表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
62/100

episode 29

 街人の声は今日もにぎやかに、そして騒がしくセレクトリアを活気づけていた。幼い子供から営みにはげむ若者まで人それぞれの意味を込めてその場に存在をしていた。例え、世界が違っても日の出と共に人は目覚め、生活を始めるのはどこでも同じなのだとつくづく思うのであった。通り過ぎていく、家々は俺のいた世界とは程遠く、景観をさえぎる様な高層な物はセレクトリア城を除いては無かった。


 「待ち合わせ場所は確かこの辺だったよな」


 レイスの家から数分程歩いた場所にある小さな箱の様な空間で俺は人を待っていた。偶然かそれとも意図的なのか四方を建物で囲まれたここは、日光の入りを制限しており、差し込む光は木漏れ日となって地面に降り注いでいた。

 近くのベンチに腰かけて俺は両手を見つめる。かすかな肌寒さと、それにあらがう様な体温が体に伝わる。


 「____持って逝かれるのかな」


 それはいつまでも閉まっておきたかった記憶の宝物庫から出した言葉だった。


 「レイスには言えないな____」


 あの日_黒からレイスとディセルを守るために契約した日の事を俺は思い出していた。脳裏によぎるのは交わした相手の声色。そして、それにともなう代償。


 ____【右腕の寿命の半分を貰う】____


 今でも忘れないその契約内容。

 きっと、人の命を救うには安すぎる対価なのだろうと思ってはいたが、俺はその後を考えなかった。【もし、あの時の契約を断っていたら、俺達は黒に殺されたいただろう。もし、契約していたら助かっていただろう】という、《シュレーディンガーの猫》の様な結末をはらんだこの選択肢はどうやらその時だけに有効のようだった。そして、その場を震撼しんかんさせる様な敵の殺気にそれから先の思考は停止させられていた。


 だから、俺は躊躇ためらいなく後者を選んだのだろう。


 でも、今はその選択を呪っている。なぜなら、この判断がもたらしたのは単に命を救う為だけのモノではなかったのだから。もしも、この契約で助ける人がレイスではなかったのならそれはそのまま俺の代償だけで事は済んだのだろう。しかし、俺が守り抜いたのは紛れもない、レイスだ。彼女を救うという事は俺の中での最優先事項でその行動は恐らく間違いではないのだろう。だが、守るという事は、同時に何かを守らないという事に繋がるのだ。例えば、それは【約束(誓い)】だったりするのだ。


 【最後の最期まで描き続ける】_と言う誓いが意味するモノ。それは、レシウル=ロイという一人の少女が《反転の呪い》から解放(殺され)、その生を終えるまでを意味している。そして、呪いが解けるのが俺と出会ったあの日から約二年後に当たる俺とレイスの誕生日だ。偶然かそれとも必然なのか、同じ瞬間(時間)を生き同じ瞬間ときに果てるこの身。美しくも儚い結末を俺は脳裏に描いていた。


 「だけど____」


 俺にはそれが叶わないことぐらい分かっていた。

 契約は絶対だろう。そのことが意味するのは【俺が右腕で絵を描けるのは次の誕生日までだろう】。

 多少の誤差はあるだろうが、その考えで恐らくは間違いないだろう。一年が経過した時点で使えなくなるとすれば俺は心置きなくその時まで描き続けるのだが、時間が経つにつれて徐々に動かなくなるのだとすれば、それは思うように動かない=思うように描けないといった、絵描きとしての致命傷を背負う事になる。

 そうなれば、俺はきっと____最後の最期まで描くことが________。


 「とっくに無理はしてるんだよ___レイス」


 虚しい後悔だけが込み上げてくる。一人になるといつもこうだ____。

 だから、俺はレイスやディセルとの繋がりを大切にしているんだと改めて確認した。


 「俺は既に君との約束を破っているのかもしれない___」


 清々しいほどの本音を俺は独り言のように呟く。別に許してほしいわけでも、慰めて欲しいわけでもない。だけど、そんな未来が待ってると思うと、心が砕けそうになる。


 「何でこうなってしまったのかな____俺はただ____」


 自身の根源的部分から声を発する。それは、悲願でも希望でも夢でもない。


 そう____想いだ。


 【純白の天使を真っ白な世界に描けたなら俺はそれだけで良かったのにな____】

 

 その言葉を発するだけで俺の心は嘘のように軽くなった。

 きっと、これが本心なのだろうな___と分かってしまった。


 「____っ?」


 そんな時だった。俺は誰かに見られている感覚に捕らわれた。それは敵意があっての眼差しかそれとも監視の目か、判断のつかないその違和感に俺はすぐさま、視線の元を探した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