episode 26
日課が終わり、街を適当に歩いていた俺とディセルは一定の距離を歩いたところで、恋人設定を解除した。
「これからどうするの?あちらさんにはもうバレてるわよ?」
「それについてはこの前も話しただろ?だから、心配はいらないさ。それに、これはゲームだ。どちらかが負けを認めるまでは続いてるはずさ」
「ゲーム・・・か。正気とは思えないわね。仮にも私達が相手にしているのは大聖堂ではなく《黒魔術》なのよ?もし、それが本当だったら私達なんて一瞬で殺されるんだから・・・・・・」
黒魔術というモノを俺は見たことがない。だが、その魔術がもたらす効果やそれに伴う、人の感情は痛い程分かっていた。レイスのあの顔を見れば、その術がどれだけの影響を及ぼすかなど、想定はつく。
「だから、それを止める為に俺達が捜査してるんだろ?」
「うっ・・・それはそうだけど・・・・・・。もし、もしもよ・・・その、あんたが死んだら____」
黒髪ツインテールの少女はあろうことか、俺に心配の眼差しを向けそう言った。もうとっくに恋人同士という関係は切れているというのに彼女は今もなお、あの聖堂で見せた、可愛らしい顔をしていた。
「俺は死なない。絶対にだ」
「何でそんなに自信満々に言えるのよ!未来なんて誰にも分からないのに!」
その心配を跳ね返すように発した俺の言葉を境にディセルはいつものディセルへと再び戻った。正直、さっきの顔と声色の方が男受けが良いのは明確なのだが、俺にはこっちのツンデレ少女の方が性に合っていた。(これは俺の個人的な意見)
「だからじゃないかな?未来が分からないから、俺はその未来というシナリオを自身で描く」
「なるほどねぇ・・・現実逃避か・・・・・・」
「・・・おいっ!」
いつものディセルに戻った事を確証した俺はそんな彼女の顔を一瞥し、話を本題に戻す。
「____俺は《死ぬより、死なせない》を選びたい」
「えっ____?」
「ディセルはレイスの呪いについて知ってるよな?」
「____うん。《反転の呪い》でしょ・・・」
触れたくはない話題に俺達は触れる。ささやかな幸せさえも奪い去る、その呪いについて俺とディセルは目を向ける。自分の事ではないとはいえ、無視できるモノでもなかった。俺には彼女がどう思っているかは分からない。そして、当時を話でしか知らない俺に踏み入り過ぎてはいけないのかもしれないモノ。
「俺の気持ちは多分そこから派生したモノなんだよ」
「どういうこと?」
「レイスには明確な時間があるだろ?」
「・・・・・・二年」
「そうだ。だからこそ、俺はその気持ちに至ったんだと思う」
「どういう意味よそれ?」
「戦死や殺害、この二つの死は本人には決して予想できないだろ?だけど、レイスの《反転の呪い》には期限があって、それが切れると____死んでしまうんだ。そんなレイスを見てて、思ったんだよ」
「何を?」
「死ぬことが分かっていて、それでも生きようとする人が期限よりも早く死ぬのはあんまりじゃないかって____そんなの酷すぎるよ」
「____そう。だから、あんたは今でもあの子と一緒に居られるのね________」
最後に言った、ディセルの言葉はどういうつもりで発せられたのかは分からなかった。それでも彼女は彼女なりにレイスという呪いに侵された少女に何かを思っていることは分かった。それは、一発の弾丸がレイスを絶望させ髪色を変えてしまった時の事を指すのか、それとも____。
この続きは考えたくは無かった。もし、俺がその立場だったら儚すぎるからだ。




