元パーティメンバー。
「――おや。ひとりかい?」
裏路地のあたりで、カエルの干物展とかいうマニアックなものをぼーっと見ていると、そう声をかけられた。振り返ると、特徴的なアッシュグレーの髪色をした、ウルフカットの見知った女がそこにいた。
屈指の大ギルド、ディルク探索団の若き長――ミラだ。
「珍しいね。最近はずっと、三人でいたみたいだから」
「そういうおまえこそ、ひとりか?」
「見ての通りだよ。私だって、たまには一人でいないと息が詰まる。こんな時くらいは、ね」
ミラは本音を見せて、それから爽やかな笑みを浮かべた。
「でも、キミなら構わないよ。良ければ一緒に回りたいところだけど」
「やめとけ」
「ふむ……そうか。そうだね」
心底残念そうな顔を見せるミラに、気にすんな、と肩を竦めておく。
俺とそこらへんを彷徨いて、万が一それを探索団の奴らに見られでもしたら立場上面倒なことになるからだ。……って、思春期の男女かよ。馬鹿馬鹿しい。……いやまあ馬鹿馬鹿しいけど、それが社会でもあるよな。
「つか、すげえ楽しんでるな!?」
今更ながら、ミラの手持ちを眺めて呆れる。甘そうなもの辛そうなもの、串もの焼きもの蒸しもの、使い道がありそうでなさそうなもの、様々なものを溢れんばかりに両腕に抱えている。
「ち、違うんだ、これは。なぜかいろいろもらってしまうんだ。無碍にもできまい」
「人気者っていうか、そこまで来ると可愛がられてる孫じゃん……」
「なんにせよ、気持ちは気持ちだ」
捨てられてるんだか置いてあるんだか分からない、そこら辺に転がっていた木の椅子に座る。
「あ、そういえば、昨日リズさんと知らない女の人が一緒に迷宮にいるのを見たよ。誰……というか、なにをしているんだい?」
「あー……まあ、まあ」
「なにやら泊まりこむ、というようなことを言っていたが……」
「まあ、まあ……」
実は“不死の霊薬”を作ってるんだよね~! ……とは言えず、ごにょごにょと誤魔化して、
「……ディルクさん、元気にしてる?」
煮豆がたくさん詰まっている、名前の知らない料理を貰いながら俺は訊いた。
「ん? ああ、健康だよ。毎日退屈そうだけど。……あ、そうそう。たまには顔見せろって言ってたよ」
「……いやだよ。いろいろややこしくなるし」
とは言いつつ、意外だった。引退してギルド運営の方に回って以来会ってないが、そんなことを言ってくれるのか。
社交辞令だとしても、それでも結構嬉しい。
「それと、『どっちが本命なんだ』って」
「は?」
「リズくんと、ユイくん」
「ああ……あの人ってそういうところあるよな……すぐ恋愛に結びつける……」
そのくせ、ギルドの方針は「恋愛禁止」だったはずだ。合理的なのだ。
「ちなみに、私もすごく気になっているよ」
「おまえもそういうとこあんだよな……」
「あ、誤魔化した」
普段あまり表に乙女要素を出せないせいか、こういう話をやけに引っ張ってくる。ミラはやたら周りのイメージを大事にするというか、まあ、格好つけたがりなのだ。自分の爽やかで中性っぽいのが求心力の要だと思っている節があるんだよな。
「ま、なんにせよ、良かったよ。ジンに仲間ができて……」
ひとしきり笑ったあと、勝手にしみじみとしている。なんかそれマックも言ってたし、一ヶ月位前にリズと会ったときも言ってた気がするな。
やたらと気にかけられててこそばゆい感じ。ミラのほうが年下なのに、と言いたくなるのを、俺は砂糖まみれの豆と一緒に飲み込む。




