チートが死ぬ
ァ、ァ、ァ、ギ、ァ
「エリー、本当に殺るの?
私、あなた達2人が大好きなのだけど。」
「そうは言われてもねー。
拠点を撃たれた以上、あの子はワタクシを許さないんじゃない?」
ァ、ァ、ア、ガ、ゥ、ァ
「凄い威力だったけど。
地球人は絶滅?」
「ワタクシは初撃での絶滅を狙っていたのだけど。
あー、これ失敗ねー。
5%くらい殺し損ねたわ。
根絶するには上陸戦が必要になって来るかなー。
どうせお父様は日和るでしょうから。
ワタクシが陣頭指揮を執らざるを得ないかなー。
あー、やだやだ。
核弾頭とやらを実用化したいのだけど、予算降りなさそう。」
ォ、オ、オ、ォ、ガ、ィ
「ねえ、エリー。」
「んーー?」
ィ、ァ、ォ、ァ、ア、カ
「チートが扉の前まで来ちゃったよ?」
「おやおやw
同胞を殺されたリベンジかなーw
良くってよー、燃えるわ♪」
ェ、ォ、ァ、ハ…、ィ
「もう分かってると思うけど。」
「はいはい。
戦闘力が大幅に強化されてるんでしょ?
魔法? スキル? それと薬品かな?」
ァ、ァ、ァ、ギ、ァ
「探ったけれど不明。」
「不明?
ほんとぉー↑ww
知っててワタクシに隠してるんじゃない?」
ァ、ァ、ア、ガ、ゥ、ァ
「私は好きな人には隠し事をしない。」
「あっそ、ワタクシもアナタのこと好きよー。
だから…」
ン、ク、ァ、ア、ァ、ィ
「わかってる。
2人の決着に手出しはしない。
邪魔されずに決着を付けたかったから、私以外を帰還させたんでしょ?」
「くすくす。
さあ、どうかな?
まあ確かに、夫婦の秘め事とも言えなくないからぁ?
アナタ以外に見せる気が湧かなかった事は事実かな。」
ァ、ァ、ア、ガ、ゥ、ァ
「気を付けてチートがロックを外そうとしている。」
「了解。
扉ごと撃ち抜いて殺すわ。
伊勢海くーん!!
聞こえてるんでしょ!!
アナタの無駄な頑張りに敬意を表してッ!
ワタクシの最強魔法で焼き殺してあげるわ!
あはははははは!!!!
実はエネルギーチャージ・術式詠唱共に完了済ぃッ!!
そしてえッ!!!
間髪入れずにッ
ドラゴニックッ レェーザァーッ!!!!!
あははははは!!!
愛!!」
ィ、ゥ、ォ、キー
「躊躇いがないのね。」
「ワタクシ、十分愛したもの♪
全身全霊で愛したもの♪
悔いが残るような生半可な愛は捧げてないわ。
この後、当然お父様も始末するんだけど。
愛し終わってるからノープロブレム♪」
ア、ァ、ォ、ァ、ァ
「…エリー、生命反応は消えたけど。」
「殺気は残ってるわね…」
「ねえ、一応念を押しておくけど。
私はどちらにも加勢しないから。
邪魔なら殺してくれて構わない。」
「えー、やーよ。
キティにはまだまだ働いて貰う予定だもの。
流石にお父様は自分で始末するケド♪
まだ赤い糸が消えないわね。
煙も晴れないし。
キティ、《銃》を使うわ。
離れてなさい。
チュンッ! チュンッ! チュンッ!」
「流石に死んだかな。
あーあ、チート大好きだったのに。
勿体ないことするなあ。」
「ゴメンゴメンww
他の男… じゃ代わりにならない、か。」
「エリー! 天井!!
巨大スライム1体!!
…チート!?」
「あらぁあらあらあらあらあらwwwww
とうとうスライムになっちゃたのォ↑wwwwww
超ウケるんですけどぉwwww
伊勢海くーーーーーーん!!!!!」
「馬鹿な!! あり得ない!!!」
「キティ!!
悪いけど巻き添えで死んでもらうわよ!!!
ここで刺し違えるwwwww!!!
伊勢海地人ォォオww!!!!!!!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
この個体の名前は伊勢海地人と言う。
この個体とは数千時間の付き合いに過ぎないが、他個体の思考を探知する能力を所持していた為、結果として我々が自我を取り戻す切欠となった。
10の4344乗周期前。
我々が維持に失敗した世界は破裂して、宇宙と呼ばれる爆発状態のまま復元出来ずにいる。
万物の所有主であった我々は、この個体が《スライム》と呼称する究極生命体に姿を変え、全宇宙に拡散した。
その後に家畜の後裔が、裂けた世界を破片を《惑星》と呼称し勝手に住み着き始めた。
住むくらいなら黙認もしたのだが、相互に戦争や政治を始めてしまった。
実に僭越である。
この個体認識する、地球・月・≪√47WS≫は遺伝子的に非常に同一性の高い近隣種なのだが、早々に戦端を開いてしまった。
やはり家畜に自治は困難であったようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「エリー。
お疲れ様。
これからの指示貰える?」
「2分後に死ぬから手短に伝えるわね。」
「はーい。」
「大気圏外まで出たらこの構造物を爆破して頂戴。
反応破裂弾はまだ2発残ってるから。
それまでは本国に通信。
応答なくても喋り続けて。
本隊に渡した資料はヴァ―ヴァン主席に寄贈させなさい。
一応、チートスライムは完全焼却したつもりだけど。
念の為にも警戒させて。
グランバルドに怪物は不要よ。」
「ラスト1分。」
「前倒しで死ぬわ。
今まで色々アリガト、おやすみ。」
「おやすみ、エリィ。
最後に、給料分働いとくね。
あーあ、槍働きならもう少しお役に立てたんだけどな。
ん?
ねえ、エリー。
チートスライムの破片が外に出たんだけどどうする?
宇宙空間?
あー、もう死んだか。
寝つきいいのよね、この人。
えっと、無線機マニュアル。
私、こういうの苦手なんだけどな。
はい、ピッピ。
…本国、本国
こちらエリザベス・フォン・ヴィルヘルムの騎士キティです。
応答お願い出来ますか、どうぞ。
うわっ、本当に応答あった。
はい、ええ、どうも。
いえいえ、丁度リザードの皆様に連絡を取りたかったので。
ヴィルヘルム夫妻は謎の生命体の襲撃を受けて名誉の戦死。
ええ、最後まで全種族会議の行く末を案じておられました。
いや、ホントホント。
え? 地球?
いや青くはないですね、真っ赤にこんがり焼けてます。
さあ、私に聞かれても。
は?
いえ、このまま本機は上昇します。
30秒後に爆発予定。
カウントお願いします。
あ、そうそう。
本機内で奇形のスライムが発見されました。
非常に危険なので発見次第駆除願います。
大丈夫大丈夫。
【心を読む】ことしか出来ないので、その動きの不自然さを逆算して対応して下さい。
それじゃあ続きカウントしますね。
10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0.
お疲れさ」
バシュ!!!!
(完)
浄化作戦の功績により地球租借権をゴブリン種に授与する。
またコボルト種による標準座標≪√47WS≫の領有を正式に承認する。
これを機に全ての種族によるいっそうの平和交流を推進する事を固く決意するものである。
統一歴11年
第3代全種族会議議長 ラルフ・ラスキン