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始まり
寒いの。そう言いたいのに私の口から出るのは耳障りな音だけ。薄れていく意識の中でたった一つを願う。
「・・・もう一度」
願いは叶ってしまった。
はっきりと意識が覚醒したのは私が五歳の時である。ふと空を見上げた時に目に入ったのは赤い月と青い月、そして辺りを照らしている太陽。それが常識だった筈だ。しかし、私は「青い月は壊れたのではなかっただろうか」と思ってしまった。そう、私が壊した筈と。そして、渦巻く記憶の中へと私は落ちた。
私は、死んだ。何故?世界を壊そうとしたから救世主によって討たれたのである。
ならば、何故私が生きているの?いや、私が死んだのは二十四歳の時だ。私と年齢が合っていない。私はまだ五歳。どうして・・・
「まさか・・・」
私の願いは叶ってしまったのか。今際の愚かな願いが。
始まりは絶望。再開は希望。