希望の未来へと
あぁ、『彼』だ。思ってもみなかった存在の有無に冷汗が流れた。
「未来とは未確定の明日の事です。そうではありませんか?」
そう告げた彼は私に向けてウインクした。あぁ、『彼』らしい。しかし、止めて欲しい行動だ。殿下に勘違いされたら、どうしてくれる。
だが、変わった。流れが吉兆へと向かっている気がする。
「不思議そうだね」
「当たり前でしょう」
あと、あまり気安く話し掛けないで頂戴。私の言葉に肩を竦めて苦笑いする彼は世界に仇なす敵だった。私もであるが・・・彼も同じなのか。
「僕も君と同じだからね」
「・・・少し、変わったかしら」
柔らかに見える雰囲気は前の彼には無かった。いえ、私が知ろうとしなかったのかもしれない。私は私の事で精一杯だったから。尤も、それは今も同じなのだけど。
これからの事を自分一人で抱える必要が無いのは気が楽だ。親しくする必要は・・・無いと良いのだけど。
「それで状況はどうなっているの」
「良いと思うのなら、相当お頭が悪い」
「・・・貴方、性格が捻じ曲がっているのね」
「誉め言葉として受け取るよ」
苦笑している彼の様子からは楽観しているのかと思ってしまう。だが、彼の言葉は正しい。
状況は酷く悪い。
「運命とやらは何としてでもこの世界をボロボロにしたいらしいからね」