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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Twilight Lady
89/100

episode 7

 ____それはとある日のとある昼下がりの事でした。・・・と言っても時系列的にはキットとラクトが宿を出て行って少ししてからの事なんですけどね?


 「私、【イヴ=ラビリンス】は気づいてしまったのです!数日前からここを使ってくださっている、キットはとてもやさしくて、とても繊細な方なんだと!」


 _____朝の仕事も終わり、昼休憩を使い街に出た私はそこで昼食を取っていました。普段は多忙なため、あまりこういった休憩の取り方はしないんですけどね・・・?でも、今日だけは何もかもがスムーズにいって、気分は最高だったんです。そう、あの瞬間までは______。


 「ふふーん、午後からの仕事にはまだ時間があるし、どこかに行ってみようかな?花を買って、宿に飾るのもいいかな?それとも、新しいお洋服で着飾ろうかな?」


 右へ左へ、目線は常に一定ではなく、いつかなる時も街の全体を見ていた。散歩って言うんですかねこういうの?まぁ、今の私はただの街娘ですし、仕事に戻ったからって、ただの()()()なんですけど・・・・・・。え?それは言い過ぎ?・・・どういう意味ですか?場合によっては私は意外と怖いんですからね・・・?


 「っと、思ってみたりしてるわけで」


 私はあくまで一人の女の子でそれ以上でもそれ以下でもないんですけど・・・。でも、どうしてでしょうか?どうして、この街は色だけで人に階級を付けるんでしょう?生まれ持った色で人の人生が変わる、そんなのあんまりだと思いませんか?


 「あの!そこのお嬢さん」


 無防備に街を歩く私は言うなれば、蜘蛛くもの巣に絡まった一匹のチョウ。相手方に悪意がないのなら、大変申し訳ないと思いつつも、小走りに駆け出してしまう。


 「ごめんなさい。今、急いでるのでーーーー!」


 タッタッタッ_____!!


 「・・・行っちゃた・・・・・・ハンカチ落としたことを言ってあげたかったのに・・・・・・」


 咄嗟に走り出してしまい、気が付けば私は薄暗い路地に入ってしまっていました。陽の光が届かず、肌寒い風と解ける気配のない雪の塊がそこにはありました。ザクザクと踏みしめるそれは、後方にはっきりとした足跡を残していました。


 「あれは!」


 目線の先には建物から出てくるキットとラクトが居ました。


 「確かあの場所は、古書館でしたっけ。何の本を探していたんでしょうか?気になりますね」


 などと、探偵気取りで私は出来るだけ足跡を立てない様に二人の後を尾行することにしました。いくら距離が離れているからと言って、油断は禁物です。いついかなる時でも警戒はおこたらず、周りに気を配ることが重要なのです!でも、日々、宿のお客さんを相手にしている私にとって気を配る事なんて、容易たやすいことです!


_____________________________________



 「路地から出てしまえばこっちのものです。人込みに紛れて_____。ってこれじゃあ、人が多すぎてどこにいるか分からないじゃないですか!?」


 行く手をはばむ人の壁。


 氷の張った地面が足元をよろけさせる。


 「あわわっ_____!おっと・・・・・・ふぅ・・・危なかった。でも、何とか」


 やっとの思いで二人の後を追う私はそこで二人の人物と話しをしている二人(キットとラクト)を見ていました。遠目で分かることは会話をしている二人はどちらも女の子でコートに身を包んだ最上位階級の金髪の女性と髪色は分かりませんがフードで身を隠した幼げな少女でした。


 「_____は、まさか・・・!?いやいや、それは無いですよね・・・?」


 しばらくの間、フードの女の子が話した後、次にキットが口を開きました。どうやら、自己紹介をしているようです。

 

 「と、言うことは初対面ですね」


 謎の安心感から安堵のため息を漏らした私はそのまま、四人が解散するまでを観賞し続けました。5分ぐらいでしたでしょうか?時折、ひやひやするような場面もありましたが、どうやらそれは私の早とちりの様でしたね?


 「でも、あのフードの、あんなに近づいて・・・ゆる______。あ、でも私は別に・・・そ、そうだ、そろそろ仕事に戻らなきゃ!」


 さっきの言葉の続きは何もないので忘れてください・・・・・・ね?

 クルッと振り返った私は複雑気持ちを振り払う様に再び、その足で駆け出す。深々《しんしん》と降り続けている雪に視界をさえぎられながらも、真っ直ぐに道を進む。

 そうして辿り着いた、持ち場(宿屋)で私はいつもの様に作った笑顔で接客をする。でも、普段もちゃんと笑っているんですけどね?


_____________________________________



 お昼過ぎの仕事も終わりを告げ、紅茶を片手に一息。お客さんとの雑談や棚の整理。そんな、日常的に見ても比較的平穏な動作をしていると、キットが宿に帰ってきました。


 「あっ!お帰りなさいませ、キット様」


 人前なだけあって、遂、丁寧口調になってしまいましたが普段は・・・うーん、二人っきりの時は違うんですよ?い、今のは別にそう言うのじゃなくて・・・!えぇーと・・・・・・・察してください!


 「_____」


 あれ?気づいてないのでしょうか?


 「・・・・・・キット」


 その日のキットは何かが違いました。力を感じない、気迫を感じない。どことなく影を落とした顔に私は初めて出会ったあの夜を思い出しました。ラクトに連れられ、ここに来た時のキットは何もかもに興味が無いような気がして・・・・・・。それが私の世話を焼きたいという気持ちに火をつけたといっても過言ではありません!

