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天の先に  作者: 真
第1章
12/21

初代の歴史

「今から話すのは百年以上前の話だ」


 嵐の前兆かというほどの生暖かい風が吹き荒れる中、零と皆無の周りだけは静寂な空間が保たれる。まるで、目の中心にいるように……。


「昔は天敵というものがなく、悪魔が暴れ放題の時代があった。ポリスはクリミナルと悪魔の両方を敵に回してこの世界を守っていた。昔はまだ、悪魔の発生が少なかったおかげか、対処が追いついていた。だけど、近年になるにつれて悪魔の発生が増加していき、ポリスは手に追えなくなり、国が崩壊しかけていた。そこでポリスと政府が緊急で考えて設立させたのが天敵だ。だが、この天敵というのは悪魔やクリミナルからしたら、突如現れた対抗者でしかない。特にクリミナルには悪魔と一緒につるんで動いている輩もいた。そいつらは当然、天敵を潰しにかかった。その時の天敵は創られたばかりだったせいか、弱者ばかりだった。その中立ち上がったのが初代天敵という異名を持つ者だった。初代天敵は無能力者で特別強いというわけでもなかった。どんだけ自分が弱いか分かっていても刀を振り続けた。初代天敵は諦めなかった。そんなある時だ。その者はある悪魔を仲間につけた。その悪魔は契約の悪魔だ。そして、初代天敵と契約の悪魔は十数年後にここにある空を創った。それは革命と言ってもいいほどの実績で、天敵は徐々に力をつけていった。だが、それとともに初代天敵はこの世を去った」


 零は微かに勘づく。


「……まさか、悪魔に……?」


「まあ、半分正解だ。原因は契約の悪魔にある」


「?!」


 零は半分という言葉に驚く。

 その顔を見た皆無は天を指差す。


「まず、何故この空には特別なシールドがあると思う?」


「何故って……外部からの侵入を防ぐため」


 零は当たり前そうに言う。


「そうだ。それを考えたのは初代天敵だ。初代天敵は契約をしたんだ、悪魔と」


 零はまた勘づく。


「ということは……」


「あー、悪魔は空を創るかわりに初代天敵の命を要求したんだ。そして、初代天敵は契約して、空と引き換えに消えた」


 皆無は俯いて冷たい息を吐く。

 零はいつも通りに疑問を抱く。


「その悪魔は今もこの地球のどこかに?」


「今は時空の間に保管されている」


「時空の間?」


「時空の間は誰も行くことができない場所だ。たった一人を除いて」


「一人って……」


「織姫管理長だ。歴代管理長だけがその場所に行くことができる」


 零は疑問を一つ一つ解決していくが、疑問は消えない。


「初代天敵は何でそんな無茶をしたのでしょうか?」


「さーな」


 皆無は縁に座り込む。それに続いて零も腰を下ろす。

 皆無は話を続ける。


「と、本題に戻ろう。それにより天敵の力は増す一方、悪魔やクリミナルたちは天敵への対策方法を探し始めた。その例として、その時代に創られたものがある。それは魔界だ。悪魔は元々一般人やポリスには簡単に負けるような奴らではなかったため、単独行動が多かった。だが、天敵の出没により下級の悪魔がどんどんと倒された。そこで、悪魔たちが考えたのが魔界だったんだ。クリミナルたちもいろんな対策をしてきたが悪魔みたいに上手くはいかなかった。そして、月日が経ち、約三十年前のことだ。クリミナルが動き始めたんだ」


 皆無は遠い時間を思い出すかのように空を見上げて語り出す。


「最初は一本の通報だった」


『山荘近くの道路で悪魔が暴れているとのことだった。急いで五人ほどの天敵がその場所に向かったのだが、おかしいことに数時間経っても帰ってこない。そのため、次は二十人ほどの天敵を引き連れてその場所へ向かった。すると、三十分もしないうちにまた通報が入った。それはさっき行った二十人の中の一人からだったらしい』


