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SIXMIX 〔シックスミックス〕  作者: 花田神楽
 
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midnight1

 潮風が吹いた。色褪せた常夜灯が一つ、コンテナに埋もれながら立っている。夜更けの古ぼけた工業港は、既に闇の中にあった。

 遠くから徐々に足音が聞こえてくる。革靴をコンクリートに打ち付けるような、ひどくぞんざいな歩き方だ。ターゲットは十一時の方向、残り三百ヤード。

 依頼人によると、今夜は抗争中の暴力団と、商取引と銘打って対面するらしい。俺の仕事はいつもと同じ。向こうが攻撃を仕掛けてくる前に、それをターゲットとして始末すること。

 双方が相見えて静止する。敵方は、妙に着ぶくれした漆黒のスーツに身を包んでいた。狙撃を危惧し、一応は対策を施したつもりらしい。口の端で笑う狙撃手。次いで、手に馴染んだライフルを肩に当て、暗視スコープをのぞき込む。

 さあ、今宵も死神になろうか。

 ピュキン――

 後味の悪い銃声だった。いや、心地の良い銃声などありはしない。プロの狙撃手が牙を剥く時、それは確実に……サイレンサーの嫌な金属音がするときだ。

 肺いっぱいに、鉄臭い潮風を吸い込む。よし、事後処理に移るか。

 軽快なステップでコンテナ上を移動し、船着き場まで下りてゆく狙撃手。件の男は、左胸から紅い花弁を散らしていた。

 依頼人のご一行が、興奮気味に歩み寄ってくる。

「流石は望月の死神さま。こいつ、一声も上げずにぶっ倒れましたよ」

「マジすげぇっすね! ガチで即死とかありえねぇ」

「……お褒めに与り光栄です。では後ほど、成功報酬を少しばかり。証拠隠滅はアフターサービスですので、もうお帰りになられて結構ですよ」

 彼は矢継ぎ早に、淡々と連絡事項を述べた。人の死を嘲笑うやつなんて、さっさと消え失せればいいんだ。

 曇天の切れ間から、青い三日月が顔を出す。真っ黒な海原には完璧なまでの光の道。狙撃手はライフルをだらしなくぶら下げて、そんな景色を、もの憂げに見つめていた。

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