表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
135/136

チートでジェノサイドを敢行する

レザノフと反対側にどんどん歩いて逃げる。

十中八九、あの男は死んでいるのだが、最期の一撃で道ずれにされるのが怖いので、警戒は解かない。




30分程、何気なく歩いた所で秋田犬がやってきた。



【おう、生きとるか?】



第一声がこれである。

どうやらコイツなりに俺を助けに来てくれたらしい。



『まあ、一応生きてますよ。』




【ん? 何かキミ死んでない?】




『幾つかの体機能は残してます。

特に人格だけは死守しているので。』




【ん? 

人格ぅー?

そうかなー?

キミ、そんなキャラだったか?】




犬の分際で秋田犬が何度も首を捻る。

どうやら俺の同一性を信じてくれないらしい。

まあ、これだけ身体を弄繰り回せば、人格に影響ない訳ないよな。




【あ、そうそう。


司令部からの確認なんだけど

約束は守ってくれるんだよね?】




『ええ、俺の意志に変わりありません。

標準座標≪√47WS≫と呼ばれている惑星に関しては、犬種の皆様に贈呈します。


但し…』




【わかっとるよ。

ちゃんとジェノサイドすればいいんだろ?】




『ええ。

そっちに渡したゲートの先に別世界が広がっていた場合の話ですが。』




【とりあえず部品を持って来るように指示されとるんだ。

見てくれ。】




そう言うと秋田犬は口内に含んでいた物体を吐き出した。




『これは… 指?』




生物の指らしき物体が転がる。

人差し指のような形状をしているが、関節が4つある上に妙に長い、おまけに淡い蛍光色だ。

地球人の指ではない。




【こういう身体の連中が半浮遊状態で騒ぎながらウロウロしとった。

私も見たが、あきらかにこの世界の生き物ではない。


勿論、ゲートの出入り口は完全制圧済。

キミのGOサインを待ってる状態。】





『ありがとうございます。

早速攻撃に移って下さい。

契約通り必ず絶滅させて下さいね?


そうすれば、その惑星はあなた達犬種のものです。


一応、追加の指示書を書きますので、コボルト参謀本部に渡して下さい。

星間連合なる組織が接触してきた場合の対処マニュアルの続きです。』





俺は手帳を1ページ千切ると、リザード語で大まかに知り得るネタバレを記した。





【ふむ。

責任を持って復命する事を約束する。


じゃあな。】




秋田犬はしっかりと頷くと元来た道に消えた。

これで1人に戻った訳だ。

異世界に来てから多くの人と縁を結んだにも関わらず…

最期に言葉を交わしたのが犬というのが、如何にも俺らしい結末である。





◇ ◇ ◇




標準座標を皆殺しにする方法をずっと考えていた。

当初は《惑星相手の戦争ならビームなりミサイルか?》と考えていた。

だが、相手が宇宙船やらワープ技術を保有している以上、それらの現代兵器で有効打を与えるのはほぼ不可能事であると、すぐに思い直す。


そんな俺が発見した最強の兵器が《コボルト》なる軍隊種族である。

人間種をスペック面で遥かに上回るリザード種を全戦線で一蹴し続けてきた《コボルト》。


彼らを一個大隊でもレンタル出来れば惑星くらいは絶滅可能なのではないか、と考えたのだ。

少なくとも地球にあんな化け物が襲来すれば、人類はあっさり滅ぼされてしまう気がする。

(銃弾をうっかりキャッチしてしまうような連中に抗える生物が地球に存在するとは思えない。)


クレアの口添えもあって、コボルトは種族を挙げて標準座標へのジェノサイドを敢行してくれる事になった。

勿論、彼らには大金を払ったし、他種族や星間会議から糾弾された場合の想定問答集も提供済である。


彼らはリザード種との戦争が収まってしまって、不安症に陥っていた。

楽しい楽しい軍隊生活が終わってしまう事を危惧しているのだ。


なので、俺がジェノサイドの為の傭兵契約を持ちかけた時、彼らは物凄く嬉しそうな表情で話に乗って来た。

彼らの笑顔があまりに獰悪だったので、改めて『コボルト怖えー。』と素直に思った。



標準座標≪√47WS≫の根絶は、スペック的に俺かコボルトにしか成し得ない。

本心を言えば俺が奴らの本星に乗り込みたかったのだが…

所詮は単騎だしな。

絶滅まで手が回らない恐れがあった。

消去法でコボルト攻撃を選んだ訳である。


ああ、アイツらの死に顔を見たかったな。

まあいいや。

≪√47WS≫よ、敵は死ね理論に基づいて速やかに死ね。


はっはっはww





◇ ◇ ◇




さて、赤い糸の先でも戦闘が始まっている。

明らかにベスおばが戦闘を行っている気配がある。

糸の動きから剣のような物を振り回している事がわかる。

標準座標と鉢合わせた?

よくわからん。



形式的にモールス信号で《御武運を》と送るが、怒鳴る気配が返って来る。

ww

アイツ、邪魔をされて怒ってやがるww




奴との距離は30キロ程度。

あの女は乗り物か何かを確保しているのだろうか?

