをして空間を蹴り上げる。

 皆無は直接当たっていないが風圧によって押し出される。

 零は皆無の地面の着地と同時に皆無の周りをドーム状の氷壁で閉じ込める。


「こんなの意味ないよ」


 皆無は右拳を氷壁に打ちつけて氷壁を破る。

 皆無は周りを見て気づく。


「ここは……!」


 そう、ここは零が咄嗟に放った氷結の場所だった。

 そして、気づいた時には上空からは零が炎の拳を振り下ろしていた。

 皆無は避ける間もなく炎に飲み込まれる。と同時に氷と炎がぶつかり大爆発を起こしす。

 零はその反動で吹き飛ばされる。


「どうだ」


 零は体制を整える。

 流石にこれほどの威力、もう決着はついたも同然と思っていた零だが……。


「やー、すごいね君。能力も身の使いこなしもとっておきだ」


 皆無は周りの塵を払って姿を現す。


「だけど、一般人じゃ俺たちには勝てない。見してあげるよ天敵の強さ」


 そう言って、皆無は掌の上で何かを作りあげる。

 観客席では少しざわつき始める。


「あれは流石にまずいのでは?」


 影月は織姫を見て訴える。


「まあ、見とけ」


 織姫は落ち着いた態度で視線を戻す。

 皆無の周りの空気は吸い込まれるような独特な圧を放つ。まるで嵐のようだ。

 零は嵐に吸い込まれそうになるも戦う姿勢は変えない。


「じゃあ、いくよ」


 皆無は手のひらを握りしめ何もない空間を殴った。

 その時、零は肌で感じた。死を……。

 零は気づいたら目をつぶっていた。恐る恐る目を開けると、そこは空から見た地上があった。零は皆無に空中で担がれていた。

 そこから見えた、驚きの光景を目の当たりにして零は困惑する。皆無がいた場所から零がいた場所までの直線には木がなく、地面はいくつもの断層ができたかのようにガタガタになっていた。

 あまりの破壊力に零は言葉が出ない。

 皆無はゆっくり地面の方に降りていく。


「君にはこれぐらい強くなってほしい」


と皆無は零に語りかける。

 皆無が完全に地面に降りた同時に織姫が終わりの一言を発する。


「これみて実技試験、終了とする」

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