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Last Rotor - Resurrected as Kit -  作者: キット
Bullet&Butterfly in to the Rainbow.
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episode 9

※今後の投稿頻度や活動については活動報告に記載致しましたので読んで頂ければと思います。

 「この辺であってるんだよな?」


 これでもかという程、辺りを見回した後、俺はこの場所を指示したディセルに声をかける。


 「そのはずなんだけど・・・」


 けれど、《探し物(反射輝石)》は一向に見つからずにいた。


 「もしかして・・・・・・」

 「ん・・・?」

 「____嘘だったのか?」


 そうでないと分かっていても、ここまで探しても見つからず、挙句の果てには石すら見当たらないこの状況になってはそう思わざるを得なかった。


 「____な、わけないでしょっ!・・・何でこんな寒い場所であんたに嘘をついて私まで凍えなきゃいけないのよ!?」

 「・・・それもそうだよな」

 「嘘をつくなら、もっと場所を選ぶわよ!」

 「そこは威張るところか・・・・・・?」


 こんな時でもいつものペースを崩さない、ディセルに俺は少しばかり安心した。手はかじかみ、足はつま先から徐々に冷え始めていたので、そろそろ撤退をと思っていたが今の会話で少しだけ体に熱が戻った気がした。(感じただけなのだが・・・・・・)


 「それにしても、ここまで来ても魔物がいないのは幸運だったわね」

 「確かにそれは思った。このコンディションでの戦闘は肉体的にも疲労はいつもの倍だからな」

 「そうね。()()()()


  剣士と違い、わずかな立ち位置の変更だけで戦える、銃をメイン武器に設定しているディセルは剣という単語をわざと強調したような口調でそう言った。


 (いつか絶対、その銃を取り上げてやる____っ!)


 

 ゴオォォォォッーーーーという洞窟の奥から聞こえてきそうな風音が耳に届く。それは単に洞窟があることを意味しているのか、天候の悪化を意味しているのか?どちらの意味でも取れてしまう、雪山は時間の経過と共に白の深さを増してきていた。ここでの滞在時間も残り少ないだろう。


 「そろそろ帰らないと流石にまずいわね・・・」

 「あぁ、俺も同感だ」


 二つ返事で今後の行動が決まった。


 「本当は今日中にでも見つけたかったんだけどな」

 「明日また来てみたらいいかもね」

 「そう、だな・・・」


 一日ずれたからと言って、別段、俺の計画に支障が出るわけでもなかったのだがそれでも、都合が良いとは言えなかった。


 一日=24時間


 人が目覚め眠りにつくまでの行動を収録した時間だ。この間に人は自身のするべき事をする。それは俺も例外ではない。剣士としての任務。

 しかし、俺の本来の目的は【純白の少女】を最後まで描き続ける事。

 その為には一分一秒も惜しいと思えた。だから、俺は入信から素材集めの予定をこの一日で終わらせようとしたのだ。だが、世界はディセル曰く、そんなに甘いものではなかった。個人という《1》はあくまでもこの世界を担っている一つの歯車でしかないのだ。そんな歯車一つに神は気を使いわしないのだ。


 『____だからこそ、俺はいつか神をも討ち墜とす力が欲しかった』



 「じゃあ今日はこの辺で」

 「仕方ないわね、この視界じゃろくに散策もできやしないし」

 「____うん」


 胸に抱いた気持ちを鏡に写し、俺は返事をする。


 「ディセル、今日はありがとう」

 「えぇ、だけどこのお返しはいつかちゃんとしてもらうんだから」

 「きっとな」

 「お礼は私を________」



 『ガアアァァアアアアァァァァァァァァァァァァッ!』


 

 何かを言い終えようとした、ディセル、の言葉を遮るように咆哮が轟く。吹雪の中に見える巨大な影。ドスッ!ドスッ!、と雪原を踏み鳴らす、音が近づいて来る。

 俺はこの展開を覚えている。脅威は恐らく、あの《黒竜》程ではないが、それでも今の状況下においてはそれに匹敵する程に違いなかった。このまま、ここに留まれば戦闘になる。しかし、逃げる場所も定まらない。視界は白い悪魔に覆われ、見据えるのは巨影だけだった。

 だが、一つだけ違ったことがあった。

 それは、俺が剣士になっていることだ。

 あの時の様な失敗はしない。今度は一撃で動きを止める。


 「____ディセル、下がれ!こいつは俺が____」


 魔獣と戦うの何もこれが初めてじゃないんだ。俺は魔物との線引きがいまいち分からない、魔獣という存在を大きさで判断していた。ゆっくりと額に冷たい汗が伝う。極限の精神状態においての戦闘は心の在り方を忘れさせる。このまま、特攻すれば相手の隙を突け、いくらかの攻撃はヒットするだろう。しかし、それは同時に自身の命を削り行う、それはまるで一撃必殺にも近かった。


 「わかった!でも、迎撃はさせて____」


 ディセルの声を聞くや否や俺はこちらの様子にまだ気づいていない魔獣へと剣もろとも飛び出した。


 「はあああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!」


 声は精神力を下げない為に存在し、自身を見失わない為に発していた。


 ザッ____!