先程から移動が妙にスムーズだ。



俺も形態を変えれば時速60キロ程度で走行可能なのだ、それを行えば不可逆的に意識が消滅してしまう。

目的達成まで自我はギリギリまで温存しておきたい。

コボルトは十分以上に信用に足るのが、頭はやや足りない。

標準座標≪√47WS≫の絶滅を見届けるまでは自我は消したくない。





◇ ◇ ◇




不意に視界が開けて、はっきりと人工物で構成された区画に辿り着く。

陳腐な例えだが、SFアニメに出て来るような超未来的な風景である。



『おお、マジかー。』



思わず感嘆する。

地球からほんの近くの月の外殻に、こんなSFゾーンがあるというのは改めてショックである。



僅かな生活臭さえ感じるエリア。

精密かつ機械的な部屋が並んでいるのだが…

部屋全てが見事に掠奪されていた。



そこに設置されていたであろう物品が強奪された形跡がある。

ベスおばめ、最低でも1個小隊を連れて来ているな。




それにしても、興味深い区画だ。

これが標準座標≪√47WS≫の文化なのか。

壁面一面に文字の様な模様が刻まれていたので、駄目元で【心を読んで】みる。




【家畜観察マニュアル】




あ、マジか。

いきなりそれか…


ああ、この壁がマニュアルになってる訳ね。

軽く流し読みするだけでも




【ここは中継点なので、すぐに収監すること。】

【性交も含む接触厳禁】

【アラームは絶対にミュートにしないで下さい!】




などと読み取れ、この区画のポジションが鮮明に理解出来る。

…途中、明らかに台所っぽい小部屋があったのだが、案の定戸棚(?)が荒らされ、食べ物のカスが床に散乱している。


…あの女、喰ったのか?

中毒とか怖くないのか?




いつの間にか赤い糸の距離は数キロまで近づいている。

ベスおば一派の奇襲が怖い距離だ。

特にゲレル・キティ・褐色爆乳姉妹。

あの辺の襲撃があり得る。


不本意だが、自我をもう1割だけ放棄し…





身体機能をキョウ化する事に成功し…




ああ、人間の原形が保ちにくくなっテいるな…





◇ ◇ ◇




見覚えのアる風景。

あ、最初俺が来タ場所だ。

神野郎の奴に思いっきりネタバレされたの懐かしいな。

懐かしかったので、あの時は見れなった神ゾーンを隅々まデ見物する。




見覚えのある神様風の着ぐるみ。

リザード風の着ぐるみや、ゴブリン風の着ぐるみもある。


ああ、種族毎に神性を感じさせる外皮を用意して…

それで信託を騙って蟲毒壺に放り込んデいたのか…



問題は…

謎の生物の死体が転がっているコとだ…

細長い四肢に、蛍光色の肌。

間違いない、さっき秋田犬が見せてくれた指と同種。


しかも、その死体には執拗に拷問さレた形跡がある…




標準座標≪√47WS≫




あの時の神野郎と同一人物だロうか?

いずれにせよ、もはや確かめル術はない。





参っタな…

一年以上掛けた準備が全て無駄にナった。





神野郎に対してはとってオきの決めセリフを…





…あれ?

セリフ?










…。





あーーーーーーーーーーーー。





俺は…   ●ート。




まだ二本足で歩けテいる…




歩く?




何故?







どうして?





何を?





赤い糸…





何故…  思考が溶ケていく…?





脳味噌までスライムに置換しタから?





よし、これで頭部を撃たれても無敵。





お、オデは…





赤い糸の指し示ス先に歩く。





いつのマにか、





とっくに、





背景には宇宙が広がっている。




ガラス?




モニター?




それとも宇宙にはみ出しちゃった?




赤い糸。





ふと、右手を見ると青く大きく輝く…




美しい…




あの巨大な水の塊には、スライムが何体泳げるのだろう…






「あはははwww

これがアイツの言ってた波動砲ねww

まさか翻訳水晶が一発で機能してくれるなんて思わないじゃなーい♪



なるほどねーーーwww

ここから地球を狙っていた、と♪


ここら辺、ワタクシの読み通りってトコかしら♥


ゲレルー。

通信回線はそのまま開いててね。


あの糞星を焼き尽くしたら、すぐに地上に戻るわ。

今日中にお父様の部隊が来るから艦隊は沖に逃しておいてね。」





赤い糸の先から…

何かが聞こえる…



何だ?

思い出さなきゃ?


思い出す?





「はい!

それではーー!!!


憎き日本よ、敵は死ね理論に基づいて速やかに死ねーーーwww」





瞬間、轟音…

真っ赤な光が青く美しい星を貫いた。





耳障りな笑い声は赤い糸かラいつまでも響き続けていた。

【伊勢海地人】


資産 忘却済

地位 忘却済


享年 21歳

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 自分の手でというのは叶わなかったけど、憎い相手を倒すことには成功して良かった。 地球ぶち抜かれたけどw [一言] 終わりか・・・と思ったらまだ続くんですね。待ってます
[良い点] こんないいところで! [一言] 次は現行作も読ませていただくぜ
[良い点] とても面白くて、続きが気になります!エッこんなところでーーー!! [気になる点] 主人公と日本がどうなってしまうのか ベスおば何やってんのわーー気になります! [一言] とっても面白かった…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