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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
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episode 10

 「う・・・うぅ・・・・・・はっ____!」


 うなされていたのか、俺は酷く体力を消耗した気分だった。

 体は冷たいベッドの上に無造作に投げ出され、着ていたコートは大量の水分を吸収し、びしょ濡れだった。厳密に言えば、俺の体温と同じ位置での滞在時間が長かった為、雪を溶かし衣服を濡らしたのだ。


 「ここは・・・?」


 視界には延々と闇が広がっており、今自分がどの方向を向いているのかさせ分からなかった。それでも、この現状をどうにかしないといけないという、気持ちが俺をその場に立たせた。


 「とは言っても・・・あいにくの視界。この先どうする?」


 この暗黒は時間の経過と共に目は慣れ始め、ゆっくりと前へ踏み出せるほどの視界は開けた。しかし、出口は一向に見えず、ただ同じ場所を延々と彷徨っている気分になる。幸いだったのは、俺が壁に刺し損ねた愛剣が傍に落ちていたことだった。鞘共々、剣先から握り手までが暗いダークグルーに染め上げられたそれは、この闇の中でも異彩を放っていた。切れ味もさることながら、その親近感を覚えざるを得ない剣に俺は愛着を覚えていた。最も、こいつと出会ったのはひと月ほど前の《黒ずくめの薔薇(ブラッキー・ローズ)》でだ。本来の目的はレイスの《反転の呪い》の解呪方法を聞く為だったのだが、案の定、呪いの解呪方法の商品(情報)は取り扱っていなかった。そんな時だった、目線に異彩を放つ剣が入った。普段なら、並ぶはずのないであろうそれは、俺がここに来ることを待っていたかのように、テーブルの上に静かな静寂の元、置かれていた。マスター曰く、この剣は特殊な様で使い手を選ぶと言われているらしい。その資格は未だに不明とされ、使いこなせる者がその答えだという。そして、剣は担い手に似る____。

 曖昧な説明に得体のしれない剣。

 俺は何故か、その正体不明の剣に魅かれていた。

 だから俺はすぐにその剣を購入し、名をつけた。


 ____正体不明で使い手を選ぶ。


 ____そして、剣は担い手に似る。


 _______その在り方と個を持たないその剣を俺は【模倣者】の名を冠し_【エミュレータ】と呼ぶことにした。


 「とりあえず、この場所から出ないと」


 辺り一面は恐ろしいほどに静まり返っており、どこからともなく聞こえる水面に水滴が落ちる音が今は一際引き立った。


 「____これは!」


 壁に手を突き、極力慎重に歩いていた俺は、途中で氷とは感触の違う物に手が触れるの感じ、それを見た。


 「・・・《反射輝石》・・・・・・か?」


 確証は持てなかった。だが、この暗闇において、僅かな光でさえも反射し、角度を変えるだけでその光の線を射し続けるそれは恐らく俺の探している物であっているだろう。透き通る様な透明と、光の加減で虹色に見えるそれはこの奈落に落ちたことで見つかった。


 「慈悲・・・か____」


 俺はそれを少し離れた位置に置くと、右手を向けた。


 「試してみるか」


 意識を集中さえ行動を起こす。


 「《神雷の残象》_ユニオン・ボルト」


 対敵魔法の一つを行使する。

 右の手のひらを焦点に金色と銀色の光の集合体が形成される。俺を中心として取り囲んだ闇が一斉に払われる。光の粒子は俺をまといながら力を強めていく。

 そして、弓を射る様にそれは放たれた。


 シュッ________!


 すると、反射輝石を貫くように一直線に突き刺し、次に光の速さでそれを跳ね返した。


 「おっと____!」


 油断したわけではないが、反射=その方向に正確に返ってくる。

 分かっていたの事なのだが実物を見たわけでも、実際に使ったわけでもなかったのだから当然の反応だろうと思った。

 だが、この輝石の真価は《ただ跳ね返す》だけではなかったのだ。俺の唱えた_ユニオン・ボルトはそのまま、かき消されることなく、後方へと突き進む。頬を掠めそうになったそれは今もなお、この暗闇を照らす一筋の光となり、偶然にも新たな、《反射輝石》に当たっていた。どうやらここが本当の採集場所なのだろう。

