チートで児童性交罪に加担する
「オマエも大概面白い奴だなー。
まさか俺の人生がここまで劇的になるとは思ってなかったよw」
『ドランさん…
余計な部分まで劇的にしてしまって申し訳ありません。』
「はははw
オマエ、余計な事ばっかりしてるもんなw」
思っていたよりドラン夫妻は早く帰還した。
各種族が公務用の高速艇網を整備したことにより、移動・物流が恐ろしく円滑になり、世界が狭くなったのだ。
ドラン曰く、彼ら夫妻はこの世界で最も長い距離を移動した人間種とのこと。
ちなみにクレアは俺に対して怒っているので、ボコられた俺にお見舞いには来てくれない。
あの子が一番人生変わったよな…
「コボルトの司令部がオマエに宜しく言ってたぞ。
これコボルト土産、営倉に持ち込めないからオマエの私物箱に入れておくな。」
『食べ物だったら隠しておいて下さい。
あの女に盗られるんで。』
「はははw
ベスさんにも困ったもんだ。
オマエ、余程好かれてるんだな。」
その好意に溢れたベスおばは、ルネ君とセックス出来てない事に苛立っている。
(さっきも監視窓越しに石をぶつけられた。)
世の中、上手く行かないものですな。
ドラン夫妻は、しばらく母艦に滞在する。
為すべき使命は多いからだ。
そして俺の身元が発覚した事で、夫妻の使命は3倍くらいに増えている。
ドランと監視窓越しに話していると、いつの間にか現れたクレアもこちらを覗いていた。
俺は丁寧に頭を下げるが、クレアはこちらを一瞥しただけで何も言わずに立ち去ってしまった。
そりゃあ怒るよな。
あれが正常な反応だ。
逆に嬉しそうに笑っているドランは余程のサイコパスだと思う。
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この営倉暮らしは【心の声を聴く】ことが出来る俺にとって非常に好ましい。
俺のスキルを一番警戒している筈のオーク種が、隣室のゲーゲーを頻繁に訪れ機密情報を漏らしまくってくれるからである。
コイツラは俺が《目視による精神操作》を行っていると断定しており、絶対に俺の視界に入ろうとしない反面、【心の声を盗聴】出来る射程距離まで無防備に入って来てくれる。
しかもオークは体育会系社会に育っているせいか、心の中でもハキハキ喋ってくれるので心地良い。
オークが【心の中でハキハキ報告してくれた】ことだが。
ヴァ―ヴァン主席とギルガーズ大帝が秘密通話会議を毎夜行っているということ。
議題は《人間種を外した外交会議を設置するかしないか》である。
両雄、本音では人間種を外した4種族会議を極秘で開催したい。
ただ経験豊富な政治家としての経験が、そんな馬鹿な選択をさせてくれない。
まあ世界のキーパーソン2人がこんな通話を行っている時点で、人間種は国際政治の場からパージされているも同然である。
帝国議会もそこら辺の気配を察知出来ているだけに辛い。
後、オーク種(と言うよりギルガーズ大帝)は今や世界的有名人となったクレアを何とか抱き込めないか検討している。
それが他種族への一番の牽制になると信じており、その判断は無論正しい。
問題はクレアが体育会系なオークのノリを嫌っている点にある。
何せドランのようなヘラヘラしたオッサンと結婚までしてしまう女である。
オーク社会特有のオラ付いた雰囲気は避けられてしまっても仕方ないだろう。
この嗜好は近くオーク種も悟るとは思うが、現時点ではそこまでのプロファイリングに至っていない。
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この数日、ずーっと近辺を駆け回っていたベスおばが訪ねて来る。
「これ結構高級品なのよ?」
と言って、団子の様な物が入った箱を恩着せがましいドヤ顔で俺の顔をめがけて放り込んで来る
ああ、リザードの売店船で販売している固形型濃縮油(鮭味)だな。
売値は1ギル、現在の帝国通貨だと660ウェンくらいが相場か…
『何か用か?』
「ルネ君の件に決まってるでしょ!」
『結局、あの人とはどうなったの?』
「現在交渉中、婚前交渉には至ってないけどww」
それジョークのつもりなのか?
下世話な女だ。
『ルネ君はあれだろ?
アンタを求めてここまで来たんじゃないのか?』
「そうなのよ!
昔からワタクシの事を好き好き言ってくれてたから
1発くらいハメておこうと思ったんだけど
婚前交渉は駄目だって!
