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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
44/100

episode 11

 身体からだと心、そして、精神を一転に集中させる。


 乱れたままでは何もかもを壊しかねないからだ。


 呼吸は静かに、そしてゆっくりと落ち着いた時の様に行う。


 荒れ狂う状況に打破しかねる、この場。


 その全てを掌握しょうあくしうる者を呼び起こす。


 ____さぁ、来い!


 意思の声と同時に体から風が吹き抜ける。


 逆立つ髪になびく、コート。


 足元の雪原は竜巻でも起こしたかの様に俺の周りを舞い始める。


 そして、意識と何かがリンクした時だった。


 【____俺の瞳が灼熱()え始めた】


 「これが・・・!?」


 俺はこの時、初めて自身の瞳を意識した。普段なら、気にもかけない瞳の色。それは今もなお、同じだった。だが、この不思議な現象と微かに感じる、身体の異変。

 握っていた剣越しに瞳を見る。剣自体の色合いが青だった為、この行動は意味のないものになってしまったのだが、それでも瞳からオーラの様なモノが溢れ出ていることは確認できた。それだけで、俺は自身へ、別の何かが加わったことを確信せざるを得なかった。


 (これは魔眼とは違う・・・そう、【天眼】だ)


 抑えきれない程の衝動と殺気立つこの感覚。


 (これは・・・やばいな・・・・・・)


 俺はディセルの幼少期の話を思い出していた。

 魔眼の暴走による、悪魔の召喚。それに伴う、あまりにも残酷な惨劇。その全てを俺は脳裏に映像として、呼び起こしていた。実際に見た光景ではないはずなのにそれは鮮明にイメージされ、俺の心を酷く乱れさせる。しかし、そんなことも忘れさせるほど、俺の眼は脅威に近かった。今にも爆散しそうな眼球と張り裂けそうな体。痛みは痛覚という神経を麻痺させ、感じることさえ出来なかったものの、ひしひしと伝わってくる、死への予兆に俺は覚悟を決める。


 (どちらにせよ・・・・・・ここで力を使わなければ、死ぬんだ・・・それなら____っ!)


 次の瞬間、俺はあの夜の日、黒と接触した日に聞いた(発した)詠唱を口に出した。



 ________「《この世界に栞を挟んで》っ!」




 大きな翼を広げる様に体から淡い蒼色をしたオーラがなびき、霧散する。


 「____これは?」


 視界は何も変化していない。


 「瞳と詠唱は関係ないのか・・・?」


 沈黙が俺を惑わす。

 それでも俺は戦わなければならない。愛剣はいつも通りの輝きを放ち、次の機会を待ちわびる。滴る赤はその青さに負け、液体としか認識できなかった。

 目線の先には大剣を持った魔獣。討伐対象のそれは今もなお、俺を凝視しその歩みをこちらへと向けている。


 「やるしかない____」


 効果の発揮の有無は関係なく、俺はその場を踏みしめ、駆け出す。


 「____っ!?」


 その瞬間(とき)だった。


 「なんだ!?」


 体は羽が生えた時の様に軽く。今まで俺の行動にかせを着けていたものが一気に取り外されたはずされたかのようだった。いや、違う____これは枷が外されたのではない、()()()()()

 踏み込む足に違和感を覚えた俺はその刹那、地に視線を向ける。そこには普通、足跡のついた雪の絨毯が存在しているはずだった。しかし、今、俺の目線の先にあるそれは少しのへこみ一つなく。ただ、自然な雪の凹凸があるだけだった。

 そこで俺は気づいた。


 ____この能力は発動前の世界に栞を挟み、その形を留めておくものだと。


 走り出す足にはコンクリートの様な地面の感触が伝わり。到底雪とは思えない、その感触に違和感を覚えていた。


 「はあぁぁぁぁーーーー!」


 力いっぱいに斬り込みをかける。

 魔獣は突然の変化と不意打ちにすぐには反応できず、こちらを向くスピードが遅れた。

 その隙を俺は見逃さなかった。


 ザシュッ____!


 青い剣先は躊躇いなく、魔獣の胸を突き刺した。

 ダムが決壊したかの様に勢いを上げて、血が噴き出る。


 ビシャッ________!


 頬を伝う鮮血。


 「終わった・・・・・・のか?」


 とどめを刺したことで静まり返る、雪の闇。残されたのは【天眼(ちから)】を使い、酷く体力を消耗した剣士のみだった。俺はスッと剣を鞘に納めると、脈を上げたままの鼓動を抑えることなく、出口を探し始める。もしも、ここで死んだら____。と、自身の存在意味と俺を必要としてくれている人の事が頭をよぎる。


 「ディセル、心配してくれてるかな?・・・あいつに限って、それはないか・・・?」


 俺は黒蝶の顔を思い浮かべそんなことを思っていた。


 「どうせ、死んでくれてせいせいした・・・とか、言うのかな____」


 皮肉めいた考えと少しの寂しさを感じた。

 共にいた時間はレイス程ではなかったが、それでも俺を助けてくれたこともある。そんな彼女に俺は今もなお、お礼を告げることもできていなかったのだ。


 「そういえば、あいつ あの時何て言おうとしたんだ?確か・・・いかないでとか、そうゆう感じだったけ?それと、お礼がどうとか言ってたっけ?返さなかったら根にもたれるのかな・・・・・・」


 そのどれもが今は遠くに感じられ、俺は精神的に重い足取りでこの闇を歩く。《栞》の効果は今も継続して効果を発揮しており、解除方法は分からずじまいだった。だけど、この雪の地では効果をそのままにしておくのは、ある意味正解かもしれない。


 「____?」


 その時だった。不意に感じた、おぞましい雰囲気と確かな殺意を持った何かの感じ。

 俺はそれの正体を瞬時に理解した。


 「・・・・・・嘘だろ」


 振り返ると同時に俺の肩を数センチずれる形で巨大な大剣が空間を切断した。鼓膜を破る程の風圧が俺を襲う。


 「まだ生きてたのか・・・!?」


 声を出した瞬間、新たな二撃目が繰り出される。地面と平行に薙ぎ払われる、一撃。あの大剣なら、俺の体を上半身と下半身に分けることなど他愛ないだろう。咄嗟の判断はこの状況で裏目に出た。本来なら、剣を構え、つば迫り合いを起こすのが妥当な手段なのだろうが、俺はそれよりも確実な一撃を負わせることを優先してしまい、そのまま地を蹴ってしまった。俺は自ら、処刑用ギロチンに飛び込んだのだ。





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