 俺の視界を一筆書きの☆を描くように放射線を描き続けるその光景に俺は幻想的だと思わされていた。


 「これを持って帰れば____」


 『ガ・・・アアア・・グゥ・・・・・ガアアアァアァァァアアアアアアアアッ____!』


 「忘れていたわけじゃないんだけどな____」


 共にこの暗黒へと落とされた、異形の者。狭まれた視界のせいで姿を視認することは出来なかったが同じ場所に落ちたのは容易に考えられたいた。


 「あいにく、吹雪もないし、これ以上落ちることもない・・・か・・・・・・」


 背水の陣と呼ぶには少し、違った意味合いを持つこの状況に俺は愛剣を力強く握りしめる。輝石は俺の任務に必要で計画を実行にするには必要不可欠な品だ。そんな物を目の前にして、この場から命を優先して逃げるわけには行かない。例え、致命傷を負うことになってもこの場を制さなければいけない。そんな、脅迫観念が俺を突き動かす。それが、白髪の少女の思いを裏切ることになったとしても____。


 「____行くぞ」

 『ガアアアアッ!』


 地を蹴るはずの足は静かに吸収される。雪という未知数を秘めたここ(フィールド)では修練の成果とプラスαの何かを足さなければ勝率は極めて薄いだろう。対して、向こうの魔獣は元から雪山で生息していたと仮定すればこの状況はあちら側のホームに近い展開だろう。不利なのは俺の方。そして、死に近いのはお互いさまっだった。だが、ここに落ちる前に斬った事を考えると、ダメージが入っているのは確実に魔獣の方だ。俺は目立った傷はなく、どちらかというと疲労の方が溜まっていた。

 そこで俺は早めの戦闘終了を願い、剣技を使った。


 時異連撃技 《ツイン・フェイス》


 シャッ____


    シャッ____


 一振りに二つの意味を持たせる剣技だ。今の時間軸の自分と数秒前の自分を同時に発現させ、剣を振る動作を時間差で二撃に変えるという者だ。効果時間は数撃と少々心持とないが使っている武器の威力が高ければそれも補正されるだろう。


 初撃は足を斬った。


 二撃目はその傷口をえぐるように切り裂いた。


 『ガ・・・ガアアァァァアアア・・・・・・ッ!』

 

 痛みと怒りの咆哮がこの暗黒空間に轟く。魔獣は持っていた大剣を無差別に振り払い始める。右へ左へ、巨大な鋭利がとめどなく、動き続ける。俺はその不規則さに、近づけない。それに、噴水の様に噴き上げる、雪の粒が視界をさまたげる。


 (どうする・・・?剣技?それとも、魔法___あるいは)


 この場において最も大事な事は死なないことだ(致命的な傷も含む)。だからこそ、俺はあの場から逃げた。だが、敵はそうじゃないらしい。目的は分からないが、標的を見つけ次第、襲いかかってきた。


 (モンスターはどの世界も一緒だな・・・・・・)


 世界共通かもしれない、共通点に俺は苦笑する。

 

 『グ・・・ガアアァァァ・・・・・・ガ』


 しばらくその場で暴れ回った後、魔獣は落ち着きを取り戻し、平常な殺気を漂わせる。依然いぜんとして、魔獣の足からは赤い液体がポタポタと雪に吸い込まれていた。少量ではあるが確実に魔獣の体力を奪っている様に見える。


 「痛み分け・・・とはいかなよな?」


 俺は言葉の通じない、魔獣に対して言葉を投げかけた。


 『ガガガァァァァァァアアアグガァアァァアアアアッーーーー!』


 予想通りの回答(咆哮)が返ってくる。


 「なら、仕方ない____」


 俺はこの時、自身に備わっている《異能》について心が触れるのを感じた。未だ得体のしれないそれを使うのは危険なのだと、ディセルの前例から先程聞いたばかりだったが、今はそんなことを考えているほど余裕はなかった。それに、近くには俺以外の人間はいないし、もし、その威力が絶大だったとしても死ぬのは俺と魔獣のみだろう。だから、俺は何の躊躇ためらいもなく________


 

____________________        

 

 「それじゃあ私からも、約束」


 ____どんなことになっても、その日までは自分を大事にして。

____________________        


 力を使おうとした時、脳裏に大切な人とのあの夜の誓いが呼び起こされる。

 決して____と誓った、あの約束を俺は今、破ろうとしている。この決断はそんな彼女の思いを踏みにじる行為なのだ。だが、ここで力を使わなければ、俺はどちらにせよ、少女の前から消えることになるだろう。そんなことになるのなら、少しでも長く傍に居続けられる方法を取ろうと俺は強く心に語り続ける。


 【例え、それが自分自身を失くすことになったとしても____】


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