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チートが災いしてキチガイ認定される

『早急に狂戦士バーサーカーを発見しなくてはならない!

どうか君達にも協力して欲しいんだ。

この世界を守るために!』



翌朝、目を覚ました俺は集まった群衆に真摯に呼び掛ける。

が、極めて反応が薄い。



さては昨日の四天王自刎事件をまだ引き摺っているのか…

おいおい。

相手側がクレームを入れてくるまでは、こちらからどうこう言う問題でもないだろう。

そもそも、俺は被害者だぞ?

一方的に粘着されて、裁判紛いの扱いを受けた。

寧ろ、オーク側から俺に詫びを入れに来る場面ではないか?

いや、俺はそんなに怒って無いけどね。

ただ、アイツらに色々思惑を潰されたのが大打撃だっただけでさぁ。




「あのさあ、チート。」



『何だいヴェギータ。』



狂戦士バーサーカーなら昨日見つかったじゃない?」



『おいおいw

あれは誤作動だよw』



「いや、でも…

あんなデカい声で…

チートが狂戦士バーサーカーだって…

診断されてたじゃないか。

その所為で四天王が切腹しちゃったんだしさ。」



『あれは誤作動だよ。』



「誤作動なの?」



『だって、ゲートが出現してないもん。』



「ああ、光に包まれた扉が出現するんだったね。」



『それに俺、全然キチガイじゃないし。』



「ん?」



『いや、そこで言葉に詰まるなよ。


ねえ、そうですよね!

ギャラリーの皆さん!

俺が狂戦士バーサーカーだなんて笑っちゃいますよねwww』



だってそうだろ?

ここまで読み進めてくれた君なら理解してくれる筈だ。

この世に俺ほど理性的な人間は居ないし、その俺が狂戦士バーサーカーな筈がないよな?


何故か群衆が目を逸らすのだが…

まあいいだろう。

愚民如きに英雄の在り方なんぞ理解される訳ないのだ。




『なあ、ギーガーからも何とか言ってやってくれよw

同じ釜の飯を食った君なら解るだろ?

俺のどこがキチガイなんだってなあww


オークの連中がどうして俺の能力を誤解しているか理解出来なかったんだけどさw

ポンコツの診断機を使ってるから、間違えちゃったんだろうよw』




「…チート。

ここから先は水掛け論になっちゃうからさ。

スキル診断してみない?」



『えー?

必要ないだろw

昨日、診断したしww』



「でも、その診断は間違いなんでしょ?

君に言わせればさあ。」



『まあ、ね。』



「じゃあ、折角リザード側の神像もあるんだし。

そっちでやってみない?」



『昨日は有耶無耶になったんだけど。

俺のスキルは【心を読む】ことだよ?

皆の前でそれが晒されるのって、結構キツいっていうか…』



「チートの言い分は解らないでもないけど。

でも、それじゃあ皆納得出来ないよ。

大体君、オークの神像からは狂戦士バーサーカーって診断されたじゃないか。

心なんか読まれるよりも、そっちの方が遥かに反社会的だと思うけどね。」




そうなんだよな。

俺のスキルは【心を読む】という、極めて知的に洗練された文明的なスキルだ。

それをまるで低能な蛮族が持ってそうな、キチガイスキルの持ち主か何かと誤解されるのは癪だな。

日本人全体の名誉に関わる問題だ。



『ちっ!

わかったよ!

はいはい、俺の負けでいーですよ

はいはい、やればいいんでしょやればさー!


皆ー。

昨日、オーク達に有耶無耶にされちゃったけど。


俺の能力は【心を読む】ことだー。


まあ、察してる方も多かったと思う。


だってそうだろ?

これまで何千年も不可能だった種族間意思疎通がさあ。

俺がチョチョイと動いただけで、一夜にして成ってしまったんだぜ?

勘のいい連中はとっくに気付いてたんだろうけどさ。


ここに集まってくれたのは、各省庁のエリートばかりだ。

恐らく、職場では俺の能力の予想は立っていたと思う。


そう!

この伊勢海地人が持つ超絶異能!

【心を読む】スキルをね!!』




愚かにも群衆は俺から目を逸らしたまま、ウンともスンとも言わない。

オイオイオイ。

こっちは袋叩きにされる覚悟でカミングアウトしてるんだぜ?

もうちょっとリアクション寄越せよ。

またく、愚民というのは度し難い生き物だ。




『じゃあ、ヴェギータ。

俺が皆からボコられ始めたら、ちゃんと助けてくれよ?


