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第5話 初めてのクエスト受注

ギルドが開くのは朝7時。


掲示板に元々貼られていたものに加え、当日の新規のクエストが追加されている。

Bランク以上のクエストの掲示板、C・Dランク向け掲示板、E・Fランク以下の掲示板と、3か所に分かれている。

 掲示板がギルドの大広間の左方、右方、正面と3か所に分けられているのは、掲示板を眺めている冒険者同士がケンカを始めたりすることを防ぐためらしい。

シノスのような辺境の街にはBランク以上の冒険者などほぼいないので、ガラガラだ。


「おはようございます、タケミさん。」

アリーシャが声を掛けて来た

「おはよう、アリーシャ。今日からよろしく」

タケミは返事を返す。


 アリーシャは夜食事をした時の私服の軽装ではなく、初めて会った時と同じシスター装束だ。

軽い衣服にしか見えないが、魔力付与が施されており、防御力はそこそこ高い。普通に購入しようとすると金貨10枚はするらしい。

 Fランクでその装備はなかなかキツイところだが、シスターたちは卒業して一人立ちするときに支給されるのだそうだ。


「まず、揃えたい武具やアイテムを決めて、目標予算が確定したら、それに合わせてクエストを受注します。まあ、食事や宿泊代で一日一人銀貨5枚程度。防具や武器は上を見ればきりがないですが、灯りを付けるための魔道具でトーチやテントも必要ですね」


「なるほど、、じゃあ」

 ・ひとり1日生活費  5銀

 ・トーチ2本     10銀

 ・ミニテント     150銀


「200銀くらいを目標にしないといけないな。まあ、毎日街へ戻ってくるような日帰りクエストをこなすうちはテントは要らないが、トーチは夜は必要だし、すぐに買おう。」


 クエストボードにあったのは討伐・採取・警備・その他で、護衛任務などはE・Fランクには少ないようだ(それはそうだろう)。警備クエストは村の周辺の警備を数日間とかだ。


「討伐はゴブリンやカエルなど周辺のモンスターを倒したら報告するだけなので、わざわざ受注ではなくて、都度報告でOKです。採取もそうですね。掲示板にある討伐依頼は指定モンスターです。例えば、この【ムガチ村を襲ったモンスターの討伐依頼】は人的被害者無とあるので、村人が誘拐されたりとかは無いようですね。モンスターを討伐して終わりです。ムガチ村はシノスから見て西にありますよ。もう少し西へ進むとバシルクフという人口3000人くらいの町があります。

このあたりはヒャウィストクという地域で、森に囲まれているので小さな村はモンスターの襲撃に気づきにくいのです」

アリーシャはこの辺りの地域の状況について説明してくれた。


「よし、ムガチ村のモンスター襲撃」を受注しよう。片道20キロならアリーシャを抱えて走れば10分くらいで到着できる」

「え、それは恥ずかしいです。普通に歩きましょう。徒歩でも4時間程度ですし」


 4時間も歩くくらいなら10分抱えて走った方が良い・・・そう思ったが、譲る気は無さそうだ。

「でも、もし手間取ったりすると、帰り道で野宿もありえますね・・・」

少し心配そうだ。もちろん、いきなり遠くへ出歩くのが心配なのはタケミも同じだった


「ちょっといいかな、君たち」

突然後ろから男が声を掛けて来た。

「僕はディクソン・ディクソン・マルバック。隣にいるのはマルファタだ。僕はアーチャー(弓使い)、彼女は猫人族のスカウト(斥候)だ。よかったら、そのクエスト、同行させてくれないかな。僕はGランク、彼女はFランクだ」


 声を掛けて来た弓兵は、2m近い長身で青白い顔をした不健康そうな男だった。

猫人族の方は、140cmほどの身長で、いかにも偵察が得意そうだ。


「おはよう、ディクソンさん。僕はタケミ。こっちはアリーシャ。前衛戦士とヒーラーだ。ランクはF。っていうか、登録したばかりでクエスト0でもFランクだったんだけど、Gランクってのは・・・?」


 まさかFランクよりも下があるとは思わず、つい聞いてしまった。

「ああ。。。水晶、触っただろ?適性をチェックするとかで」

そういえばそんなのがあったな・・

「ヒーラーや魔法使いはその特別性、希少性などから、登録時Fランクは珍しくない。でも魔法を使わない物理系やサポート系、後衛支援系は単独の戦闘力も低いし、希少性も無いので、評価が低いんだ。で、僕も駆け出しって事で、Gランクなんだ。」