意外に真面目なのよ!?」
…コイツ、オッサンみたいな感性してるな。
ちょっとだけ好感度上がったわ。
「ねえ、伊勢海クン。
男の子ってみんなそうなの!?」
『いや…
俺がルネ君くらいの年齢の時は…
そもそも性欲の概念とか無かったんじゃないか?
精通もまだだった気がする。』
「ねえ、ルネ君って精通まだなのかしら?」
『…いや、流石にそれは解らん。』
「アナタ、自称鑑定家でしょ!
鑑定しときなさいよ!
気が利かないわね!」
『…いや、そんな項目あったかな?
ちょっとそういう鑑定は苦手分野かも知れん。』
「じゃあ、直接聞いておいてよ!
男同士でしょ!」
『え~、マジか~。
…いや、男同士でもそういう話はしないぞ?』
「嘘!
男の人って普段からいやらしい話ばっかりしてるって聞くわ!
そういう話も本当はしてる癖に!」
『いや~、斬新な切り口だな~。
忌憚なく述べるぞ?
確かに男同士だと猥談で盛り上がるケースは多い。
そこは認める。』
「ほら、言った通りじゃない。」
『話はここからなんだ。
猥談はする。
するんだが、話題の対象は女であって
男の話は殆どしないんだよ。
自分達に関する話はしない。
陰毛の濃さとか、肛門の感度とか、乳首のサイズとか。
女のそれに対しては話題にする。
だが、男のそれは話題に挙げない。』
「ハア!?
アナタ達、やっぱりワタクシをそういう目で見ていたのね!
いやらしい!
このケダモノ!」
『いや、アンタの話題はしない。』
「そ、そうなの?」
ブスの話題なんてしたらメシがマズくなるからな。
『俺にだって最低限のエチケットはある。』
「ふ、ふーん。
到底信用出来ないけど…
まあ、信じてあげるわ。」
『そんな訳だから、男の猥談に男は出てこない。
男は男に性的価値を感じないからだ。』
「で、でも!
男同士でキスくらいしてるんじゃないの~?
性欲強いって聞いたわよ?」
『いや…
それ、キティも誤解してたんだが…
男同士は本当に性欲の対象にならないんだ。
微塵も。』
「ほっぺにチュウくらいはしてるんでしょ?」
『いや、しない。』
「でも、ハグぐらいはするでしょ?」
『いや、そういう文脈ではしない。』
「ぐぬぬ。
男の人って本当は性欲薄いんじゃないの?」
『言われてみればそんな気もしてきた。』
要は、ベスおばはルネ君に対して何の思い遣りも無い癖に、セックスだけは堪能してみたいのだ。
見下げ果てた女だが、俺も男なのでその心理はよく理解出来る。
一発ヤレるなら普通はヤルよな。
「ねえ、伊勢海クンから上手く誘導してよ。
部屋にさえ連れ込めば、後は体格差で何とでも出来るわ!
ワタクシ、腕力には絶対の自信があるの!
協力しなさいよ!」
…コイツ、さぞかし人生楽しいだろうな。
『なあ、ルネ君の純情を踏み躙るような事をするなよ。
あの人、アンタを追いかけて来てくれたんだろ?
