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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
63/100

episode 30

 しかし、俺がその違和感に気づいたことを悟ったのか、スゥッとその気配は薄れて行った。まるで、最初から何もなかったかのように____。

 だが____


 『____また、いつか』


 遠のく様に聞こえたその言葉に俺は聞き覚えは無かった。無かったのだが____


 『《____あぁ、またいつか》』


 気づかぬうちに俺はその声に返事をしていたのだと思う。

 俺であって俺じゃない、発言であって発言ではない。

 これで何度目だろうか?いつしか起きるようになったこの現象。今でも不意に起こる、それに俺はただただ不思議さを感じていた。


 「キット君 ごめん待たせた?」

 「いや、俺も今来たばかりだよ」


 待ち合わせていたのは黒髪ツインテールのディセルだ。別人と思う程の登場の雰囲気ととげが無くなり、すっかり丸くなった口調と性格。彼女は元が可愛い分、そんな態度を取られると俺は思わず顔をそらしてしまう。それは、ディセルを見ていると不思議と顔が赤くなってしまうから____。


 「そう?私、大分遅刻しちゃったんだけど・・・それって、つまりキット君も遅刻してたってことにならない?」

 「俺は一時間前にはここに来てたけど?」

 (嘘だけど・・・)

 「一時間も前から!?あんた・・・じゃなくて、キット君は言ってることとやってることが矛盾してるよ!」

 「嘘だよ、嘘。ディセルちゃんは俺の言葉を真に受けすぎなんだよ。ははは」

 「もぉーーーー!そんな事ばっかりしてると、キット君の事嫌いになっちゃうんだからね!」

 「えっ!それは困るよ、謝るから機嫌を直して・・・お願いだから」

 「・・・もうしない?」


 腕を組み、こちらを見つめる様に少女はたずねる。


 「うん、絶対にだ!」

 「分かった。なら、これが最後だからね?」

 「ありがとう、ディセルちゃん!」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」


 沈黙が続く。静寂が辺り一面を包み込む。


 「____はい、こんな感じで頼んだ」

 「____」

 「____いや、確かに度が過ぎてると思うけどさ・・・」

 「____」

 「____ディセル・・・・・・ちゃん?」

 「____む」

 「____?」

 「____り」

 「____うん?」

 「____むり・・・無理に決まってるでしょ!こんなの恋人というよりは・・・痛い・・・痛すぎるわよ!!」

 

 当然の様に弾き返される提案。俺自体もやっていた、「何をやらされているんだ?」と思ってしまったから、多分・・・いや、確実にこれは間違いだ。


 「ちょっと、飛躍させすぎちゃったかな・・・」

 「あんた、最近調子に乗り過ぎよ!どう?たまには、本当に撃たれてみない?」

 「おいっ!」

 「それが嫌なら、今の全部を修正しなさい!あんなの絶対にやらないから!」

 「修正する!修正するから・・・!」

 「なら、さっさとしなさい」


 カチャッ____。


 久々に聞くその音。自身の身が危ういというのに妙に懐かしさを感じてしまうのは何故だろうか?


 そして、数十分の時間が経ち。俺はボロボロの脚本に糸を通した。つぎはぎだらけのそれは、いつ、糸がほぐれて崩れてしまってもおかしくは無かったがそれでも直さないよりはましだろう。もちろん、それを生かすも殺すも、俺の目の前にいる、ツンデレ少女のさじ加減なのだが・・・・・・。


 「こんなのでどうかな?俺がディセルよりも立場が上って設定でディセルがそんな俺に従順な彼女って設定は?」

 「それって、私への仕返しか何か?従順だから、俺の命令には従えって魂胆こんたんでしょ?つまり、元をたどれば、さっきの最低な性格になれって言う命令も容易に出せるわね」


 俺もこの発言にはドン引きだった。まさか、ディセルがそこまでひねくれた感情を持ち合わせていたのは想定外だった。だからといって、その考えはあながち間違いではないのかもしれない。だって、従順ってそんなもんなのだから_と思ってしまった。

 

 「・・・うぅ」

 「図星みたいね。あんたの考えなんかお見通しなんだから!」

 「なら、この先の俺の考えも分かるか?」


 俺はここでディセルに提案の全否定の仕返しを考えた。


 「何よ?」

 「さっきの一連の会話も、俺の考えた脚本も実は全く意味が無いんだよ。だって、ディセルの今日の役は俺の恋人ではなくて、遠距離からの聖堂監視だからな!」


 言い切った。後先、考えずに言い切った。


 「・・・・・・あぁ、そう。そう言う事____じゃあ・・・」


 ディセルの声から力が抜ける。


 (あれ?少し言い過ぎたかな・・・ディセルが落ち込むのを見るのはこれが初めてかな?)