 剣は魔獣の体を掠めた。


 ビシャッ____!


 地面にドロドロとした血が染み込んでいく。


 ザクッ____!


 俺はすぐさま、地面を蹴り二撃目を繰り出す、体制に入る。一撃で決めれないと分かったからだ。


 シャッ____!


 体の速度に合わせ、剣に弧を描かせる。


 『グルガガァァァァガガアァァアアアアアッーーーー!』


 とてつもない咆哮が響く。


 「なら、もう一撃____」


 その刹那、俺の頭上に巨大な何かが影を落とす。

 次第に距離を縮めるそれは俺へと向けて、行われた行為だろう。


 「キット____ッ!」


 流れる白を切り裂いたそれは俺の体を真っ二つに切り裂こうとしていた。


 (これは、大剣っ!?)


 視界、数十センチを挟んで俺はそれを視認する。紙一重でかざした剣が大剣を今にも壊れそうな状態で押し続ける。それよりも俺の腕が先に壊れそうだ。


 バンッ____!


 「目を狙ったから、体制が崩れるはず!今のうちに!」


 ディセルの発射した弾丸は炎を帯びており、対象物に当たると同時にその朱で敵を染め上げる。だが、今の季節は冬。魔獣は燃える自らの体を雪に転がせる様に暴れ、それを抑えようとする。その結果、辺りは白い砂嵐に見舞われる。


 「行くぞ____!」


 俺はディセルに声をかけ、走り出す。どこかも分からなくなった現在位置をひたすらに駆ける。背後は振り返らない。もし、奴が追って来ていたとしても、けん制できる余裕を持ち合わせていなかったからだ。


 「吹雪で先が見えないのはあの魔獣も同じこと!だから、ここからは少しペースを落としても大丈夫だと思う!」

 「分かった!」


 どこからともなく、魔獣の咆哮が再び響く。


 「近くにいるのは確かだな・・・どうする・・・・・・」

 「足止めぐらいなら・・・・・・」

 「いや、今は逃げることを優先しよう」

 「分かった」


 焦りは消えない。けれど、この足を止めてしまえば何か決定的なミスを起こしそうで俺は無我夢中でこの雪の道を駆け抜ける。


 「林を抜ければ何とかなるかも!」

 「そうだな____」


 ________え。


 少し、ほんの少し油断した。命の危険が薄れるのと同時進行で消えかけていた警戒心が作動しなかった。


 『グウウゥゥアアアァァァァッーーーーーーーー!!』


 俺とディセルの間を射抜くように突進してきた魔獣は俺の方へ、瞬時に向き直り、持っていた大剣を力任せに振った____。

 けん制する暇もなく、俺は持っていた剣を目を瞑るように前へ構えていた。


 ドンッ____!


 胸に衝撃音が響く。その衝撃で呼吸が飛ぶ。


 「ぐはぁっ!」


 魔獣はそのまま俺を吹き飛ばす様に突進する。

 そして、俺は背後に見えた、白の亀裂に落ちてゆく。


 「こんな所で終わる(死ぬ)のか____?」


 魔獣の意図した行動か、それとも単なる偶然か?俺は氷と氷の間に出来た、隙間に魔獣を道ずれにする形で吸い込まれてゆく。


 地上が遠い。空が尊い。


 「キット・・・キットッ!キットーーーーーーーーツ!!いかないで・・・逝かないで____よ。あんたまでいなくなったら私は________」


 遠くで誰かの声がする。俺を愛おしく思ってくれているのだろうか____。その声には涙の様な声色と大切な誰かを呼ぶような想いが感じられた。本当はすぐにでも、その声の方へ返事を返したかったのだどうやら、それは叶わないらしい。体はが降下していくたびに声はかき消され。耳もその意味を失くす。

 深い深淵はどこまで広がって俺を吸い込んでゆく。最後の頼みで氷の壁に突き刺した剣は無情にも弾かれ、俺は完全に可能性を失くしたのだ。


 落ちて 落ちて 落ちて 落ちて


 落ちて 落ちて 落ちて 落ちて


 落ちて 落ちて 落ちて 落ちて____。


 静かに瞳を閉じた。いつかは訪れる、想像を絶するほどの痛みに耐える準備をしたのだ。


 痛いのは嫌だ。


 辛いのは嫌だ。


 苦しいのは嫌だ。

 

子供の泣き言の様な言葉を俺は心で言った。


 そして、俺は意識を手放す。



 ________落ちる_____か。____意味は違えど似ているな、あの時の【墜ちる】________に。




 消え去る意識の中で誰かがそう言った気がした。






 





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