俺が【心を読む】スキルを悪用しなかった事は

近くに居た君が一番知ってる筈だよな!?』



「…そ、そうだね。」



『はい。

それじゃあ、伊勢海地人。

リザード神像の診断を以て罪の告白をしまーす!』




俺はリザード神像の水晶に触れる。

リザード語は今や世界共通語だからなぁ…

オーク語表記の診断と以上に言い逃れ出来ない出来ないよなぁ。




『みんなーーーーーッ!!!!

ごめーーーーーんッ!!!!!


このスキルこそがッ!!!

俺の正体でーーーーーーーーーーす!!!!』




《診断結果が出ました。》




うむ、流石文明種族たるリザード種族の神像だ。

声色に品があるねえ。

あれだよ、君ぃ。

これからはリザード学をもっと真摯に学ばなきゃいかんぞー。




《貴方のスキルは。》




やれやれ。

俺の【心を読む】というスキルも、遂に白日の下に晒される日が来てしまったか…

(この月世界に太陽は存在しないんだけどね。)


あーあ、こりゃあ世界の敵になっちまうなー。

かーッ、辛ぇw

かーッ、鬱になるわぁw

かーッ、俺のミラクルチートがバレちまったわww





狂戦士バーサーカーです。》




ん?

今、何て?

リザード語で【心を読む】ことを《バーサーカー》と表記するのか?

ん?

ん?

今、押し間違えた?

こっちかな?




狂戦士バーサーカーです。》




ん?

この機械、壊れてる?

配線の調子が悪い?


あ、そうか。

リザードの腕力を想定した機械だから、もっと強めに押さなきゃ駄目なんだ。


よーし、体重掛けて…

えい!




狂戦士バーサーカーです。》




ん? ん? ん?




『大変だ、ヴェギータ。

この神像壊れてるぞ?

やっぱり移動させたのが悪かったのかな?』




狂戦士バーサーカーです。》




「…。」




『あれ?

どうした?


あ、そうか。

君達の神像を壊しちゃったのを怒ってるんだな?


勿論、修理代は可能な限り支払うよ。

俺は技術者の知り合いが多いんだ!』





狂戦士バーサーカーです。》




「…。」




『おいおい!

どうした諸君!!


確かに故障させたのは申し訳なく思ってるよ!

ワザとじゃないんだ。

中々場所が確保出来なくてさー。


ちょww

おいおいおいw

みんなー、何かリアクションしてくれよー。


何も言ってくれないなら【心を読んじゃう】ぞーーww


なーんつってwww』




狂戦士バーサーカーです。》





…。




狂戦士バーサーカーです。》





『…けんな。


っざけんなぁ!!!!

この機械が故障してるって言ってんだよーーーー!!!


はぁーーー。  はぁーーー。 



俺はぁッ!!

この世界の為に1人で戦ってきた!!!

何の見返りも欲っせずにだ!!


オマエラも知ってるだろう!!!!

知ってるよなぁ!!!


それまで意思疎通の可能性すら想像されてなかった世界で、だ!

俺がぁ!!

俺がぁ!!

俺が全種族会議を作ったぁ!!!


この俺の【心を読む】能力でだ!!!

俺はオマエラの心が読める!!

自動翻訳機能付きでなあ!!


本だって読めるぞ!!

古文書や論文だって、この能力で解読してきた!!!


【心を読む】能力を応用してだ!!!



悪用しようと思えば幾らでも悪用出来た!!!

でも、俺そんなことしたか!?

全部自腹だぞ!!!!

俺、全部自腹切ってやってるんだぞ!!!!


なあ!!

オマエラ、それは知ってるよなァ!!!!!


おい!!!

何とか言えよ!!!


その目は何だ!!!

オマエラぁ!!!


おい!!!

揃いも揃ってその表情やめろおお!!!


俺は正気だよ!!!!

誰よりも正気だよ!!!

理性によって世界を正してきた!!!


志ッ!!!

確固たる理性に基づいた志があるからだ!!!


オマエラ、その目で俺を見るんじゃねーよッ!!!!


何だその目はぁ!!!!


俺がどれだけオマエラの為に動いてきてやったと思ってる!!!!


まさか、オマエラ…

俺の事をずっとそんな風に見てたのか!?


いやいや、まさかだよなあ!!!

まさかだよなあああ!!!!!


この俺をそんな風に見るなんてッ!!

正気かーーーーー、テメーらああ!!!!!



俺はキチガイじゃない!!!!!

俺はキチガイじゃない!!!!!

俺はキチガイじゃない!!!!!


誰かこの雑音止めろォーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!』






狂戦士バーサーカーです。》

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― 新着の感想 ―
[一言] まさか本人がバーサーカーとは。
[気になる点] となるとこれまで【心を読んで】いたのはチート自身の妄想能力…? 現実だと心を読んだつもりで話すタイプはトンチンカンなことを言い始めて場を荒らすので収拾つけるのが大変ですが… いやチート…
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