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天の先に  作者: 真
第1章
17/21

知らない存在〜流星〜

数日前ーー

 輪廻と男と獺酩は会議をする最中、男はあることに注意点をおく。


「この作戦において一つ、気をつけておかないといけないことがある」


「何だ?」


「こいつに遭ったらすぐに退け」


「こいつは……」


 男はある写真を地図の上に置く。

 写っている人物は皆無だった。


「皆無か、でも何でだ? こいつがこの戦いに加わることがあるのか? それなら俺たちじゃ勝ち目はないぞ」


 輪廻はすぐに皆無の脅威を一言で伝える。

 男は指で数えるようにして人差し指を立てる。


「理由は一つ、皆無はこいつら班の先生だって聞いている。こいつは仲間想いだ。来る時は来るぞ」


 輪廻は話を考慮する中、獺酩は違う意志を見せる。


「そんなやつ、返り討ちにしたらしまいじゃないか」


 その態度に男は真剣な表情にして止める。


「あんまり甘く見ない方がいいよ、じいちゃん。これは注意と言ったが、警告だ。皆無とは戦うな」


 夢の結界が壊れて数分、獺酩は空を見上げて頭の中で葛藤する。


(あいつが皆無か。噂通りの強さじゃのう。だが、今のわしに勝てないことはない。戦うか? いや、ここはあいつの言う通り退くか?)


 獺酩は横たわっている零たちを見て、迷いの末決断する。


(惜しいがその命いただくぞ)


 獺酩が零に近づこうと浮遊を解除した時、森の奥から白光りに輝く一本の矢が狙う。

 獺酩は間一髪のところで避けて、もう一度浮遊する。避けた矢は後ろで爆発して木々を薙ぎ倒す。


「オマエか、結界の術者は?」


 矢が飛んできた方向の森から現れたのは冬なのにも関わらず半袖を着て左手にはグローブをした皆無だった。


「ほっほっほー、お主が皆無か」


「見ない顔だな。新種か?」


 皆無は零たちを背にして守りを見せる。


「こう見えてわしは百年と生きた、歴のある悪魔じゃわい」


 皆無はフッと笑う。


「そうか。百年も生きて、その魂量があって、俺たちに知られていないってことは……オマエ、逃げってばっかだろ」


 その言葉は獺酩の気に触り、表情が固くなる。


「お主、口の聞き方がなっておらんようじゃのう」


 皆無は獺酩の態度に逆ギレする。


「俺の生徒に手を出しといて、誰が敬語なんか使うかよ」


 獺酩は何か思い出したかのように固まる。

 そして、一言呟く。


「生徒……」


 獺酩の呟きは皆無には届かない。


「何か言ったか?」


 獺酩は顔を先ほどより固くさせる。


「生徒など悪魔と同類じゃ」


 獺酩は怒りのオーラを村を囲むようにして放つ。

 皆無もオーラを放つが、先ほどの輪廻との戦いよりは強さを失い、皆無のオーラが徐々に押される。


「やるじゃねぇか」


(こいつ、先ほどより魂量が減っている。輪廻との戦いで消耗しすぎたか。今のわしならこいつに勝てる)


 獺酩は魂を凝縮させて塊を作り上げる。それは次第に膨らみあがり、月を覆う。その膨大なエネルギーから生み出される圧は空気を揺るがし、林を騒がせる。

 皆無は右手に魂を練り上げて壊を放つ準備をする。だが、皆無の練り上げた魂量と獺酩が凝縮させた魂量は誰もが見て取れる圧倒的な差だった。


「皆無、お主とわしのこの魂量の差は何かわかるか? 年の差だよ。わしはお主より長くこの地に立っている。生きる術を多く知っている。そして、憎しみも多く知っている。負けるわけにはいかないのじゃ。皆無よ、ここで散れ」


 獺酩は掌にある巨大な球体のエネルギーを皆無に向けて投げる。エネルギーは地に迫るほど圧を強く押し付けてくる。地面は少しひび割れ、林は騒ぎを増す。

 だが、一人の男だけは表情も何も変えないまま立つ。右手に溜めていた壊も下に下ろしたまま、ただ立つ。

 そして、皆無の目の前までエネルギーが来た時、爆発は起きる。

 数秒間、村は嵐の中へと包み込まれる。そして、急に静まり返る。

 獺酩は気持ちが落ち着き、スッキリする。

 戦いは終わったかのように思われたが、嵐は二度吹き始める。


「一分……一秒……俺を凌駕できると思ったか? 年ボケか? まあ、仕方ない。逃げてばっかの奴にはわからないだろうな。超えられない壁に当たっても、必死にしがみついて逃げずに立ち向かっていく奴の努力なんかよ」


 皆無は左手から魂の盾を張り、獺酩のエネルギー弾を防ぎ切る。

 獺酩は怯える。

 皆無の右手にある壊は魂を増幅させる。それは先ほどの獺酩のエネルギーより大きい魂量で、林や獺酩の心を騒がせる。


「ここで散るのはオマエだ!」


 皆無は右手を獺酩に向けようと腕を上げるが、通り過ぎて真上に壊を放つ。

 獺酩は輝く壊に目を奪われる。気づいた時には皆無は消えていた。

 皆無は壊を追うようにして、空を飛ぶ。そして、左手で放った壊を掴み、狙いを定める。


「流星!」


 皆無は獺酩目掛けて一直線に流星を投げ込む。

 獺酩は流星のスピードについていくことができず、皆無の攻撃を直で喰らう。

 獺酩の体は弾け飛ぶように肉体が痺れ、魂にも響き渡る。獺酩は叫び声を上げる。

 獺酩の体は徐々に朽ちていく。

 獺酩は浮遊できなくなり、地に落ちる。

 そこには覚めないでいる零が数メートル先にいた。


(こいつだけでも……道連れに)


 獺酩は零を喰らおうと手を伸ばすが、届かない。

 すると、零は寝言をぼそっと言う。


「先生、ありがとう」


 獺酩は過去に誰かが言った言葉を思い出す。

 それはとても暖かく、獺酩の心を包み込む。


(あーー、忘れていたのか。この暖かみを)


 獺酩は月と共に静かに消える。

 そして、朝日と共に皆無が零たちの前に現れる。


「オマエら、本当によく頑張った」

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