 だから、彼が私に何を求めているのか知りたくなっちゃいました。

 

 「____あぁ、ごめん。気づかなかった」


 うつむいた視線で私に謝るキットは、もう何もかもに絶望している様に見えました。


 「えっと・・・・・・」

 「今は一人にしてほしい」


 そう言われた私はそれ以上、何も言えなくなりました。

 かといって、ここで私まで気落ちしていては、いけないことぐらい分かっていたので「キットの事はまた後で」と言い聞かせ仕事に戻りました。


_____________________________________


 にぎやかだった、街は静寂を取り戻し夜の深い群青が景観を包む。私もそろそろ部屋に戻って、眠りにつこうとした時でした。


 チリリンッ____!


 カウンターに備え付けられていた呼び鈴が不意に鳴り響きました。


 「きゃっ____!こ、こんな時間に呼び出し!?お客さんに何かあったのかな?・・・この部屋って?」


 コツコツコツと他のお客様を起こさない様に忍び足で階段を上って行く。次第に早くなる鼓動と、もしかしたらという疑心暗鬼が私の緊張感をあおる。

 そうして、私はいつしか部屋の前に立って、右手で扉をノックした。


 トンットンッ____


 恐る恐る、震える手で二回叩いた木の扉は余韻よいんを残す形でゆっくりと静かに音をかき消されてゆく。


 「_____イヴ。入っていいよ」


 中から聞こえてきた安心感のある声に私は胸を撫で下ろし、そっと息を吐きだした。

 開いた扉の中に足を踏み入れると、室内はあかり一つともっておらず、月の光がうっすらとカーテンの隙間から差しているだけだった。ひんやりとした床に肌寒い部屋。それはまるで、今目の前にいるキットの心情を現しているかの様だった。

 椅子に腰かけ、ペンを持った右手が机に置かれた長方形の板の上でサラサラと動かされていた。


 「あの・・・私に何か用でしょうか?」


 恐怖心と言うより、心配の方がまさっていた。


 「_____俺はどうしたらいいのかな」


 うれいを秘めた眼差しでキットは私の方を見てそう言った。


 「ど、どうしたらいいって・・・?えっと、キット、何かあった?」

 「_____俺は・・・俺は_____もう」


 脱力した右腕からペンが床に落ち、転がる。そして、キットは椅子から立ち、思いつめた顔で私の方へと歩みを進める。後方の扉を確認し、一歩後ろへ後ずさる私は()()()()()()と心のどこかで悟り、両手を胸の前で祈る様に絡めていた。


 「キ、キット!?」


 トンッ


 肩に置かれた細い指先から微かに伝わる、彼の温度が次第に衣服から肌へと浸透してゆく。何が何だか状況が分からない私にキットは目線を合わせようとする。しかし、頬を赤くした私は思わず目線をらし、一向に瞳が合うことはない。


 「私・・・まだ、心の準備が_____」


 察しはついた。


 先の展開も予想は出来た。


 怖くないわけではない。


 それでもどうしてだろう?


 何故か嬉しいと思ってしまう。


 「_____イヴ!」


 強く呼ばれた自身の名に跳ね上がる、脈。見開いた瞳が向かい側にいるその人を視認させる。黒くなびいた前髪に少女の様な顔立ちをしたキットが張りつめた瞳を向け続けていた。


 「俺を______」


 初めて言われる言葉に初めての経験。


 「あの、いや、その・・・・・!私まだ______」


 拒絶と言うよりは、心の準備が出来ていないと言った方が適切だろう。次第に熱くなる体は的確な判断を欠く様に口に出す言葉をさえぎる。いつぶりだろう、私が誰かに行為を寄せるようになったのは?そもそも、好きなったのは出会ったあの日から?それとも、日常の会話の中で彼に魅かれていったのだろうか?


 どちらにせよ、私には彼を()()という気持ちしか持ち合わせていなかった。


 家庭の事情も相まって、人より遅れた存在の私には人との関わりが全てで、そうした関りの中で私は私を形成していいったのだと思う。まぁ、今となってはですが・・・。結果論ですね。


 宿屋で働いているのだって、欠落した自分の足りない部分を補うためにしか過ぎず、私が決めたことでもない。生まれてすぐに両親を亡くした私は人ず手に生きながらえながら、流れゆく季節の風に逆らわない様に感情を殺して生きていた。そんな時、私に手を差し伸べてくれたのは()()()()()と思しき男性でした。漆黒の黒い髪に涼しい指先。地に膝をつき、雨に打たれていた私にそっと、向けられた手を今でも忘れない。

 それからと言うもの、私はその男性にこの宿を譲り受け、今はそれなりに生活できている(生きている)のだと思う。だからこそ____


 ____私はそんな、執事に似たキットという人を好きになったのかもしれない。


 

 「俺を・・・・・・」

 「待って・・・まだ、心の準備が・・・・・・・!」


 目をつむって、耳を塞ごうとする。カァッと赤くなる顔を感じながら、どちらを手で覆うか考える時間も無く、私の両手がそれをする前にキットはそれを言い放った。


 覚悟を決め、聴覚に意識を集中させ、その言葉を受け入れようと________。


 「俺を女にしてくれ________!」

 「いや、まだ・・・・・その・・・・・・・!まずは______。えっ?今なんて?・・・・・・女に・・・?」


 冷ややかな空気と失速した胸の高鳴りが静かに脈打つ。そして_____


 「え・・・。えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっーーーーーーーー!?何でそうなるんですかぁぁぁぁぁーーーーーーーーー

!?」


 夜の帳を切り裂く悲鳴にも似た少女の声は宿屋の全ての部屋に響いたのではないかと思う程、高音で宿屋の経営者らしからぬ行為(睡眠妨害)を行っていた。

 そして、少女はあやふやになった気持ちを抱きかかえる様にその場に膝をつき頭を抱え_____。


 イヴ=ラビリンスという少女の心は名前通りの【迷宮】へといざなわれるのであった・・・・・・。




  


 


 





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