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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Twilight Lady
96/100

episode 13

 ワイングラスに浸された赤紫。注がれた液体を優雅に揺らす貴婦人と襟元を正した紳士。煌びやかなシャンデリアの光が床を照らし出す。見ているだけでも目眩がしそうな、風景は今となっては自分自身もその一部へと成り下がっていた。

_____________________________________


 「うぅっ・・・・・・流石に恥ずかしいよ」


 恥ずかしさと緊張気味な面持ちで声を出す。それはともかく、今は()()()姿()を誰かに見られ続けることが何よりの不安要素だった。皮肉にも、声を聞くのもドレス姿をまじまじと見るのも、隣にいるオレンジ髪の青年のみだった。


 「何を恥ずかしがることがある? 言っておくが、お前のその正装(ドレス)、結構似合ってるぜ」


 皮肉めいた顔でそう言った青年は着ていた黒の紳士服のポケットに手を入れ、シルク製のハンカチを取り出した。一寸のズレなく折りたたまれたそれをバサッと右手で振り払うとすかさず、()の口元へと近付けた。


 「きゃっ_!」


 跳ね上がった胸の高鳴りを瞬時に自制し、声を飲み込んだ。この時、自らの異変に気づいた。分かり切った事なのだが、目の前の黒服も自分自身も紛れもない同性であり、一時は道を違えた仲間だったはず。それなのに、どうして、こんなにも(ラクト)の何気ない仕草や態度に反応してしまうのだろ。

 仮にこれが正真正銘の男女なら何一つおかしな点は無い。けれど、自分たちは違う。


 「・・・反応も染まってるな。 本当はお前、女なんじゃないか?」

 「うるさいっ!」

 「はは、まぁ、それより、口元ついてるぞ」

 「えっ?」


 片手に持っていたタルトを半分ほど食べた所で()は頬に甘みを感じていた。気づけば少量ながら、タルトの欠片が付いていた。ほのかに赤みがかる頬に恥じらいが生じる。

 

 「じっとしてろよ? 変に拒んだら、周りから怪しまれるから」


 なだめる様に向けられた眼差しで視界に入り込む、貴公子は慣れた手つきで____

   

 「くっ____! 勝手にしろ」


 普段なら、こんな真似 冗談でもやらせないのだが、生憎あいにく、今は訳が違う。恥じらう顔も振り払おうと、あしらう手つきも何もかも、れっきとした演技。何故なら、今自分たちが置かれている立場は会場にいる客人とは似ても似つかない。


 ただ、偵察に来た合法侵入者(招待客)だからだ。事の発端は数日前にラクトが入手した、スレイシア家で行われるパーティーの情報だ。この情報は俺自身も事前の聞き込みで知ってはいたのだが、それを有効に使う術を持ち合わせていなかった。スレイシアは元より、貴族で階級は言うまでも無く、最高位の金。以前、その事を裏付ける様にスレイシアと名乗った少女の髪は金色だった。そして、()()もだ。下手な芝居でその場を凌いではいたがあの態度は間違いなく、スレイシアの人間。


 黒髪の底辺階級の俺が屋敷に近づいただけでも、殺されかねない。当然、無謀だと思われていた作戦ではあったのだがそこは、オレンジ髪曰く、規格外の交渉力で乗り切った・・・。


 「全く・・・あんな条件が無ければ私は1人でもここに来ていたというのに・・・・・・」


 そう、スレイシア家のパーティーにはどうしてもラクトと一緒でなければいけない条件があった。


 「男女での来場が絶対条件って話だろ?」

 「そうよ____!」

 「な、何でそんなに嫌がるんだよ?! 別に俺は何もしてないだろ?」

 「・・・確かにあの時、霊薬を飲んでいたのは私だけど、効果が分かったら、ラクトに飲ませようとしてたのっ____!!」

 「それって・・・・」

 「なに?」

 「男の気持ちが分かる者同士だから、霊薬で女体になった俺を____がっ!」


 蹴った。 


 勢い良く蹴った。


 いや、蹴り飛ばした。


 必死に痛みを堪えるラクトに、してやった感を感じえながら()はその場に立ち、パーティー会場の壁の花に徹する。

 だが、ラクトへの反応は僅かながらその場にいた者に気づかれ、一気に窮地へと追い込まれる。密かに偵察するはずだった作戦が崩れる数秒前だった。

_____________________________________


 「あっ!」


 聞きなれた声に驚くと同時にそれが自分へと向けられたものだという事に気づく。


 (・・・・・この声!? 確か____!)


 「わぁー、綺麗な黒髪。 それに長くてサラサラ」


 ビクッ!と震えた体がピンッ!と床を垂直に伸びた。ちょっとした硬直状態が身体からだ中をむしばむ感覚だ。


 (気づかれた・・・? でも、誰に?! こんな姿の私を知る人なんて万に1人もいないはず)


 フロアを駆ける様に轟いた何者かの足音が緩やかに威圧感を秘め、近づく。恐ろしくも、安心感のある恐怖が目の前まで迫っていた。


 「え・・・! レディ____?」


 聴覚で感じた違和感が視覚をって補完される。


 金色の髪を揺らし、無邪気な微笑みをした小さな黄昏たそがれ____レディ=スレイシア。

 それが何を意味するのか?聞くまでも無く、彼女がこのスレイシアの人間であることを裏付ける大きな切欠きっかけ。幸いにも傍にはレディからサリアと呼ばれていた同色(金髪)の女性はおらず、それだけが唯一の救いだった。それでも、この状況で脅威から少女をまもる抑制力が居ないという事は逆に考えれば想定外の幸運を招いてしまったのかもしれない。


 それは、非情な選択ではあったが安定の選択にも成りうるモノ。


 止めることも出来たはず。今の俺の能力(チカラ)なら。

 守ることも出来たはず。今のこの瞬間(タイミング)なら。

 

 予定調和だって言われたら、俺にはどうする事も出来ない。狙撃手がこれも計算の内と言ってしまえば、それは肯定され彼女の結果(最期)を確かなモノにするだけだ。




 ________つまり、ラクトの暗殺対象が丸腰で姿を現したことを。




 どこからともなく、銃の引き金に手がかかる音がした。


 

初めましての方は初めまして、お久しぶりの方はこんにちは!


キットです。


と、言っても、ブラック・キャンバスの方を呼んで頂いている皆様には本当の名前はもう知られてるんでしたね・・・・・。それはともかく、今回からの展開は後の話に大きく関わる重要なターニングポイントだと思っています。現時点ではそれほど、大きな動きはありませんがこれから、少しずつ物語の核に触れていく予定なのでよろしくお願いします。。


後、投稿頻度は相変わらず、不規則でいこうと思うので気長に待って頂ければ幸いです。(ブックマークを外されたので・・・・・・)


と、言えばいいのかな?


これからも、私の小説を呼んで頂けたら嬉しいです。

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