もうちょっと風情と言うかロマンチシズムと言うか
そういう箇所を尊重してやれよ。』
「伊勢海クンってレイプ魔の分際でそんな事を気にするのね。」
『アンタ以外にはやってない。』
「…。
あっそ。
まあ、ルネ君が来たら上手い事言っておいてよ。
お見舞い名目で連れて来るから。」
『俺にそんな義理があるのか?』
「リザード団子買って来てあげたでしょ!」
…1ギルじゃねえか。
これ、リザード軍人が時間の無い時に非常食代わりに掻き込むモンだぞ。
それも顔に投げつけやがって。
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その1時間後くらいにシュタインフェルト卿が来訪する。
相も変わらず超絶イケメンである。
お見舞い品は、ジェーレ諸島産(リザード政府の直轄地、高級リゾート地)の最高級鮫オイル・人間種向けverだ。
美容オイルとしても使用できる。
1本700ギル相当のものが3本セットで桐の化粧箱に入っている。
しかも卿は俺の顔に品物を投げつけてこない。
どこぞのキチガイとはえらい違いである。
お互いに言いたいことは山ほどあったのだが、まずは淡々と近況を報告。
俺の素性や地球の情勢も含めて全て報告。
と言ってもグランバルド首脳部は地球事情はほぼ正確に把握している。
ジョー・バイデンも習近平もムハンマド皇太子もシャルル・ミシェルも来歴含めてその為人を知悉していたし、東側的価値観と西側的価値観が悪い意味で拮抗している点まで把握していた。
地球の科学技術については俺なんかより帝国首脳部の方が遥かに詳しい。
《小惑星イトカワ》だの《衛星はやぶさ》だの、聞き覚えはあるような気もするが、その詳細はよくわからない。
卿から教わったのだが、イトカワなる小惑星は地球からの距離が概ね月に近い上に、月よりも遥かに小さな小惑星だそうだ。
(そんな所に無人機を着陸させる事が可能な日本は脅威である、という文脈だ。)
俺は内心【ふーん、凄いね】と思ったが、自分達の住む世界が月の内側と知ったグランバルド人にとっては戦慄以外の何物でもない。
日本はその気になればグランバルドに簡単に届くのだ。
ちなみに日本国の宇宙分野に対する予算分配は600憶円程度。
福祉予算は35兆円を超えているとのこと。
スラスラ俺に説明するシュタインフェルト卿をぼんやり眺めながら
【ああ、確かに。
俺みたいな生ポの屑や老人に対する支援を打ち切るだけで
簡単に月征服出来るだろうな】
とは思った。
『詳しいですね。』
と言おうとして寸前で留める。
幾ら卿が温厚だと言っても、俺がそんな他人事のような発言をすれば流石に怒られてしまうだろうからだ。
俺はオークから【読んだ】情報も全て卿に伝達する。
流石に厳しい表情で色々追及される。
そりゃあね、誤報だったら洒落にならないからね。
「ゴブリン種の皆様が…
人間種以外に採掘技術を提供するという噂は…」
『それに関しては厳然たる事実です。
ゴブリンの主要部族長達から直接聞かされたので間違いないです。』
「うーん。
リザード側との経済格差、もっと広がっちゃいますね。」
でしょうねえ。
リザードは脅威の海中採鉱技術を保有している。
これは水中で普通に生活可能なリザード種のみに運用可能な技術である。
(彼らは水中で会話・食事・睡眠・性交・出産が可能)
そもそも彼らに言わせれば、《採掘なんて海底で行った方が効率的に決まっている》らしい。
そういう理由からリザード種は歴史的に地上採掘に熱心ではなかった。
なので、リザード領は地表周辺に豊富な鉱物資源が余っており、それをゴブリンに掘らせる事により資源収集効率面において、ますます人間種に差を付けることになった。
ゴブリンの政治戦略は極めてシンプルだ。
人間種以外に技術支援を続けることにより、人間種の国際的地位を引き下げ、自分達の安全を脅かせない状況に持って行く。
彼らには他に採り得る選択肢が残されていないので迷いが無い。
その後、ルネ君とベスおばの話題になる。
シュタインフェルト卿は眉間に皺を寄せ、静かに唇を噛んだ。
それがまた様になっている。
…イケメンはどんな表情をしてもイケメンなので狡いな。
卿とルネ君は帝都に居る頃からベスおばを巡って恋のさや当てをしており、表面上は貴族的に社交(そもそも彼らは従弟同士である。)していたが、内心では互いの存在に苦悶していたらしい。
そんな胸の内をシュタインフェルト卿は俺に対して涙ぐみながら赤裸々に打ち明けた。
…ゴメン。
帝都ではブスが流行してるのか?
それとも貴族には特別な価値基準があって、あの女に何らかの価値があるのか?
それとも、最大野党のヴィルヘルム家を政治的に取り込む為に、あの糞BBAに恋愛感情を持つように洗脳されている?
大体、ルネ君にしてもシュタインフェルト卿にしても超絶美形じゃん。
2人がその気になれば、どんな女でも入れ食い放題の筈だ。
どうしてその恵まれた容姿を無駄遣いする?
俺がアンタらだったら手当たり次第に美女を口説いて、絶対に巨大ハーレムを築くけどな。
…あ、わかった!
あの女、特殊な媚薬か何かをこの2人に盛ったに違いない!
そうだ、そうに決まっている!
まったく、卑怯千万だな!
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そうこう言っているうちに、ベスおばとルネ君が扉の前に到着したらしい。
営倉に転がっている俺の角度からは全貌は見えない。
何やらギクシャクした異様な空気が流れて来て、信じがたい事にベスおばが意地悪そうにニヤニヤ笑っている。
「ねえ、伊勢海クン!
