運命に報復を
この世界では人の魂は世界から生まれ、世界へと還ると言われている。はっきりと言ってしまえば、世界は人の魂を食べる為に人を生み出し、育てているのだ。世界の為に養殖されている存在。それが人。だから、世界は美味しい食事をしたいが為に魂を肥えさせる。
より好みの魂は英雄と呼ばれる。普通の魂よりも美味しくなったそれを世界は求めていた。
「悪趣味ですね」
「同感だ」
「それで、何か策はありますの?」
こういった事は彼の方が詳しい。その事実が少し悔しいが、今は頼るしかないのだ。
「あるにはあるが、難しい」
それでもあるのだ。偽りを嫌う彼が言うのならば、残酷であろうと確かだろう。残酷さを恨みはするが彼を恨んだりはしない。気を引き締めて彼と向き合う。
彼が告げる。私はそれを聞いた。
私達を嗤う運命にやり返さなければ、利用されるだけの人生などお断りよ。必ず運命とやらに敗北をプレゼントするわ。
「呆れたよ」
魅力的な女性なのに残念だ。きっと、王子様は苦労するだろう。
「まぁ、酷い」
淑女に対する紳士の言葉では無いでしょう?
「僕は紳士ではないのだけど・・・」
「あら、そうかしら?」
「今は君の願いを叶える者になりたいかな」
勿論、僕自身の願いも叶えるけどね。
「・・・そう」
ならば、今度は共に戦いましょう。相手は世界という壮大なモノだが、遅れは取らない。
楽しみだねと微笑む彼は素晴らしい紳士だ。素敵な事ね。