 「って、思ってるんでしょ!」

 「うわっ!」


 心臓が止まる勢いでディセルの怒声が響く。予想外の反応と心を読まれた事への耐性を俺は持ち合わせておらず、そのまま硬直状態におちいる。


 「いいわ!そんなに私を怒らせたいなら、私から銃を取り上げてみなさいそれが出来るならね」


 キットにそんなこと出来るはずもないでしょ?っという顔でディセルは俺を見下す様に見つめる。


 「・・・・・・それは出来ない」

 「何でよ!やる前から逃げるの?」

 「いや、違う。今は捜査に集中したいんだ」

 「はぁ?だったら、さっきのは何だったのよ?あんなにふざけておきながら今更、集中ですって?」

 「ごめん・・・ちょっと、色々あってな____気をそらしたかったんだ」

 「____何よそれ」


 俺の顔を見たディセルはすぐさま察したのだろう。持っていた銃をしまうと、軽く呼吸をし、俺を再度見た。


 「何かあったの?」

 「レイスがな____」

 「・・・なるほど」


 多くは語らなかったものの俺の話だけで大方、理解をしてくれたのだろう。それからはお互い口を開かなかった。心は乱れない。視界は穏やかだ。ちょっとした打ち明けがもたらしたわずかな平穏を俺は少女と感じる。冷たい風が行き交う、道を軽くて重い足取りで歩く。そんな、時間は少女の癖という動作で終わりを告げる。


 カチャッ_カチャッ____。


 と、銃の部位を鳴らす音が耳に届く。歩きながら、銃を品定めする様に見つめる少女は周りの人々の視線など気にも留めていないようだった。この沈黙に痺れを切らしたせいなのか、それとも本当はまだ怒っていることをアピールしているのか・・・。どちらとしても、背中で鳴り響くその音に俺は一向に慣れなかった。


 「銃と指先が動けば人は殺せる____か」


 戦慄を覚えるディセルの独り言。


 「えーと・・・ディセル、頼むから銃を持ったその格好で物騒なことは言わないでくれ・・・・・・」


 ここでようやく沈黙から解放される。それはあまり好ましくない解放のされ方だ。


 「え?これは、私が考えた言葉じゃないわよ?」

 「じゃあ、誰が考えた言葉なんだ?」

 「正体不明の狙撃手【レ・ラクトイレミア=バレット】の言葉だけど?まさか、知らないの?」

 「知らないって言うか・・・その前に正体不明って」


 何度も言うが俺はセレクトリアに転移(来て)して、まだ二ヶ月しか経過していないのだ。だから、「知らないの?」とか「常識でしょ?」などという、《こちらの当たり前》を押し付けられても俺にはその全てが初めてだという事を分かって欲しいところだ。


 「数年前までこのセレクトリアの街を拠点としていた人物よ。ま、それも今では忘れ去られ様としているけどね」

 「どうして?」

 「本人が居なくなったからに決まってるじゃない?記事では死んだと報道されてたわ」

 「死んだ?」

 「えぇ、そうよ。凄腕で裏社会の住人からは重宝されていたのにね。大方、暗殺か秘密を知り過ぎた故の隠蔽殺人でしょうね」


 その手の話は俺の世界でも耳にしたことがある。例えば、麻薬の密売や裏ルートからの武器の搬入、その他色々だ。

 だが、ディセルの言っていることが正しいとすれば、少しおかしな点がある。具体的に言うとすれば、凄腕という部分と正体不明とうたわれる部分だ。もしも、俺がその狙撃手ならば依頼者にも素性や素顔といった本人を特定する様な行為は起こさないはずだ。それに俺と言った一般人の考えにも近い思考でさえも、考えられることをその狙撃手がしないはずがない。だとすれば、考えられることは____