 あまり役に立つようには思えないし、取り分が減るのは微妙だ。モンスターはおそらく武神の加護があれば余裕で倒せるし・・・断るべきか・・・。

 と思ったが、猫人族の娘が超絶可愛くて、アリーシャもにこにこしていたので、ついOKしてしまった。


「ありがとう。僕のことはディックと呼んでくれ。ディクソンて名前、嫌いでね。マルファタはそのまま呼べばいいよ」


 戦士、斥候、弓使い、回復。まあ、冒険のメンツとしては普通だろう。

日帰りクエストの予定で村を出発することにした。冒険で得た収入は等分、アイテムやレアドロップ品は鑑定結果を見て判断。ということになった。


シノスを出て1時間、森を避けているとはいえ、モンスターを見かける事は無かった。

「アリーシャ、通常ゴブリンとか、モンスターに遭遇するのって、こんなに少ないのかい?」

意外とモンスターに会わないので、逆に不安になってしまった。これではLv上げも出来ない。

「いえ、森に入ればたくさんいますよ。街道にはそんなに出てこないです。討伐されるので」

なるほど、魔物もバカではないわけか。たまに人里に熊や猪が降りて来るニュースがあったが、あれも冬眠前に食料が無くて、とか、迷い込んだだけとかだもんな。


 しかし、40cm以上のサイズの芋虫が這っていたりするし、その辺を犬や猫くらいのサイズの昆虫が飛んでいるので、油断は出来ない。

「昆虫は魔物ではないから、倒しても経験値は得られないし、核も無いからお金にもなりません。まあ、甲虫なら殻とか売れますけどね。芋虫は食べられますよ。冒険者の食料としてはメジャーです」

アリーシャがそういうと、僕とディックは顔を合わせて苦い顔をした。アリーシャは芋虫平気なんだろうか?マルファタは普通に頷いている


 「ちょっと待って、、、何か聞こえる」

森の入り口付近を見ると、ガサガサ動いている

 「ほんとニャ。んー・・・モンスターニャね。2~3匹いる」

マルファタにも聞こえたようだ。モンスターの足音と、荒い息遣い、それに、、臭い


 「ちょっと待ってて、狩って来る」

距離は100mほど。全力で走って2秒ほどだ。いきなり襲いかかり、後ろから2匹を殴り倒す。残りの2匹も身構える時間を与えず有無を言わさずブン殴った。

10倍能力でならゴブリン程度は瞬殺だった。


 シュゥゥゥゥゥゥ・・・・


 冒険者タグが魔力を感知して記録をしている。

ゴブリンの腹に手を突っ込み、核を抜き出す。小さな黒い核が魔力を発していたが、やがてそれも消えてただの赤黒い塊になった。

 (これが核か・・気持ち悪いな)

ゴブリンはちょっとした刃物なども持っていたのでそれらも回収し、仲間の元へ戻った。


「タケミさん、お帰りなさい。ゴブリンが居たんですか?」

「ああ、ゴブリンが3匹だ。100mくらいあったからこっちにも気づいてなかったし、油断してたから後ろからブン殴ったよ」

回収したものや核をアリーシャに渡して空間収納魔法に収めてもらった。


「え、、タケミ。きみ、なんでそんなに強いんだ?Fランクだし、登録したばかりの初心者だよね?猫人族のマルファタよりも早く敵に気づくなんて」

ディックは驚いた様子だった。マルファタも、斥候である自分よりも先にモンスターに気づいた事に驚いている。

まあ、ここでまた【童帝】の話をして大笑いされるのも嫌なので、そこはもう話すのは止めた。


「ああ、身体強化能力だけど、パッシブスキルでね。常時発動してるんだ。力や速さだけでなく、聴力とか視力もね」

面倒な部分は伏せて、ざっくりとだけ説明した。

「そ、そうなのか。凄いんだね・・・100mって、あんなスピードで走れるなら、遠くにいる敵も一瞬じゃないか。弓使いの僕も出番が無いな・・・」

ディックは随分落ちこんでしまった。

遠くに居すぎて、経験値は3人には入らなかったようだし、次からは気をつけよう。


 ゴブリン3匹で銀貨6枚。4人パーティなら最低1日銀貨20枚必要だ。

一人旅なら装備無しでも全然稼げるが、パーティの人数が増えると結構大変そうだなと思った。


 結局、ムガチ村に到着するまでに別のゴブリンを4匹、二足カエルを1匹、芋虫を数匹(食料用)、飛んでる昆虫を数匹(向かってきたので)倒しただけだった。

稼いだ核は銀貨17枚分・・・ムガチ村のクエストをこなして、帰り道でも15枚か20枚分くらいは稼がないとダメだろう。テント一つ買うだけでも数日かかってしまいそうだ。


 なんていうか、、、思ってたのと違う


ようやく村に辿り着いたとき、タケミはそう思った。


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