妖と7月
空が低い初夏の朝
雲はすぐそこ
私たちの頭を撫でていく
見えないけれど
きっとうすいピンクの手
ひんやりしてじんわりしみる
7月の空が一番
女の子が言っていた
彼女の
淋しげに潤んだ瞳が美しかった
制服に似合わない静かな瞳
ぱきっとした空気
みずみずしい青空
そこに君臨する雲
7月の雲はたくさんの色を含む
朝露の色
青々とした緑の色
夕焼けの色
夏が始まる喜びとときめきの色
彼女の瞳の色
雲は彼女を包み込む
雲は彼女を呑み込む
彼女は雲に浸る
彼女は雲に溺れる
雲はすべて含んで
光に変える
彼女の淋しげな瞳も
海風のキスに変えて
いま
夏になる