ワタクシ達の離婚って正式に成立したわよね?」
『ああ、成立した。
俺の所属するゲーゲー部族からも正式に承認を受けている。』
これは事実。
ゲーゲーからは許可を貰っている。
果たしてゴブリン部族内の離婚許可が帝国貴族に適用されるか否かは謎だが。
「ほらね、ルネ君!
だからワタクシ言ったじゃない♪」
満面の笑みで俺にウインクするベスおば。
アンタ、悪巧みをする時だけは本当にいい表情するよな。
確かに一部からモテるのも理解出来るわ。
あ!
そうか!
あの女は昔から悪謀ばっかり重ねて来たから、常時いい表情をしていたのだ!
だから、そんなベスおばと昔から面識のあるこの2人が惹き付けられたのか!!
…いや、多分これが正解だろう。
あの女、嘘を吐いたり不正をする時に、余程嬉しいのか眼が異常に輝くんだよ。
(父親である公爵閣下を困らせている時が一番生き生きしていた。)
ああ、謎が解けたみたいでちょっぴり嬉しい。
ベスおばはルネ君の肩を抱き寄せ、文字通り持ち帰ってしまった。
あれだけ欲望のままに生きられたら、さぞかし楽しい人生を送れるのだろう。
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ふと気が付くと、一緒に去ったと思ったシュタインフェルト卿がまだ残っていた。
無表情でこちらを観察している。
『前から、あんな感じなんですか?
とんでもない女ですよねww』
俺は場の空気を和ますために、敢えて明るい口調で卿に語り掛ける。
「いや…
とんでも無いのは貴方ですよ、イセカイ卿。」
シュタインフェルト卿は溜息を大きく吐き出してからそう言った。
『え? 私がですか?』
「エリザベス殿から聞いてませんでしたか?
私のスキルについて…」
あ、コイツの設定忘れていた。
『私の能力は広域自動超回復。
私を中心にして半径2キロメートル以内の傷病者を治癒し続けます。
あなた方お2人の赤い糸同様、極めてパッシブなスキルです。
ここでも検証しましたが、相手がオークあれゴブリンであれコボルトであれリザードであれ。
完璧な治癒が可能です。』
『…。』
「イセカイ卿。
貴方の腫れ上がった顔も、折れた手足も…
フェイクなのですね?
この距離に私が居て、そのレベルの外傷が完治しない筈がないのです。
…私は幼少の頃。
親に連れられて訪れた劇場で、楽屋裏で突然死しかけた俳優の破裂した心臓すらも知らずに治した事すらあります。
直線距離にして1キロ弱は離れていたそうです。
…貴方の顔、手足、それ貴方本来のパーツではありませんね?
恐らくは人間に似せた素材…
解りますよ。
私だって一応は医学博士なのですから。」
あー、ミスった。
コイツは俺なんかと違って本物のチートなんだよなあ。
本来は一番警戒すべき相手なんだが…
物腰がソフト過ぎてついつい油断してしまうんだ。
こういう善性に溢れた人間の【心を読む】って本当に心が痛むんだぜ。
これがベスおばだったら、お菓子の隠し場所を【読みとって】先に食べてしまっても、微塵の呵責も感じないんだけどな。
『制裁を受けたのは事実です。
ゴブリン法で正式な判決を受けて、収監中なのも事実です。』
「…貴方の肉体が真実ではないということは否定しないのですね?
いや、貴方からは生命反応が…
これはどちらかと言うと…」
そこで卿が黙り込んでしまう。
流石だな。
単なるイケメンのボンボンではない。
この男は観察力や洞察力も尋常ではない。
グランバルド貴族は本当に層が厚い。
『信じて欲しい、としか言えないのですが…
グランバルドにも、月にも敵意を向ける気はありません。
この肉体改造にしても、私個人の目的を果たす為に施しただけであり…
この世界に対して如何なる攻撃行為も行わない事を誓約します。』
「標準座標≪√47WS≫対策なのですね?」
『…ああ、ソイツら以外には使わない。
邪魔でもされない限りは。』
…いや、この人なら俺の攻撃を完封してしまうかもな。
オイオイ、そんな化け物でも見るような表情はやめろよ。
俺に言わせりゃ、アンタの方がよっぽど化け物だぞ?