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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
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episode 32

 「ここなら街の様子を一望できるわね。それにしても何なのかしらあいつ、私をこんな場所に配置して・・・もし、敵に襲われたらどうするのかしら・・・まったく・・・・・・」


 セレクトリアの城の屋根に陣取りディセルは一人呟く。回りには無数の銃と一本の狙撃銃が解体(バラ)された状態で置かれていた。ディセルはその中から一つの弾丸を手に取り、空に掲げた。


 「これかな?比較的、空気抵抗もないし、第一に私の銃との相性も良さそう」


 そう言って、ディセルは隣に置かれた狙撃銃の部品を組み立て一つの個体へと作り上げた。


 ガチャッ____カチッ____!


 最終調整を終えた銃は黒い光を放ち、少女は試しに照準を合わせた。


 「よしっ、下準備はこのくらいでいいかな。後はキット あんたが頼りよ」


 青い空に吹き抜ける風。それに押されて流れゆく雲。穏やかな平穏を装った暖かな気候は今も少女の体に偽りの落ち着きをもたらしていた。そんな時、左耳に着けた秘具から聞き覚えのある声が聞こえた。


 「(もうすぐ聖堂へ着く。ディセル、そっちの準備は終わったか?)」


 計画の要である、剣士_キットの声だった。


 「(私はとっくに終わらせてるわよ。それより、あんたはどうなの?今更、緊張、何てしてないでしょうね?)」

 「(緊張?もちろんしてるよ?)」

 「(は?)」


 ただ一言。ただ一文字。秘具の向こうからディセルの気の抜けた声が耳に届く。


 「(・・・あんた・・・何を言ってるの・・・・・・)」


 いつもの様にいきなり、怒鳴られるようなことは無かったものの、俺の耳に響くその声には言い表せない怒りと今すぐに引き金を引きそうな精神状態が伺えた。


 「(話を聞いてくれ!俺の緊張って言うのは無くしたらいけない緊張、何だ!)」

 「(どういう事よ?)」


 俺の発言に耳を傾けてくれた少女に俺は少しばかりの安堵を漏らす。


 「(例えば、ピアノコンクールあったとするだろ?そう言った、人前で何かをする時に緊張感を失くすとどうなると思う?)」

 「(どうなるって・・・緊張感が無いんならそれでいいんじゃないの?余計な心配をしなくていいし、第一に緊張感があった方がミスをすると思うけど?)」


 ディセルの言っていることはあながち外れでもなかったが、俺が言いたいのはもっと深い所にあった。


 「(それはそうだけど。人が本当にミスをするのは緊張を失い、慣れに染まってしまった時なんだ)」

 「(慣れに染まる?)」

 「(自分なら大丈夫・・・自分なら失敗はしない_と言った不確定な余裕は思わぬ不確定アクシデントに弱いんだ)」

 「(・・・そこまで考えて)」

 「(だから、ディセル____少しの緊張と垣間見た死は忘れるな)」


 そこで俺は彼女との会話を中断した。目線の先にそびえたつ、巨大な陰謀との対峙に俺は意識を向ける。ここまでの道のり、そして、これからの旅路____。その先に待つのは約束(誓い)の全うか、それとも命の欠損か____。未知なるものへの挑戦。平穏からの離脱。


 そう、今から起こすことはその前半部分にしか過ぎない。だからこそ、一瞬の焦りも、一時の休息も許されない。夢を見た。遠い向かいに抱いた夢を____。人の心を動かすようなイラストをこの手で描きたい。人の感情を揺さぶる様な物語をこの手でつづりたい。

 そんな、朧かな期待が今もこうして俺を突き動かす。例え、この先に俺の死が待っていようと、俺はここから先に一歩を踏み出すことに恐怖は感じえなかった。だって____


 ____こんな体験も創作のアイデアになりうるのだから。


 冷酷な精神で自身を納得させる。


 冷めた瞳で暖かな世界を幻視する。


 使い慣れた右手で空を仰ぐ。


 俺は胸元に隠した、ナイフに触れた。無機質な銀の刃先は暗闇の中でも微かに輝きあやしく光る。これは俺が持ちえた最低限の保身的行動故の産物だ。もしも、俺の命を絶とうする何かが現れたすれば、様子やなくそれを切り捨てるだろう。本当はこんなものを携帯するような世界には来たくは無かったと思ってしまう自分が今もここで立ち尽くしいる。

 それでも、俺はレイスとの繋がりを無かったことにはできなかっただからこそ、俺は何をしてでも____


 ____何を犠牲にしてでも。


 ____何を失くしてでも。


 ____傍に在り続けると____誓ったんだ。


 煉瓦を踏みしめる足が震えていた。おかしなこともあるモノだと思った。いつも通りのはずなのに何故か、体が進行を拒絶する。まるで「行ってはいけない」と言われているかのように。

 それでも俺は歩みを止めない。拒絶感を殺し、恐怖を殺し、感情を殺した。そして、扉に手を掛けた。


 俺はまだ、知らなかった。


 この行為自体____いや、これまでの行い全てが暖かな絶望であることを____。たくさんの出会いや様々な経験で培われた来た《心の箱》。それは何も、俺だけに起こった事ではなかった。

 

 何気なく発した言葉でレイスの髪色を傷つけ、そして救った。


 剣と銃の交わりの中でお互いを知ったディセル。


 過去を幻想し、今に思いをはせることで存在をくれたセリカ。


 何気ない場面で慕ってくれていたクレイ。


 そんな、たくさんの人の心を俺はいつしか開けて行っていたのだと今、分かった。


 そして、俺自身もいつしか心を開けていた。


 こんな思いは初めてで、こんな気持ちになるのは新しいと感じた。だから俺はこの先の未来も、叶うのなら生きたいと思ってしまう。そこで思考に一つの壁が生まれる。《2年》_その単語が障壁となり、俺の願いをさまたげる。どうして・・・どうして、こうも世界は非情なのだろう____と。仮に俺がレイスの最期を看取ったとして、俺はその後をどうするのだろう。____どう存在するのだろう。いつもはここで考えるのをやめていた。けれど、それじゃあ俺は一向に先へは進めない。そして、もう一つ、俺には気がかりな事があった。

 

 ____レイスよりも俺が死んだとしたら。


 考えるだけで絶望の淵に叩き落されそうになるあるかもしれない未来を俺はえぐる様に考える。許しはわない____けれど、俺がそれを許さない。いつだってそうだ、自分を苦しめるのは何かしらの外的な事柄ではない。内側からの支配だ。簡潔に言えば、自分自身だ。

 そんな心の収縮を抑止するために俺はレイスやディセルとの交わりの中でそれを抑えていたのかもしれない。そして、その先の素直に至ろうとしていた。いつかは《心の箱》を完全に開けようと。


 だけど、俺は気づかなかった。


 俺が今もこうして開け続けている《心の箱》は決して開くことは許されない【パンドラの箱】だという事に____。


 


 

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