 ____正体不明の狙撃手【レ・ラクトイレミア=バレット】は今でもこの世界で生きている。


 憶測を立てるのはこれで何度目だろうか?この街に来て俺は頭を使う事が多くなった気がする。《少女誘拐事件の》時もそうだ。自身から生み出した疑問を自身で解決していくうちにその核心的部分に迫っていることがほとんどだ。なら、今の俺の考えも本当なのではないかと思ってしまう自分がいた。


 「その狙撃手について他には何か無いのか?情報とか」

 「情報?そうね、これは幅広く知られてるその狙撃手のり方なんだけど_《仕事は丁寧かつ迅速に女性はデリケートに____》って言うのがうたい文句だったわよ」

 「《女性はデリケートに》?この文脈から思いつく事なんだけど、その狙撃手は男性なのかな?」

 「さあね、それがプライベートの事を指すのなら紳士的な事柄でしょうね?」

 「じゃあ、仕事の事だったら?」

 「《殺し方》と考えるのが妥当じゃないかしら?」

 「そう考えるのが普通だろうな。だけど、もし紳士的な部分が該当していたとしたら、その狙撃手は男性ということにならないか?」

 「まぁ、そうなるわね?あんたはそう言ったところだけは勘が鋭いわね・・・・・・まったく・・・」


 「じゃあ何で他の事には気づかないの?」という様な顔でディセルは俺の追及に返答した。ため息交じりのその声色は今の話とは違った何か、もっと別の事を指しているようだった。


 「だけど、一般には性別不明なのよ。なにせ、正体不明とまで言われてるわけだから」

 「やっぱりそうなるか・・・」

 「でも、姿を見たって人は極僅かだけどいたわよ?」

 「何か言ってたか?」

 「容姿についてなら言ってたはずよ。でも、あまり情報は有力なモノではなかったけど」

 「どんなことだったんだ?」

 「確か、全身が漆黒に包まれた容姿に風の様な速さ。その目にも止まらぬ様子から目撃者は彼自身を一つの弾丸と比喩していたわ。だから、そのことを踏まえてついた通り名が《バレッター》」

 「《バレッター》____か」


 バレット_弾丸・銃弾といった、銃の本質を発揮する為の種とでもいうべきだろうか。その名を含んだ、【レ・ラクトイレミア=バレット】という狙撃手。銃やライフルの類は以前、ディセルが使用している物を何度か見たことがある。だが、その使用頻度は極端に少なく、放たれる弾も多くて二発が上限だろう。本来、狙撃というのは標的を定め、その的が自分の攻撃可能範囲(テリトリー)に入った時に本領を発揮するものだ。身を潜め、息を殺し、存在を消す。そして____


 ____たった一発の弾丸に命を摘ませる。


 一凛の花を摘み取る様に行う仕草を俺は狙撃と思っている。


 「もしかしたら、俺達が今こうしている間にも俺やディセルが標的にされてたりな!」


 いたずらに恐怖心をあおる。


 「ちょっ、ちょっと、そんな怖い事言わないでよ!私は撃つのは得意でも・・・撃たれるのには慣れてないんだから____」

 「いや、それは誰でもだと思うけど・・・」


 相手(ディセル)が同じ狙撃手なだけあって、この考え方は果たして正しいのか?という思ってしまう。けれど、一般的に考えた場合、誰でも撃たれるのは怖いはずだ。それは、揺るがない事実だと俺は思う。もしも、銃口に微塵の恐怖も感じない者がいたとすればそれはもう、人間の精神を超越した何かだとしか言いようがなかった。


 「そっそんなことより、私達には今やるべきことがあるでしょ!?そんな生死も分からない、《バレッター》の話なんてしてないで今は任務を遂行しないと」


 ディセルの最もな意見に俺は言葉を失い。口を閉ざし、数秒後に口を開いた。


 「そう、だな。じゃあ、これから今日の進行について話すから聞いてくれ」

 「わかったわ」


 そうして俺達は今日の任務について、話し合いを始めるのであった。

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