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天の先に  作者: 真
第1章
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私の故郷

 るなは大樹に飛び蹴りをするも、大樹はびくともしない。


「おいおい、そんなものか」


 悪魔は根を操り、るなを追尾する。るなは全て避けて悪魔に近づこうとするが、悪魔の一手によりるなは阻まれる。悪魔の分身が次々と木の中から姿を現す。

 るなは覚醒したとはいえ、悪魔には到底届かない。だが、この場にはまだ、覚醒間際のやつがいた。


「君たち! まだ、立てる?」


「あなたは……先輩の妹」


 零たちの後ろにいたのはここだった。


「私の能力は傷を癒す回復です。少し時間がかかるけど、お姉ちゃんを守って」


 ここは二人を仰向けにさせて手をかざす。その様子を悪魔は遠くから見つける。


(回復か。まあ、関係ない。回復には時間がかなりかかる。その前にこいつを倒してしまえば問題はない)


 悪魔はそう考えて三人のことなど気にも止めない。それより、悪魔はるなの戦闘に集中する。地上ではるなと分身が激戦を繰り広げる。


(次から次へとキリがない。魂も残り少ない。早く決着つけないと)


 そう焦っているるなの視界は狭まる。その隙を悪魔は突く。


透明株(クリアクイセ)


 悪魔はるなから少し離れた場所に透明な木を植える。そのことにるなは気づかない。


(知ってるか、自然はいつだって冷静さ。広い世界で生きていくためには環境に適さないといけない。そういう周りを見て、賢く生きる。そうさ、こう言う時は視野の広いやつが戦いを制す)


「周りを見れない奴に生きる世界なんか存在しないんだよ!」


 悪魔は透明な木を操り、根をるなに向ける。


「周りを見れていない……か。ふっ、それは違うな」


(私はずっと周りを伺って生きてきた。だけど、それのせいで多くのものを失った。それに気づかせてくれた奴らがいた)


「私はあいつらを信じている」


 そう言い放った瞬間、後方から雷のような音が地上を騒がせる。


「何だ?」


 雷が鳴り止んだ時には透明な木はあるものによって撃ち抜かれていた。その人物は影月だった。


「残念だったな。こんな小細工俺には通用しねぇよ」


 悪魔は目を疑う。


「何故もう動ける? まさか一人に集中させたのか」


「正解だ」


「周りを見れていないのはお前じゃないか、悪魔」


「死に損ないが」


「行くぞ、影月」


「はい」


 影月は持ち前の高速移動を活かして分身を制圧する。その間にるなが本体に突っ込む。だが、悪魔を覆っている木はるなの飛び蹴りではびくともしない。


(火力が足りていない。魂を練り直さないといけないが……時間と環境がない。どうする)


 るなはふと零のいる方を見る。


(そうだよな。あいつらがいるんだから。私は私のことをする)


 るなは悪魔との距離をとって空中で手を広げて、魂を練る儀式を始める。


(何だあいつ? さっきの攻撃でわかったはずだ。お前の攻撃は通用しないということを。まさか、あいつらに託したのか? あいつはまだ動けないし、もう一方も分身が止めている。ということはこいつが今必要としているものは俺の木を貫くための力。そのための魂の練り上げを今俺の目の前でしているのか?)


 悪魔はあまりの無意味な行動に思考が鈍る。


「そんな無防備で魂を練り上げるとはいい度胸だぜ。すぐ殺してやるよ」


 悪魔は無数の枝をるなに放つ。だけど、るなは一向に儀式を辞めようとはしない。


(馬鹿なやつめ。一か八かの方法かもしれないが、俺は見破った。終わりだ!)


 無数の枝がるなの目の前まで来た時、一筋の光がるなの目の前を通る。その後にも光は絶えずるなの前を通過する。その光は枝を一本残さず焼き払う。


「何だ?」


 悪魔はある可能性を疑った。それは零が復活しているという可能性だ。その可能性は本物となる。あの光は零が放った凝縮された炎だった。


「いけーーるな!」


 悪魔は次の攻撃手段として蓄えたエネルギー弾を放つ。

 零は動こうとするが回復しきっていない体は言うことを聞かない。


(間に合わねぇ)


 すると、蒼天から稲妻が落ちる。その落ちた先には影月がいた。


「こっちもいるぜ」


 影月の稲妻は悪魔のエネルギー弾を消滅させる。


「いけーーるな!」


 るなは身の回りに炎球を九つ展開させる。そして、炎球を両手に一つずつ持ち、悪魔に向けて投げる。炎球は悪魔を覆っている木にストレートに当たる。炎球が木に接触した瞬間、木は今まで以上にないほど燃え上がる。悪魔は四班たちのしつこい攻撃に怒鳴り声を上げる。


「いい加減くたばれ!」


 悪魔は数本の枝をるなに向ける。るなは悪魔に近づきながら、空中で体を捻じらして枝を避ける。残りの炎球五個を空中で発火させて、るなの回りを纏う。


「あっちぃ!」


 るなや零など炎を使えるものには炎の耐性があると言われているが、るなの炎は火力が高すぎて限度を越してしまう。だが、るなはそんなことは気にせず、悪魔の方へと突っ込む。

 るなは最後の炎球二個を握りしめて、先ほど悪魔に当てた黒焦げた樹皮へとぶち込む。炎は先ほどより勢いよく燃える。


「そこにいるのはわかってんだよ!」


 悪魔は枝を雁字搦め(がんじがらめ)にした盾をるなと燃え上がる樹皮の間に立てる。るなは前のめり姿勢を起こして、いつも通りの飛び蹴りの姿勢へと変える。

 零と影月は最後の力を振り絞って「行け!」と声を張り上げる。近くにいるここも手を合わせて「頑張って!」と祈る。


「「「るなー!」」」


 三人の声援がるなの魂を燃やす。


「ここは私の育った大切な故郷だ、私が守る! ウルフ!」


 るなの魂のこもった飛び蹴りは枝の盾、燃え上がる樹皮、辺材、心材もを貫通させて、髄にいる悪魔の心臓をも貫く。大樹は次第に崩れていく。それと共に悪魔の命も削られていく。


(負けたのか? この俺が……あんな奴らに。ダメだ。形を保てない。崩れていく。あー、もっと自然といたかった。もっと守りたかった。すまない、自然よ。恩と言っては何だが、俺と過ごした日々忘れないでくれよ)


 悪魔からは膨大なエネルギーの残滓が放出される。それを見たここは怯える。


「まだ終わってないの?」


零は「いや、違う」と言ってエネルギーの残滓を見つめる。


「これはあいつが自然と結んだ縛りを今解き放ったんだ。あいつが望んだ永久の自然を」


 エネルギーは空に広がっていき、優しい雨粒のように地面に降り注ぐ。すると、悪魔と戦って倒れた木や燃えて無くなった草木などがみるみると成長していき、元のあった故郷の姿へと戻る。

 零と影月は全身から崩れ落ちて地面に横たわる。るなも立つことがままならないが、膝をついて意識を保つ。ここは安心して大の字にして後ろへ転がる。疲れ切った者たちを静かに自然が優しく包み込む。

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