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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
60/100

episode 27

 「一緒にって・・・《転移者(エミュレーター)》としてここ(セレクトリア)に来てまだ、二ヶ月ぐらいしか経ってないんだぞ?流石に一人で生活できるほどの資金は無いに決まってるだろ・・・・・・?」

 「私は別に、別にそう言うことを言ったんじゃないわよ!私は・・・私は____あの子が心配なのよ」


 黙り込んで知ったディセルはそれ以降、口を開くことは無かった。


 足音だけがこだまする。


 風音だけが過ぎ去ってゆく。


 二日目の捜査も呆気あっけなく終わってしまい俺達はやることが無くなってしまった。だが、これで俺は動きやすくなったと言えるだろう。捜査と監視の意味合いでの介入を悟られない様に今まで動いてきたがもうその必要はない。ゼオルの言った最後の一言とそれにともなって得られた確かな確証。

 鎌はかけていたが、それが今日、本当になったのだ。


 ____ゼオルは人の心を読むことが出来る____と。


 こうなれば次にすることは少々、強引な強行突破だろう。

 だが、その前に後少しだけ、聖堂側には偽挑発(アプローチ)をする必要がある。


 「そう言えば、キット あんた、一つ間違えてたわよ?」


 思考に問いかけるようにディセルの声が耳に届く。


 「うん?何を?」

 「《君》付け設定よ。私はあんたの事を《キット君》って呼んであげてたのにあんたは私の事を普通に《ディセル》って呼んでたわよ?これって、案を出した側としてどうかと思うんだけど?」

 「・・・えっ?」


 俺は「そんな事を今言うか!?」と発してしまいそうになるがそんな発言を押し殺すように疑問の声を発した。


 「別にあんたに《ちゃん》付けで呼んで欲しいってわけではないんだからね!でも、気になったのよ!あんたのその有言実行の薄さに・・・!」

 「そんなこと言ったって、俺もあの時は緊張してて・・・・・・」

 「今更、緊張!?はぁ!?・・・もしかして、あんた本番に弱いタイプなんでしょ?戦いにも実戦にも初めての____」

 「そんなことはない!・・・って、初めてのって何だ初めてのって!」

 「そんな事、どうだっていいでしょ?」

 「話を広げたのはでそっちだろ!?ディセル()()()


 俺はここぞとばかりに、わざとらしくそれを口にする。この状況での俺の行動は間違いなく、火に油を注ぐものだと分かっていた。分かってはいたが、それを止める理性よりも先に楽しさがまさってしまった。

 その結果、ディセルからは「キッ____!!」という漫画やアニメである擬音が見えてきそうな顔になっていた。この怒り方は今まで見てきた中でもまれで、恐らく俺に取っても未知の領域だろう。それが指すことはすなわち、《対処方法不明=システムエラー・オールレッド》緊急事態だ。

 と、思いつつもいつもの関係性に戻ったことに少しばかりの安堵を漏らす俺であった。

 でも・・・・・・


 「この状況はまずいっ!そうだ、ここなら路地裏に逃げれば・・・!」


 幸いにも、今俺達がいるのは部屋の一室でも《純白の剣姫(リリィ・ソードダンス)》の施設内でも、それ故、逃げ道などはいくらでも存在しているのだ。俺は、そのことに気づくと仕切りに駆け出した。後ろを振り返らなくとも、ただならぬ殺気が背中にひしひしと伝わってくる。


 「待ちなさいよっ!何で今・・・今なのよーーーーっ!」


 いつもの様に俺の言動に対して、怒りをあらわにしているのは分かったのだが、それでもどこかいつもと違った気がした。それは、何気ない会話の中に感じる違和感の様に、それは、いつもの景色が少しだけ違って見えた時の様に____。


 「今・・・?」


 その単語を口に出すと同時に俺は駆け出していた足を止めていた。そして、ほんの数秒後に俺の背中に何かが勢いよく当たった。


 ドンッ____!


 「痛っ!何、急に止まってるのよ!危ないじゃない!」


 衝撃の正体は俺を追尾していた、ディセルだった。


 「ディセルが追ってくるからだろ!?それに止まったのはそっちが《今》なんてよくわからない事言うから、気になったわけだし・・・・・・」

 「ふんっ!そんなのあんたを足止めする為の罠に決まってるじゃない」

 「そうか?あの時の言葉にはそんな感じはしなかったけどな?」


 俺は再びディセルをあおるように言葉を発した。無論、これはわざとしたわけではないのだが、今の聞き手にはそう取られてもしょうがない状況だった。


 「何・・・?また、追いかけられたいの?」


 ドスのいた声で狙撃手(ディセル)に問われる。


 「わっ!違うって俺はそんなつもりで言ったんじゃなくて・・・!そう、これはその褒め言葉なんだ!」


 咄嗟に思いついた言葉を言ってしまう。もちろん、この後に続ける文章(言い逃れ)を俺は用意していない。


 「褒め言葉?何よそれ?・・・策士のあんたが言った言葉だから何か意味があるんでしょ?そうねぇ、例えば、その場しのぎの言い逃れだったりして?」


 目を細めあざむく様な笑みを浮かべるディセル。表情差分のレパートリーが増えてきたのは絵描きとしては嬉しいのだがこの状況下での追加資料は半分命取りに近かった。このまま、視線の先の少女の顔を見つめていたい気持ちはあったが、そうしていれば俺に待っているのは間違いなく、【BAD END】だろう。