 電灯、建物の灯り、そして一際輝き続ける満月だけが外を静かに照らす。そのような静まり返った空気の中、突如として再び音が鳴り響く。


「今日は騒々しいな」


 一人の天敵が受話器を取る。


「応援を呼んでくれ! 早く!」


 取ったと同時に大声が空気を伝う。

 急な大声に驚いた一人の天敵は何か起きたことを察してすぐに応答する。


「どうしたんだ、一体?」


「獣が……獣が暴れてる」


 電話越しから聞こえた内容は一人の天敵を困惑させる。


「何? 獣だと。二十人も行ったんだ。大丈夫だろ」


 冗談だと感じた一人の天敵は軽い口調で話す。

 だが、電話の相手は焦る一方で声がますます荒れていく。


「いや、違うんだよ。もう三人……いや二人になっちまった。やばい。早く! 早く! 応援を……応援呼んでくれ」


 その瞬間、電話越しで獣の声が響き渡り、ノイズが走る。

 一人の天敵は受話器を落としたまま、その場で硬直する。


『その後すぐに応援を五十人ほど行かせたらしいが、帰ってきたのは十人を切っていたそうだ。それ以外は全員死んだとの報告が挙がった。その中、生還者の一人がおかしなことを言っていたらしい。それは、"あいつは人間だった"と。後のポリスの調べにより獣と言われているモノは本当に人間であることが発覚した。大きなボス関連のクリミナルが薬などで暴走したかと思われたが、この人間は戸籍すら登録されていなかったため、誰かわからないまま事件は幕を下ろした。この事件は天敵やポリスの中で大きな話題になった』


 零の疑問はまたも増える。


「一体何が?」


「世界にはこういうことをする奴もいるんだ。それはアダプター=改造人間の生産だ」


「改造人間……」


 零はその言葉に動揺する。

 皆無は零の反応を見て二つの感情を読み取る。それは好奇心と恐怖心の二つ。

 皆無は零の好奇心による質問がくる前に話始める。


「それが分かったのは十二年前の出来事だ」


「十二年前って……一体?」


「十二年前……この空に奇襲がかけられた。シールドが壊され、十人ほどの白服の者たちが空に侵入してきた。そいつらはひたすら建物や山を荒らした。天敵たちは抵抗するも歯が立たない。圧倒的な力の差が目の前に立ちはだかった。そいつらは二時間ほどして空から消えた」


 零は事態に気づく。


「今回の事件と似ている」


 皆無はその言葉の応答にグットのサインをする。


「で、その時織姫管理長が戦った相手がある魔道具を落として退却したらしい。その魔道具はある者を封印していた。それが改造人間だったんだ。改造人間はまだ幼い子供であったため、天敵が預かることになった」


「その改造人間はどこに?」


 皆無は少し黙るが、口を開く。


「今はこの世界にいない。ある出来事によって命を落とした」


 皆無は顔を曇らせる。


「そう、ですか……」


 零も心が静まる。

 冷たい空気は雰囲気ごと包み込んでいく。


「でだ。今回の奇襲も白服の男が三人侵入したとの報告が挙がった。そして、白服の男が漏らした発言により、魔界で見つかったあの人間も改造人間である可能性が高い」


「そんな」


 零はあまりのイレギュラーさに驚く。

 皆無は反対に笑みを浮かべる。


「まあー、大丈夫だ。俺たちが面倒を見ることになったから」


「えっ、それって……」


 零は驚きの連続で口が無意識に開きっぱなしになる。


「四班の新しい仲間だ。今は厳重に警備がついて保管されているが、後々四人の班が出来上がる」


「そうなんですか」


 零は徐々に心と顔を明るくさせる。

 そして、零以外にも明るさが灯る。後ろから追いかけてきた影月とるなが話に入る。


「また賑やかになりそうだね。先生」


 嬉しそうにるなは皆無に笑みを見せる。


「あー。オマエら四班はまだ始まったばかりだ。気合い入れていくぞ!」


「「「おーー!」」」


 気合いの一声は空の空気を変えて明るくする。

 四班たちのチームワークはより一層強くなる。

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