記憶と回想。その2
――楽しいことをしよう!
というユイの実にざっくりとした提案で、夏休みの間、俺たちはいろいろなことをすることになった。
いろいろとは言っても、大した中身があったわけじゃない。
ただ、迷宮に行かず、三人で一日を過ごすのはけっこう新鮮だった。
「楽しかったね」
「まあ、服選びとかは結構な苦行だったけどな……あれ俺いらなかっただろ」
「ジン、すごく帰りたそうなカオしてたもんね」
くすくすとユイが笑っている。
「気づいてたなら帰らせてくれぇ……」
「三人で過ごすのが大事なの。ってか、女の子は服見るのが一番楽しいんですけど?」
それはまあ、そうだろうけど。
女どもというものは服選びが本当に好きだから……。
……いや、果たしてそうか?
「リズもかなり帰りたそうだったけどなあ! たすけて……って目で訴えてきてたし!」
ユイにされるがまま、着せ替え人形にさせられていたリズの表情を思い出す。俺は「かわいそ~」と思いながら静かに黙祷することしかできなかった。絶対に巻き込まれたくなくて……。
「だって、ローブ以外の服持ってないって言うんだもん。元が可愛いんだからもっと可愛くなるべき」
べき、と力説されても。
「そのリズに対する謎の改造意欲はなんなの? そういや髪も切らせてたし」
「毛先整えたくらいだけどね」
「ちなみに、そのときも『たすけて……』って顔してたからな」
苦しんでいる仲間を見てることしかできなくて、俺は……俺は……!
「でもジンは爆笑してたじゃん」
まあね。
正直、リズが髪を切られるのを見るの、めちゃくちゃ面白かったんだよな。
ひたすら心を開かないリズ、尽きていく会話、漂う無言に耐えきれず、逃げるように手を早める理容師……。
でも、地獄のような時間の後、髪をちゃんと整えた彼女は、どこに出しても恥ずかしくない出来映えではあった。
……もっとも、すぐにフードを被ってしまい、ユイと理容師がいくら説得しても脱ぐことはなかったが。
「てか、ジンもどこか行ってきたら? 休憩がてら。お店は私が見とくし」
「いや、俺は別に――」
「いいからいいから。お客さんもいないし。ほらっ」
背を押され、追い出された。
特に見ておきたいものもないし、出回りたい気分でもない……が、まあ、せっかくの気遣いだ。いろいろ回ってみるか。