 だから、俺は創作意欲を押し殺して、少女に次の言葉を続けた。


 「そ、そのっ・・・!何て言うか、最近のディセルは本当に俺の彼女なんじゃないかなって錯覚してしまう程、演技が上手くなったってことだよ・・・!聖堂でのディセルは間違いなく俺の彼女だったよ」

 

 このことに関しては何一つ、嘘は偽りは無い。仮にディセルがそのことを信じなかったとしても俺にはちゃんと理解できた。


 「・・・そうなんだ。私ってそんなに演技が上手いんだ・・・・・・うん、わかった」

 「そうそう。ディセルは銃の腕も良くて、演技力もあって任務の仲間(パートナー)として最高だと俺は思うよ。後、顔も可愛いし」

 「なっ///あんた、またそう言うことを・・・・・・」

 「本当の事なんだから、仕方ないだろ?それに、あの時、ディセルの瞳を見た時に改めてそう思ったんだから、これはもう事実、なんだと俺は思うけどな」

 「・・・そういうのは・・・・・・」

 「うん?どうかしたか?」

 「いやっ、何でもないわ・・・!本当に・・・本当に____」


 気が付くとディセルと俺との距離はわずか一メートルの距離まで詰められていた。俺が立ち止まったことが要因なのだが今はもう、ディセルの怒りもすっかりおさまっており、俺は逃げる心配はないと安堵のため息を漏らす。

 ディセルの発言の中の《今》という言葉にはどんな意味合いが込められていたのだろうか?俺はそんな事を思いながら、元来た道に引き返す。昼間だというのに薄暗く人気の少ない、路地裏を歩くのは気が引けたからだ。


 「なぁ、これからどうする?俺達の任務は大聖堂の捜査だけど、それ以外は何も言われてないわけだし・・・やることがなくなったって言うのかな?」

 「まぁ、そうなるわね?でも、私の魔眼(オッド・アイ)を使えば遠距離からの監視もできなくはないから、実質、やることがないのはあんただけよ?」


 俺にもディセルの様な異能のたぐいは備わってはいるのだが、いかんせん、それは戦闘向けで捜査や監視と言った、隠密的行為には向いてはいなかった。


 「たまにはディセルも任務の事は忘れて、街にでもり出さないか?」


 俺がやることがないから、ディセルを誘ったと思われてもしょうがないような、デート(プラン)を持ち掛ける。


 「はぁ?あんた、それ絶対、私を共犯にしようとしてるでしょ?」

 「うっ____。それはその・・・そうだ!これは、恋人設定の補正だよ!」

 「補正?」

 「俺はさっきディセルに《ちゃん》付けすることを忘れてただろ?だから、そういう抜けを作らない為にも常日頃から練習しておこうと思って」

 「都合のいい事を言うのね、あんたは・・・いいわ、それなら付き合ってあげる」


 少女も半ば、乗り気で俺の口車に乗せられてくれた。本当はこんな事をしなくても、ディセルは立派に役目を全うしてくれているのだが、たまには息抜きも必要だと思った俺は彼女を【デート】に誘った。もしかしたら、黒蝶もそのことを悟って俺の誘いに乗ってくれたのかもしれない。仮にそれが俺の為にだとしても、俺はその思いを無駄にはしたくなかった。だから、今度は俺が彼女にお返しをする番だと____。


 「いいのか?」

 「仕方ないから、あんたに付き合ってあげてるんじゃない?感謝しなさい?」

 「ありがとう ディセル」


 いつもと変わらぬ景色なのにどうしてこんなに新鮮なのだろう。


 いつもと変わらぬ自分なのにどうしてこんなに寂しくないのだろう。


 視線の横を過ぎていく景色を横目に少女と街を歩く。

 華奢きゃしゃな体に風に揺らめく黒いツインテール。

 大人しく、存在自体も風を舞う蝶のように掴めない少女を俺は今、儚く優し気な雰囲気で包み込む。


 街に向ける視線が今は何もかもが絵のように見えて。不思議な気分になる。パステルカラーが彩った街並みと世界を感じながら歩く。


 途中で俺は不意に「ディセルが恋人だったら良かったのにな」と呟いた。すると、ディセルからは「そんなことを言うとレイスに怒られるわよ」と返された。

 それから少しの時間を置いて、風向きが変わった。それは自然的な現象なのか人の波長というモノなのか。確認不明のそれは確かに起こった。


 そして____


 サッ____


 俺は少女に左手を握られていた。完全に油断していた俺の心の温度は跳ね上がり、そして握られた手に少しばかりの力を込め、離れない様にと____。

 最後に黒髪を揺らめかせた少女は囁くように____



 ____ちゃんとエスコートしなさいよ________バカ。



 首に巻いた長めのマフラーを口元が隠れる程に上げ、赤らめた顔を隠す様に少女はそう呟いた。その時の彼女は俺と決して目線を合わせなかった。

 そんな少女を見ていると、今、この時間だけは本当の【大切な人(恋人)】の様に感じた。


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