天敵
(俺は……誰だ? ここは……どこだ?)
少年は目を開け、ぼんやりとした視界で辺りを見渡す。
少年は見慣れない部屋のソファーの上で寝ていたようだ。
「あー起きた。よかったー」
明るい声が部屋の中に優しく囁く。
その声と姿を見て少年は咄嗟に、
「玲!」
少年は旧夢から覚めたようだ。
「起きたか」
黒髪の少年が心配そうに声をかける。
少年は体を起こして辺りを見渡す。ここは保健室のようだ。
黒髪の少年が少年へと近づく。
「起きて早々悪いが。率直に聞く、オマエは何者だ?」
少年は戸惑った。寝起きのせいなのか、全く何を言っているのかわからなかった。
「は?」
「『は?』って、天敵でもないやつが何故あそこまで戦えるんだ」
またよくわからない質問が飛んで来る。
少年は質問を質問で返す。
「天……敵?」
黒髪の少年は呆れたような声で話し出す。
「はあ、人は喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。人はそれぞれ感情という名の心をもつ。だけど、それはときに悪魔をも有むことがある。悪魔を地獄に堕とす。その者たちの総称を天敵と言うんだ」
「おーー」
少年は少し関心したように頷く。
黒髪の少年は速攻切替して本題に戻す。
「で、オマエは何者だ?」
「俺は……」
少年の声を遮るようにバタンとドアが開く。少年と同じくらいの年の少女が眠たそうにあくびをしながら入ってくる。
「うぁーーあ、先生が呼んでるよ」
「間の悪い時に」
黒髪の少年は少し苛立つ。
「あれ、起きてんじゃん。おっす」
「お、おっす」
少女は少年が起きてることに気づき、何気ない挨拶を交わす。
少女は何か思いついたかのように手を打つ。
「そうだ。その子も連れて行こう」
「でも、まだ……」
「多分先生も喜ぶよ。ってことでよろしく」
少女は黒髪の少年の話を耳に通さず、廊下を出る。
「先輩!」
黒髪の少年は少女を追いかけるようにして廊下を出たが、
「いない」
黒髪の少年は頭をかく。
「あーもう……行くぞ!」
少年は黒髪の少年の後をついて行く。
「えーと、ここはどこなんですか?」
少年が不思議そうに聞く。
「ここは天敵達が集う場、空と呼んでいる。空はここの他にも二箇所ある」
黒髪の少年は天敵の用語を使って説明する。
「へー、天敵ってどういう人達がいるんですか?」
続けて、少年がまた聞く。
「まあ、大体二つに分かれる。一つは元々天敵の家柄である人、二つはそれ以外の人だ」
「じゃあ俺は後者ってことですか?」
少年は理解し、話す。
「あー」
「えーと、あなたは……?」
少年は恐る恐る聞く。
それに黒髪の少年は答える。
「俺は前者の人間だ」
「てことは、元々天敵の家柄ってことですか?」
「そうだ」
黒髪の少年は語り出す。
「一般的な世界でもあるだろう。家族が警察だから、自分も警察になるという、周りの人に憧れるという人の性質。それと同じだ。俺も家族が天敵だったから、天敵になった。だけど、落ちこぼれなんだよ、俺は……」
黒髪の少年は悲しそうな顔を隠す。
そう話しているとある建物の前で立ち止まる。
「ここだ」
「ここは?」
「本部だ」
「本部?」
「あー。だけど、人がほとんどいないから安心しろ」
「はー」
「そして、一様言っておくが先生は変わり者だ。気をつけろ」
また、頭の中に?が浮かぶ。
(何に気をつけるんだ?)
扉が開け、広い空間の真ん中にさっきの少女と白と黒の髪色をした人が立っていた。
(本当にここが本部なのか? 本部にしては人が少なすぎやしないか?)
少女がこっちを見て、
「遅いよー」
と手を振る。
「先輩が速すぎるんですよ」
と黒髪の少年が本当のことを言う。
(この人が先生か)
先生らしき人がすごい圧を出して迫ってくる。
「君かー。あの事件の原因は……」
少年は大人の圧というものを避けようとした。
だが、避けられないのが事実だ。仕方なく受け止めようした。
すると、圧が急に消える。
「すごいね君!」
(?)
「名前は、能力は、趣味は……」
先生は目を輝かせて少年に聞く。
少年は硬直したまま立つ。
先生の目を覚ませるかのように冷たい視線が背中を貫通する。
「先生ー」
黒髪の少年は先生を呼ぶ。
先生は我に返って冷静になる。
「おっと、取り乱してしまった。まずは、ようこそ、天敵の地へ」
少年は何故歓迎されてるかわからなかった。
「俺はオマエら四班の先生、皆無だ」
「俺は影月だ」
「私はるな。よろしくねー」
何故か自己紹介が急に始まる。
少年はまた戸惑い、問う。
「えーっと、何のことですか?」
「ん?」
皆無は少年の質問に首を傾げる。
「ん?」
少年もまた同様に首を傾げる。
その状況見て影月はため息をついて話す。
「はあー、だから今日からオマエは天敵だって言ってんだよ」
少年はまた戸惑う。
「えっ」
皆無は俺が嫌そうな顔をしたのを見て、
「ちなみに拒否権はないよ」
少年はまたもや戸惑う。
「えっ」
「天敵を知られた以上、口封じしないといけないから。それなら仲間に入れたほうが早いかなって、思ったわけ」
すごく強引だが、判断は間違ってはいないようだ。
「じゃあまず、君の名前は?」
「俺の名前……」
少年は自分の名前を言いたそうにはしない。
それを見て皆無は意図を説明する。
「そう、班の人だったら知っといたほうが何かと便利でしょ」
少年は意図を理解し、渋々自己紹介をする。
「俺の名前は……零です。よろしくお願いします」
零は深く一礼をする。
「よし、と言うことで四班結成と……いく前に、零くんは今から実技試験ね」
皆無の唐突な発言により、また少年は、
「えっ」